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漆黒の予兆と、禁忌の魔導兵器

黄金の麦が風に揺れ、精霊たちが無邪気に踊る――そんな平和な朝の静寂は、一人の伝令の出現によって無残に引き裂かれた。

 要塞ナリアの白銀の城門前に、一頭の馬が泡を吹いて倒れ伏す。跨っていたのは、隣国エルミニアの紋章を纏った騎士だったが、その鎧はひどく凹み、至る所から鮮血が滴っていた。


「アヴァン……様、は……どこだ……ッ!」


駆け寄ったバルトが、崩れ落ちる騎士を抱きとめる。アヴァンは城壁から飛び降り、リリの風を纏って一瞬でその場に降り立った。


「ボクがアヴァンだ。しっかりして! 何があったの?」


「……エルーシャ、王女……殿下より……。公爵家が……禁忌の封印を……解いた。……騎士団だけではない……『神を喰らうデウス・エクス』が……動いた……!」


騎士はそれだけを言い残すと、糸が切れたように意識を失った。

 アヴァンの背後で、その名を聞いたセレスティアの顔から血の気が引いていく。彼女の細い指が、震えながらレイピアの柄を強く握りしめた。


「『神を喰らう者』……嘘でしょう? あれはアグニール家が千年前の神話時代から隠匿してきた、自律型の殺戮兵器。……都市一つを一晩で灰に変える、最悪の『災厄』よ」


「姉様、知ってるの? その兵器のことを」


「……古文書でしか見たことがないわ。魔力を食らって成長し、周囲の生命エネルギーを吸い尽くして進む。それを動かすには、数千人分の生け贄か、あるいは……それに匹敵する『巨大な魔力源』が必要なはずよ」


セレスティアの視線が、アヴァンの右手の聖杯、そして足元に広がる地下遺跡へと向けられる。

 公爵家当主――アヴァンの父は、この要塞のエネルギーそのものを「餌」として、兵器をぶつけるつもりなのだ。


「……バルト、ハンスさん、リリ。緊急招集だ。住民たちを地下遺跡の最深部、一番安全な区画へ避難させて。ガラム、ロルフ。君たちは重装歩兵を率いて、城壁のゴーレム・タレットの魔力充填を急いで!」


アヴァンの指揮が飛ぶ。要塞全体が、休日の穏やかさから一転、戦時体制へと激しく脈動を始めた。


【戦略会議:対『神を喰らう者』防衛計画】

地下の作戦室。青白く光るホログラムが、要塞周辺の地図を映し出していた。

 北方から接近する巨大な魔力反応。それは通常の軍勢とは比較にならないほど巨大で、禍々しい「負」のエネルギーに満ちている。


「敵の進軍速度は予想以上に早いですな。漆黒騎士団が先遣隊として周囲の村を焼き払いながら進み、その中心に巨大な『ひつぎ』のような兵器が鎮座しているとのこと。……このままでは、あと三日でこの要塞に到達します」


バルトが冷徹な声で分析を述べる。

 ハンスが重々しく腕を組み、不敵な笑みを浮かべた。


『……生ける屍の騎士団か。俺たち亡霊とは相性が悪そうだが、相手が神だろうが何だろうが、俺の盾は砕けねぇ。アヴァン様、俺に最前線を任せてくれ』


『甘いわよ、ハンス。相手は魔力を食うのよ? 霊体のあんたは、近づくだけで吸い尽くされるわ。……ここはボクの速度で、外から揺さぶりをかけるしかないわね』


リリが殺気立ち、耳を鋭く立てる。

 アヴァンは地図を凝視し、ある一点を指差した。


「……正面からぶつかるのは、向こうの思うツボだ。姉様、この兵器の弱点は何?」


「……コアよ。中央にある魔力心臓部。けれど、そこは何層もの物理装甲と、強力な対魔障壁で守られている。……私とあなたの魔力を合わせれば、障壁は破れるかもしれない。けれど、そこまで辿り着くには、騎士団の波を突破しなきゃいけない」


「……分かった。なら、ボクたちが迎え撃つんじゃない。要塞そのものを『最大の罠』にするんだ」


アヴァンの提案に、一同が息を呑む。

 彼は地下遺跡のコントロールパネルに手を置き、これまで隠されていた「禁断の術式」を呼び出した。


「このナリア要塞は、ただの城じゃない。母様がボクに遺してくれた、動く『聖域』だ。……遺跡の深層エネルギーを全解放すれば、期間限定で要塞そのものの出力を数倍に跳ね上げられる。……それを使って、敵の兵器をこの村の結界内に引きずり込み、ボクと姉様の合体技で核を叩く」


【漆黒の進軍:絶望の足音】

その日の夕刻。城壁の地平線に、黒い「点」が無数に現れた。

 公爵家が誇る最精鋭、漆黒騎士団。彼らは生きた人間に呪いをかけ、痛覚を麻痺させ、死ぬまで戦い続けるように改造された「生ける鎧」だ。


その中央に、山のような巨大な黒い物体が蠢いている。

 六本の多脚を持ち、周囲の森を枯らしながら進む巨大な魔導兵器『神を喰らう者』。

 それが一歩踏み出すたびに、ナリア要塞の地面が微かに震える。


「……来たね」


アヴァンは、城壁の先端で一人、その黒い津波を見つめていた。

 右手の聖杯が、かつてないほど激しく熱を帯びる。


「……怖くないの? アヴァン」


隣に立ったセレスティアが、震える声を隠すように冷たい風を纏う。

 アヴァンは姉の手を、優しく、けれど力強く握りしめた。


「……怖いよ、姉様。でも、後ろを振り返れば、みんなの笑顔がある。……ボクは、もうゴミじゃない。この村の領主で、みんなの家族だ。……だから、あんなバケモノに、ボクの居場所は渡さない」


アヴァンが空へ向かって聖杯を掲げた。

 その瞬間、要塞全体から白銀の光柱が立ち昇り、漆黒の進軍を真っ向から迎え撃つ。


「総員、配置に就け! ……これより、要塞ナリアの防衛、および公爵家との最終決戦を開始する!」


【現在の要塞ステータス:超限界稼働】

エネルギー: 地下遺跡・深層炉解放。出力400%。


防衛兵器: ゴーレム・キャノン「聖杯の裁き」×12、古代魔導地雷網。


アヴァンの状態: SP 25000(極限状態での覚醒中)。

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