表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憧れの先輩アイドルに、恋もステージも溺愛プロデュースされる件  作者: はなたろう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/6

#5 先輩との初デート

シャワーを浴びて、濡れた髪を手早くタオルで拭く。


急いで着替えると、オレは事務所の地下にある駐車場へ走った。


胸の奥の高鳴りが収まらない。せっかく汗を流したばかりなのに。



「ツバサ、こっち」



濃紺の車、運転席から蒼真先輩が声をかけてきた。

助手席へ促される。


車内に入ると、蒼真先輩のコロンの香りがほのかに香った。



「疲れてないか?」


「だ、大丈夫です」



緊張して少し息が上がるのが、自分でもわかる。



「せっかく再会できたのに、なかなか話す時間も取れなかったな。忙しくてさ」



ゆっくりと車が走り出す。



「活躍は、いつも拝見してます」


「なんだよ、他人行儀だな」


「でも」


「かわいいがっていた後輩が素っ気ないと、悲しくなる」


「え!」



かわいいなんて!


胸がぎゅっとなる。



「さて、なにを食いたい?」


「先輩は、なにがいいですか?」


「俺は――ツバサかな」


「え?」



言葉を途切れさせる。



「え、あぁ。冗談ですよね」


「……」


「もう、さっきの伊勢さんといい、〈TOMARIGI〉のメンバーは冗談がお好きなんですね」



でも、冗談だとわかっていても心臓には悪いな。



「オレ、焼肉がいいです」


「高校のとき、駅前の食べ放題に行ったよな」


「懐かしいですね」



ダンス部のみんなで、大会後に打ち上げしたことを思い出した。



「よし、あのときより旨い肉を食わしてやるよ」


「やった!」




◆◆◆




案内されたのは、落ち着いた照明が灯る、個室の焼き肉店だった。


普段オレが行くような、賑やかな店とはまるで違う。



「わぁ!」



運ばれてきたのは、綺麗な霜降りの入った上質な肉だった。


蒼真先輩は慣れた手つきでトングを動かし、焼き上がった肉をオレの皿へと乗せてくれた。



「ほら」


「いただきます!」



オレが口いっぱいに頬張ると、蒼真先輩は嬉そうに笑う。



「口の中で溶けました!」



オレの反応を見て、先輩は満足そうに目を細める。



「ツバサが20歳になったら、ビールで乾杯しような」


「はい!」



美味しいお肉を口に運ぶたび、少しずつ緊張がほぐれていくのが分かった。



「今年のダンス部はどう?もう、ツバサは引退したんだよな?」



5月下旬の大会予選を最後にオレは引退し、このレッスンに集中するようになった。



「蒼真先輩のおかげで、入部希望がすごいんですよ」


「そうか、たまには母校に顔を出したいな」


「ぜひ来てください!みんな喜びます」



デザートが出てきたとき、オレは心の内を言葉にした。



「先輩」


「うん?」


「オレ、本当は将来のことを迷ってて。大学に進むか、ダンスの道を本格的に目指すか……」



声が小さくなる。正直、怖かった。



「今回の候補生募集の広告を見たときは、これだ!って思いました。だって、その――」


「俺がいるから?」


「――はい」



オレは正直にうなずいた。



「だけど……」



高校生活最後の夏。


同級生は今頃、塾の夏期講習で受験勉強をしている。

アイドル候補生は1年間限定。その先が保証されているでもない。



「そういう時期だよな」



しばらく沈黙。



「蒼真先輩は、今の僕と同じ頃に、デビューが決まってましたね」


「ダンスのスキルで言えば、オレはツバサに敵わない。もう既に、俺たちはライバルでもあるんだぞ」


「そんな――」



蒼真先輩は、優しい表情をしていた。



「でもさ。ツバサが事務所に入ってくれて、また会うことができて、本当に嬉しい」



胸の奥が熱くなる。

ドキドキが止まらない。



「大丈夫、ツバサはもっと輝くよ」



蒼真先輩の、細く長い指先が、オレの頬を撫でた。


ほんの一瞬のことだったけど、密室でのできごとに、めまいがしそうだ。



「この前、ツバサのダンスを久しぶりに見て、一緒に踊ったときさ。心からダンスが楽しいって思えた」


「オレもです!」



進路の迷いも、日々の疲れも、一瞬で消えたような気がする。



「……先輩、オレ、頑張ります」



小さな声でも、決意がこもっていた。

蒼真先輩は頷き、口元に笑みを残す。



「期待してるからな」



店を出て、再び先輩の車へと乗り込む。

窓の外を街の灯りが流れる。



オレは自分の心が、どんどんと、蒼真先輩に引き寄せられていることを感じていた。



「なぁ、ツバサ。夏休みだけど……」


「はい」


「うちに来ないか?」


「え?」



予想もしなかった言葉に、頭が真っ白になる。



「引っ越したばかりで散らかってるけど」



きっと、この夏で何かが変わる。



「夏休み強化合宿のつもりで、うちに来いよ」



自分の道も、先輩との距離も――。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ