第一章7 「作戦」
「ーーっていう流れね。大丈夫かしら?」
「なるほど…」
神様の呪いとかなんとかで、この魔導監獄では魔力が吸収される。
つまり、ここでは魔力を貯め込むことができないので、一度使い切って空にしてしまうとここでは魔法が使えなくなるらしい。
私が魔法を使うことができないのも、ここに来るまでに魔力を使い切ってしまったからでは? とリアナが言っていた。
「外に出るまでは、魔力が回復しないんだ…」
「そうよ、だから私が切り札を使うのは出口に近づいてからになると思うわ」
つまり、ここから出られれば魔法が使えるようになる、と……
うーん、最初に使う魔法はやっぱりイルフィネイトかな?
でも、他の魔法も知りたいな〜。
いや、今考えるべきはここから脱獄する方法!
だけど、本当に脱獄なんてできるのかな…。
「ううん! 大丈夫。私ならできる…! 脱獄なんてちょちょいのちょい!」
それで、リアナはどうやってここから出るつもりなのだろう?
そういえばなんか脱獄計画がなんとか言ってた気がするけど…。
「ふふ、アンナならそう言ってくれると思ったわ。それじゃあ、さっき言った作戦でいくわよ!」
そう言うと、リアナは壁の中に飛び込みーー消えた。
ーー!?
壁に吸い込まれたんだけど!?
見た目は石の壁。手で触れようとしてみると…そこには何もない。
壁が目の前にあるのに触れられないのは不思議な感覚だ。
ーーあれ?何か歪んできた。
しばらくして、壁の表面がぐにゃり、と変形し、ぐるぐると回転し始めた。
これが魔法…すごい!
やはり、こんな魔法を使えるリアナさんは凄い人なのかもしれない。
ーーところで、作戦って何の話?
「あっ…リアナー!待ってー! 作戦ってなにー!」
作戦が何かを聞いておかないと!!
私は迷わず壁の中に飛び込んだ。
壁の先は想像していたものとは違って案外綺麗だった。
白壁に絵画。部屋の中央には豪華そうな椅子と机があった。うーん、会議室って感じかな?
ん?
あれって…剣?
机の上には、緑色の光を放つ剣が置かれていた。
なぜだか、目を離せないほどに気になる。
ーー光輝いてるし、魔法の剣…なのかな!
これでただのおもちゃだったらどうしよう、すごく恥ずかしい。
ーー綺麗…
よく見ると、剣からは小さな緑色の星が出ては消えてを繰り返している。
これは一種の魔力じゃないだろうか?
いや、そうに違いない。
あれ?
何か周りに透明な壁が見えるような…?
いや、それよりも
「なにこれ! 軽い!」
………いつの間にか握ってた! 誘惑って恐ろしい。
「!?…………君、どこから入ってきたんだい?」
背後から聞こえてくる声。
ふと、振り返るとボロボロの制服を着た赤髪のお兄さんが目を見開いてこちらを凝視していた。
たぶん、見張りの人だ。
ーーやばいやばいやばい!どうしよ!!
咄嗟に剣を背中に隠したが、隠し切れてる自信はない。
これ捕まったらヤバいんじゃ…。
「えっと…これは、その….」
「いや、待て! その剣ーー!! 君はもしかして勇者様、なのかな?」
「……そうです!!」
違います。なんて言えない!!っていうか勇者って何??
「やはり、あなたが勇者様でしたか! 本日召喚されると聞き、戦場を抜け出して急ぎ参ったのです」
男はその場で跪き、深々と頭を下げた。
「お初にお目にかかります、勇者様。僕はトゥルーカ王国の軍師ーーヴァゼル・ロビンと申します。どうぞ、ヴァゼルと、そうお呼びください」
ーー召喚?軍師?勇者?何言ってるのこの人
「あはは…そうなんですね。ところで、ここってどこなんですか?」
「……聞かされていませんでしたか? ここは…国が運営する古い保管庫でございます。それよりも…」
ヴァゼルと名乗った男は手のひらを向けてくると
「この施設では魔法を使うことができません。何があるか分かりませんので護衛も無しにお一人で出歩かないようにお願いいたします! あと、そのお召し物はいったい………? 後で職員にはきつく言っておきます」
と、早口に色々と小言を突いてきた。
「え! あ、はい」
「それから、明日には王様との謁見がございます。ひとまず、ここから出てお身体を清めましょう」
「あ、はい」
「それから今晩はお祝いとしてパーティーを開かせていただきます。近くの高級宿を貸し切っております。存分にお楽しみください」
「え!? やったー! ご飯食べれる?」
ちょうどお腹すいてたんだよね!
「はい、それではここで少々お待ちください。使いの者をこちらに送りますので何かあればすぐにお呼びください」
ヴァゼルは軽く頭を下げると、部屋の外へと向かった。
なんかもう、よくわからない。取り敢えず流れに任せていれば何とかなるかな…?
それにしても……
ーー古い保管庫…?




