第3話 泥鰻(マッドイール)、または狂鰻(マッドイール)
マッドイール。
当然だが主に水辺を好んで棲息する魚系モンスターだ。
どんな水質でも生存出来る生命力と狂った様な食欲が特徴で、主に泥沼に好んで棲息するため泥鰻と呼ばれる説と、自身に生命の危機が迫っていようとも食欲を優先する狂気から狂鰻と呼ばれている説があるが定かではない。
鰻、というよりはウツボに近いかも知れない。
見た目は前世の幼い頃にテレビで観た1ヶ月無人島生活で観たオオウナギに似ている。
いかにも脂がのってそうな山吹色の腹と黒光する背中が特徴的な魔物だ。
何で知ってるかって?
物心ついて動けるようになったら速攻で川に獲りに行って返り討ちに遭い、偶々通りかかった狩人のおっちゃんに助けて貰い、その後両親を含めた大人連中にしこたま叱られたからだ。
奴は鰻の皮を被ったB級ホラー映画に登場するアナコンダだ。しかも2の方。
推定体長1mな奴が抜かるんだ泥を這い回り獲物に絡みつく。
締め付け力はそうでもないが、全身から発するヌタヌタした粘液のせいで掴み取ろうとしても掴めない。
そして奴はキリンやカピバラを飲み込めると思ってる狂気の鳥ペリカンの様に俺を丸呑みにしようとして来た。
左腕をすっぽり丸呑みにされた時には自分の正気も奴の正気も疑った。勿論、奴が嚙み千切ろうと何度も咀嚼しながら噛みついてきたおかげで左腕の肌はズタズタだった。
更に奴は多少の毒を有しているらしく、大人たちに凝ってり絞られている最中に倒れ込み、村の薬師さんのお世話にもなった。
俺と鰻の邂逅は実に刺激的なものだった。
俺の腕が奴に飲み込まれている間、俺は奴の腹身の弾力を堪能していた。
硬すぎず柔らかすぎない弾力…。
もしこれを蒲焼きに調理できたらどんなに良いだろうか…。
奴が俺を食欲の籠った瞳で俺を見つめたとき、俺も奴を食欲の籠った眼で見つめ返していた。
俺と奴は確かに通じ合っていた。
お互いをご馳走と看做し、お互い食い合いたがっていた。
…そうか、俺が、俺たちが!
「「ウナギなんだ!!」」
その様な、武力介入するウナギンダムとなる夢を見たのがこの世界で初となる過去世夢と異なる夢だったのは大して嬉しくない思い出だったりする。
勿論家族にありのままに話したらドン引きされたのは言うまでもなかった。
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