寒空徒歩!後!
自然なエスコートは素敵です。あなた、勧誘注意ですよ!
レインはでかい、黒い、妖しいの三拍子。コートを着ているときには何か危ないものを装備していてもおかしくない雰囲気を漂わせていた。もっとも今は青く見えるほど白いシャツに黒く細めのストレートのボトムを合わせているだけなので上着を脱いだホストといったところだろう。
輝く白シャツにかかる艶髪が揺られながら互いのコントラストを強調している。
「外組って……僕も一流企業のトップにいるわけだし大概の組織は知ってると思ってたけど君らみたいなのは聞いたことないね。マフィアじゃないにしても外国の組織か何か?」
「そうだねぇ。外国っていうよりは世界規模の組織だね。助けを必要としてる人がいてそれを助けるための力を持った君みたいな人が選ばれる。そういう係が世界中にいて、そしてレインさんは君をここに案内してきた。ってことなんだー」
レインが、すっと腕を上げ目の前の建物を示した。見た目は一軒家のようだが国籍不明で見るからに古く、建物自体がアンティークの作品の様だ。窓や壁がセピア色になり全体にツタが絡まってここだけ違う空気が流れているように思われた。
「うっわ。すごいな。ここは赤ずきんでも住んでるのか?」
レインが頬笑んで目を細めた。
「レインさんは赤いずきんかぶったチビちゃんよりも素敵な王子様がいてくれるほうが嬉しいけどねー。はい、さっきのカードを出して」
彩内院は言われるままにポケットに入れてあったカードを取り出した。
「じゃ、それを入り口で出すんだよ。レインさんの仕事はここまでなんだ。大丈夫。レインさんも入ったことあるけど危ないところじゃないから心配しないで」
そう言って入り口のドアをノックした。
「いい男一名様ご案内でーす!」
恐ろしい魔女でも出てきたら逃げようと思っていた彩内院だったが、にこやかで姿勢のいい若者に出迎えられてひとまず胸をなで下ろした。
若者の服装も建物同様に国籍、時代共に不明だがすっきりしていて感じのいい印象を与えるものだった。
「はい。ご苦労様。ではカードを拝見しましょう」
きれいな頬笑みで片手を差し出しカードを受け取る。
「翡翠ですね。外は寒かったでしょう? さぁ中へ」
彩内院は言われたほど寒くない理由を思い出し急いでコートをレインに差し出した。その裾から滴る泥色の雫。
「あぁっ! そうか僕のほうが小さいから! すまなかった。全然気付かなかったよ! 今クリーニング代を……」
懐に手を入れた彩内院をレインが笑顔で止めた。受け取ったコートはそのまま二つ折りで腕にかけている。
「何言ってるの。レインさんこれ承知で貸したんだよ。それより脱いだなら寒いから早く入って。中はとっても暖かいからね」
「そうか? ほんとにいいのか? じゃあお言葉に甘えるとするかな。ところでレイン、君はここで僕の用事が済むのを待つのかい?」
一瞬「?」という顔になってからレインが嬉しそうに笑顔を見せた。
「レインさんそうしたいのは山々だけどダメなんだよね。一応ここでさよならしなきゃ。それじゃお酒ごちそうさま。いつかどこかで会えるといいね……塔哉」
彩内院は帰り道のことを一瞬心配したが係の若者に促されて、手を振るレインへ反射的に手を振り返してからドアの向こうに消えた。
案内係が軽い会釈をしてからドアを閉める。
「はぁ……ほんっといい男になっちゃって」
閉まったドアを見つめるレインは彩内院の顔を思い出して頬を赤く染めた。




