蒼銀の処刑――「ゴミ」の最期
廃村を包囲したのは、公爵家が誇る「緋色の盾」重装歩兵団。
中央で白馬に跨り、扇情的な赤いマントを翻しているのは、次兄のカイル・アグニールだ。彼はかつてボクの食事を床にぶちまけ、「泥でも舐めていろ」と母様の形見を土足で踏みにじった男だ。
「おい、ゴミクズ! 工作員の尻尾でも掴んで震えているかと思えば、野犬(獣人)共を集めて王ごっこか?」
カイルは村の入り口に立つボクを見下ろし、下卑た笑い声を上げた。
「安心しろ。今ここでその薄汚い首を刎ねて、工作員共と一緒に処刑台に並べてやる! それが、ナリアの女狐を産んだ罪に対する、閣下からの最後の『慈悲』だ!」
その言葉が出た瞬間、ボクの中の「何か」が完全に壊れた。
慈悲? 家族? そんなものは、この男を殺す理由を曇らせるだけのゴミだ。
「……バルト。兄様にはもう、言葉はいらないよね」
「御意にございます、我が主。……存分に、その『乾き』を癒やされませ」
【完全合体:蒼銀の聖騎士】
ドォォォォン!! と莫大な霊力が爆発する。
白銀の鎧を纏い、蒼い風をなびかせたボクの姿に、カイルは一瞬怯んだが、すぐに顔をどす黒く歪めた。
「魔導具ごときで! 死ね、この出来損ないがぁッ!」
カイルが炎を纏った魔剣を振り下ろす。ボクは避けない。
ガキィィィィィンッ!
蒼銀の長剣で受け止めるまでもない。左手の甲の装甲で受け止めるだけで、カイルの魔剣はあっけなく粉々に砕け散った。
「な、なんだ……この、デタラメな硬さは……っ!?」
「ボクを『ゴミ』と呼んだね、兄様。……ゴミは、焼却炉へ行くのが決まりだよ」
ボクはリリの神速でカイルの懐に潜り込み、ハンスの剛力でその両膝を蹴り折った。
「あぎゃあああああああッ!!」
落馬し、泥の中に転がるカイル。ボクはその胸元を踏みつけ、逃げられないように固定する。
周囲の重装歩兵たちが助けに入ろうとするが、彼らの影から伸びた無数の霊体の手が、その足を地面へと引きずり込んでいく。
「や、やめろ! 助けてくれ! アヴァン、弟だろう!? 悪かった、悪かったから!」
「弟? ……ボクを殺そうとした人に、そんな名前の人はいなかったよ。……ハンスさん、リリ。この男の魂、全部吸い出しちゃって」
ボクが右手をカイルの顔面にかざすと、**【聖杯の逆流】**が発動した。
「あ、が……あ、あ、あああああああッ!!!」
カイルの眼球が裏返り、口から鮮やかな紅い魔力と、彼自身の「存在」そのものが魂の叫びと共に吸い出されていく。
それはただの死ではない。彼の記憶、魔力、才能、そして命――そのすべてがアヴァンの糧として、右手の紋章に飲み込まれていく「魂の完全消滅」だった。
数秒後、ボクの足元に残ったのは、中身が空っぽになり、ミイラのように干からびた「カイルだった肉塊」だけだった。
「……お疲れ様。兄様」
ボクは、もはや物言わぬ肉塊を、ゴミを捨てるように森の奥へと蹴り飛ばした。
【リザルト:公爵家嫡男の捕食完了】
獲得経験: カイル・アグニールの全才能(剣術・魔力回路)を吸収。
SP最大値: 650 → 2500(爆発的上昇)
ハンス・リリの状態: 領主クラスの魂を喰らったことで、形態の安定度が大幅強化。
残された軍勢: 主を失い、恐怖で戦意を喪失。全員がアヴァンの前に跪く。
「お見事です、坊ちゃま。……これで公爵家も、ようやくあなたを『敵』として認識することでしょう」
バルトの賞賛さえ、今のボクには遠く聞こえた。
身体の芯から湧き上がる、カイルから奪った強大な魔力の熱に、ボクは初めて本物の高揚感を覚えていた。




