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泥に塗れた「騎士道」

廃村の入り口は、断末魔のような悲鳴と、無様に逃げ惑う足音で満たされていた。

 リリの仕掛けた「霊力の糸」が騎士たちの足を払い、ハンスの戦術に基づいた倒木が、彼らの自慢の愛馬を叩き伏せる。


「ぎゃあああっ! な、なんだ、この村は……っ!?」

「ひ、卑怯だぞアヴァン! 姿を見せろッ!」


 泥に塗れ、緋色のマントをボロボロにした見習い騎士たち。その中心に、ボクはバルトを従えて、静かに姿を現した。

 右手の甲には、ハンスとリリの紋章が鈍く、けれど力強く拍動している。


「……お疲れ様。ボクの家(ゴミ捨て場)へ、ようこそ」


 ボクが指を鳴らすと、リリの風が彼らの武器を吹き飛ばし、ハンスの圧力が彼らを地面に組み伏せた。


「くっ……この、灰色の出来損ないが! 公爵閣下に逆らって、タダで済むと思って――」


「お黙りなさい」


 バルトの声が、凍てつく刃のように響いた。

 彼は一歩前へ出ると、リーダー格の騎士の喉元に、ステッキの先を静かに突き立てた。


「坊ちゃまに対して、これ以上の不敬は万死に値します。……よろしいですか? あなた方は今、地図にない場所で、存在しないはずの軍勢に敗北したのです」


「……ぐ、軍勢だと? どこにそんなものが……っ」


「あなたの目には見えずとも、ここには数多の英霊たちが集っております。……さぁ、坊ちゃま。彼らの処遇を」


 ボクは、地面に這いつくばる彼らを見下ろした。

 かつてボクを足蹴にし、ナリア母様の形見を笑いものにした奴らだ。


「……バルト。彼らの指から、騎士の証である『家紋指輪』をすべて剥ぎ取って」


「なっ!? やめろ! それを失えば、俺たちは平民以下に――」


「それは、ボクが十一歳の誕生日にされたことと同じだよ」


 ボクの声に、慈悲はなかった。

 バルトが手際よく指輪を回収し、それをボクの手のひらに転がす。


「これを持って、父様に伝えて。……『アヴァンは、亡霊たちと共に、この場所で新しい国を造る』って」


「……坊ちゃま、少々言葉が優しすぎますな」


 バルトは冷たく微笑むと、騎士たちの顔を一人ずつ泥の中に踏みつけた。


「いいですか。あなた方は『無能なアヴァン』に敗れたのではない。……『次代の王』に、命を拾われたのです。這って帰りなさい。その惨めな姿こそが、公爵閣下への最高のご報告となるでしょう」


 バルトがステッキを引くと、騎士たちは蜘蛛の子を散らすように、武器も名誉も捨てて森の奥へと逃げ去っていった。


【ステータス更新:精神的成長】

個体名: アヴァン・アグニール

称号: 亡霊の村の主(領主ランク:F → D)

霊力(SP): 最大値が微増。ハンスとリリの信頼度が上昇。


『……ひゃっはー! 見たかあの顔! ざまぁないわね!』

『……ふん、あんな腑抜け共の指輪、溶かしてハンスの剣の補強にでも使いな、小僧』


 脳内の二人の声も、どこか誇らしげだった。

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