流石雨兄!
時に冷静に、時に・・・。あなた、甘党注意ですよ!
「……ん?」
変な音がレインの耳をくすぐる。
…………
だんだん近づいてくる声。
…………ゃぁぁぁぁぁあああああ!
声と共にレインの真上から白い塊が落ちてきた。
空を見上げたレインは、それをあきれた顔で見つめながら最高のタイミングでひょいっと一歩横に移動した。
「ぴぎゃっ!」
気持ちの悪い音がして白い塊がべちゃっと地面に張り付く。
レインは冷ややかにそれを見下ろし、つま先でコツンとつついてやった。
「んぎゃあああ!」
塊から恐ろしい悲鳴が上がったがレインは眉一つ動かさない。気にすることなく腕のコートをばさっと広げ、遠心力で雫を吹き飛ばしてから静かに羽織る。
するといきなり地面の塊が跳ね上がって口を利いた。
「って! ちょっとレインひどいじゃないの! 私を何だと思ってんのよ! いいかげん頭の上に着地させなさいよね!」
「おバカさんもほどほどにしないと漫画とスイーツ禁止令出しちゃうよ? レインさん今感傷にひたってたの。頭の上ってシーナが乗るところじゃないの! 顔にチョコつけたまま街に出てたとか信じられないのっ!」
「……えっ?」
シーナが急いで顔をこするが落ちるどころかチョコは広がっていく。
あきれたレインが拭く物を探した、ちょうどそのとき丸眼鏡の男を連れたジャックが最後の角を曲がって歩いてきた。
シーナもジャックに気付いて両手を振る。
「あっ。ほらほらレイン! あれが今日最後のひっとりー。だから私もここにきたんだったんだー」
妙な調子で歌うようにしゃべるシーナの姿を確認したジャックが眉をしかめた。だが、鈍いシーナはそんな様子に全く気付いていない。
何でジャックがご機嫌斜めか理解しているレインは、どうやって機嫌を直してもらおうかと頭を巡らせていた。
そしてジャックは二人に見守られながら丸眼鏡を目的地に案内し終えて、二人の元に威勢よく歩いてきた。
「おーふーたーりーさんっ、俺様に何か言うことあるんじゃないかなー? シーナ、顔が茶色になってる! 今日は何食べたんだよ。レインも半日で一人とかひど……って酒くせーーっ! もう! 俺が……! うわぁっ!」
話しているジャックの後ろにサッとしゃがんだレインが、頭をジャックの足の間に入れていきなり肩車で持ち上げたのだ。
「バッ、何すんだよ。俺様は子供じゃねーんだ……ぞ……」
レインより小さいとはいえジャックでも一七〇近く身長があるのでその目線は楽しむに値するのだろう。顔を赤くしながらもおとなしく乗っている。
とたんにシーナが大騒ぎを始めた。
「あー! ジャックばっか! ずるいずるーい! 私も頭の上に乗せてよー!」
「あのね、頭の上って肩車でさえないし。シーナはレインさんをどうしたいわけ? ほらバカ言ってないで、もう帰るよ」
「あっ、じゃあ寄り道して! “めめーぞん”に荷物預かってもらってるのー!」
「はいはい。荷物、ね。レインさんそんなことだろうと思ってたよ」
「おい、ちょっと待てよ! その前には俺様降ろしてくれよ? ……今はまだいいけどさ……」
「はいはい。それも、もちろんわかってるよ」
三人とも傍目には、ただの仲がいい兄弟か親子にしか見えない。レインの前だと大人のはずのシーナもジャックもただの子供のようになってしまうのだ。今ではすっかりお兄さん気質のレインは、そんな二人を思いっきり甘やかしてやるのだった。




