【第9話 追跡者】
一週間後、ロブローの村。
子どもA「おい、そっちに行ったぞ!」
子どもB「待ってー!」
村人A「ん…?あれは…おい、お前たち!家に入りなさい!」
村人B「あの見た目…文院じゃないか。」
村人A「ああ。…さあ、家の中に入ろう。」
村の中に、レグナスとミルザの姿があった。
レグナスは、金貨数枚を手の上で遊ばせている。
2人は、村の外れに向かって歩いていく。
レグナス「…この村の者が吐いた。」
レグナス「デインラムに“新顔の文律師”がいるようだ。」
ミルザ「…金で釣ったのね?」
レグナス「やむを得んだろう。…だが、顔の刻印までは覚えていない様子だった。」
ミルザ「十分ね。このタイミングだもの。」
レグナス「…デインラム領主の館が、奴の潜伏場所の可能性が高い。」
ミルザ「では、すぐにでも…」
レグナス「待て。…奴の実力は、わかっているだろう。」
ミルザ「…ええ。」
レグナス「こちらは2人だ。…奇襲による一撃で仕留めなければならん。」
ミルザ「…。」
レグナス「奴の検知範囲を調べる。館のある程度離れた距離から、毎日少しずつ距離を縮めていく。こちらは“ジャブス”で、奴の居場所を感知する。」
ミルザ「…同時に館の戦力も調べておきましょう。」
レグナス「当たり前だ。…必ず、“狩る”ぞ。」
レグナス「…あの時の失敗は、二度と繰り返さん」
数日後、デインラム領主の館。
レド「……。」
ジザ「ずいぶん、大人しいわね。いつにも増して。」
レド「……視線のようなものを感じます。一定の距離を保って、こちらを探っています。」
ジザ「えっ?」
レド「“ジャブス”は使わないでください、絶対。…互いのジャブスが衝突すると力場が乱れて、こちらの警戒がバレてしまう。」
ジザ「…何者?」
レド「……追手が来たのかもしれない。皆さんを、ここに呼んでもらっていいですか?」
ジザ「…わかったわ。」
数分後、全員が一室に集まった。
ロルダン「君を暗殺しようとした者か?」
レド「…そうかもしれません。かなりの手練れのようです。」
レド「…ずいぶん用心深い。…距離を詰めてきています。今日か、遅くても明日には仕掛けてくるはずです。」
ガルド「何人いるか、わかるか?」
レド「…かなり少数です。2人か…3人か…。」
ガルド「ならば、話は早い。数的有利はこちらだ。先手で潰せばいい。」
ジザ「脳筋は黙ってなさい。」
ガルド「はあ?」
テス「敵は文院の文律師、か。」
テス「…レド、お前が敵に数人いると思った方がいいか?」
レド「…どうでしょうか。」
テス「…聞いた私が馬鹿だったよ。」
レド「でも、レグナスとミルザだとしたら、強敵に違いありません。」
ロルダン「攻め込んで来ようものなら、大義名分はこちらにある。その愚行を、奴らは犯すというか?」
レド「…はい、きっと。“上”からの命令なんでしょうから。」
ロルダン「まったく…。一体、どういう組織なのだ。」
レド「…奴らの狙いは、僕です。あなた達に、危害は加えさせない。」
レド「僕一人なら、被害は最小限で済みます。」
レド「…問題ありません」
ジザ「…。」
レド「一人になる機会を待っているはずです。…わざと、この館から離れてみます。」
ロルダン「…おい、待て。」
レド「?」
ロルダン「ここは私の領地だ。勝手な真似は許さん。」
レド「…。」
ガルド「そうそう。作戦を練らないとな。」
テス「おびき寄せて、全員で迎え撃とう。」
ジザ「…はぁ。しょうがないわね、こうなったら。」
レド「…ですが…。」
ロルダン「…正当性はこちらにある。案ずることは無い。」
ファーボ「…やれやれ。」
彼らは、部屋の中でしばらく話し合うと、それぞれが動き始めた。
レドは、館の正面玄関から表へ出る。
しばらく歩を進めた所で立ち止まった。
その時、館の外で、風が一瞬止んだ。
レド「……来る。」
続く




