第一章2 「なまえ」
目を覚ますと、檻の中にいた。
けれど、自分の名前も、ここにいる理由も、過去のことも何一つ思い出せない。
どうやら私は記憶を失ったみたいだ。
せめて自分の名前がわかれば、と身に付けているものからヒントを得ようとするが、特に手がかりとなりそうなものはなかった。
唯一、分かることといえば、私の性別が女であることぐらいだろう。
「なるほど、それは災難だったわね」
腕を組み深く考えるようにうなずく金髪の少女、"リアナ"は一緒に牢屋に閉じ込められていた17歳の女の子だ。
「どう!にか!記憶を!取り戻したいん!ですけどね……イルフィネイト!…………はぁ…」
腕を振ったり、体を回転させたり、頭の中で念じたりしてみたが、魔法のまの字もわからない。
リアナが言うには、魔法はイメージと才能があれば誰でも使えるそうだなのだが…。
ーーなんで使えないの?
「教会で治癒術師とか解呪師を探すしかないわね。記憶をなくす病気なのか、呪いなのかいまいち判断がつかないのだから大変だと思うわ」
難しい表情を浮かべるリアナ。
記憶が戻れば魔法使えるかな?
「ここから出られたら探してみますね!」
「それは…いや、いいや……………あ、そういえば」
ふと、思い出したかのように、リアナが手をポン、と叩く。
「あなたのことはなんて呼べばいいのかしら?」
名前………
「そうですね、うーーん、名前………思い出すまでは何でもいいですよ?」
「あら、"なんでもいい"さんでいいのかしら?」
手で口を覆い、微笑むリアナ。
「あはは、それはちょっと……じゃあアンナって呼んでください」
なんでこんな名前にしたのかと言われれば特に理由は無い。パッと浮かんだ名前?
「何か思い出したのかしら?」
「特に何も。適当に浮かんだ名前です」
リアナの指摘に首を振って答えた。
「…そうね! 分かったわアンナ」
薄く微笑み、胸に手を当てるリアナ。
その笑顔からは謙虚さを感じる。
だが、
ーーうーん?
「そう言えばリアナさんはどうしてこんなところにいるんですか?」
「あぁ、私、うっかり人を殺して指名手配されちゃったの。それで色々あってここに入れられちゃーー」
……………え?
「ちょっと待って! な、なにをしたって?」
「え? あぁ、私ね、うっかり人を殺しちゃったの」
物騒なことを言いながら微笑むリアナ。
あれ? ここってもしかして刑務所だったりする?




