表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/52

【第48話 対峙】

 その爆発音は、戦場の音に紛れていた。

 彼女だけがそれを察知していた。


ヴェシュラ「……破られた…。」


ガナック「…なに?」


ヴェシュラ「…すみません。侵入を許してしまい。」


ガナック「…そうか。」


 ガナックの口角がわずかに上がる。


ヴェシュラ「……こうなるのを、待っていたのですか?」


ガナック「…まさか。」


 ガナックは一歩前へ出る。


ガナック「戦況次第では、お前も戦ってもらう。」


ガナック「それまでは、“ランバー”をそのまま使っておけ。」


ヴェシュラ「…はっ。」




 ――島の海岸。

 障壁が一部欠損していた。


ライネス「!…い、いけた……」


 ジザがふらふらと体が横へ揺れる。

 リュエラがそれを優しく支えた。


リュエラ「…すごいです。さすが、師匠。」

ジザ「……ふっ。」


 ジザは、わずかな力で笑ってみせた。


ファブ「再展開される前に、早く行け。」


レド「!…はい!」

ガルド「よし。」

テス「ありがとうな、ジザ。」


 三人は、すぐさまその穴から内部へ侵入する。


リュエラ「あ、あの…私も…!」

ガルド「“功労者”を労っておけよ。」

テス「…船の防衛を任せる!」


リュエラ「……わかりました!任せてください!」




 ――ジラ島内部。

 断崖へ挟まれた地形での戦闘は、まさに死闘だった。

 その時だった。


ドレヴァ「“トルヴァ・アステ”!」


 それは、崖の壁面を激しく振動させ、

 その岸壁を崩した。


 敵味方関係なく、土砂や岩石の下敷きとなり、

 悲痛な叫び声が辺りに響いた。


ファルド「なっ……貴様!」

ドレヴァ「こうでもしないと、“牙”は止まらぬ!」

ファルド「…そうやって、貴様らは他人の命を軽視するのだ…!」


 ファルドは、腰の剣を抜く。


セヴァルド「お止めください、ファルド殿。…仲間割れは、敵の思う壺だ。」

ファルド「!……ッ。」

ドレヴァ「……ふん。」



ナイラ「臆するな!進めッ!“原基”は近いぞ!」

牙の戦士「おおーッ!」


 前線では、牙の戦士の一人の剣戟を交わし、

 素早くも強力な剣捌きで奮闘するレグナスの姿。


レグナス「ちっ…敵が多すぎる!」


 顔に飛び掛かった返り血を拭う。


王府軍「ぐはっ!」

レグナス「!…このままでは押し切られる…」


セヴァルド「ファルド殿、王府軍を後退させろ。」

ファルド「なに…?」

セヴァルド「それとも、紙文律に巻き込まれても…?」

ファルド「……。」


ファルド「前衛!退けッ!」

王府軍「!?」

レグナス「おい、貴様ら!全力で後退しろ!」

王府軍「え?」


セヴァルド「…この細い通路では、回避できまい。」


セヴァルド「……“発現”!」

レグナス「左右に散れ!」


 連合軍の前線が左右に分かれる。


牙の戦士「!?」


 その奥から、巨大な炎弾がまっすぐに襲い掛かる。

 勢いに乗っていた“牙”の前衛が一瞬にして爆風に巻き込まれる。

 炎の中で黒い影だけが映っていた。


ナイラ「…おびき出されたか。」

ガナック「ナイラ殿、一旦引くか?」


ナイラ「……いや。」


ナイラ「このまま物量で押し込む。」

ガナック「…怖いことを。」


ナイラ「構うな!同胞の屍を乗り越えて、そのまま進め!」


ガナック「…ヴェシュラ。」

ヴェシュラ「……はい。」


ガナック「…奴らに“退路”を用意してやれ。」


ヴェシュラ「わかりました。……」


 ヴェシュラは左手を下ろした。

 島を取り囲んでいた障壁は消え去った。


王府軍A「壁が無くなったぞ!」

王府軍B「海へ飛び込め!」

王府軍C「船はあっちだ!」


ドレヴァ「何をしている!?」

ファルド「!……」


 島への脱出が可能となった状況で、

 戦いの様相は一変した。


 傷ついた者、戦士喪失した者が、両軍それぞれ一斉に逃亡を始めた。

 だが、その比率は明らかに連合軍側が多く見えた。


ナイラ「…なるほど。うまく逃がしたな。」

ガナック「私とて、無駄な殺生はしたくない。」


ガナック「これほどの被害が出れば十分だ。…もう、手駒は少ない。」


セヴァルド「…ガナック…。」


ガナック「…これは、執筆官殿。」


 二人は視界の中で、お互いの姿を視認した。


セヴァルド「……“原基”を破壊する気か?」


ガナック「…少し違うな。」


ガナック「……当分の間、お休みになっていただくだけだ。」


セヴァルド「“原基”を停止させればどうなるか。それが分からぬ貴様ではない。」


ガナック「止めてすぐ滅びるような、世界でも、人でもない。」


ガナック「…その間に、腐敗した権力にはご退陣いただく。」


ガナック「従えぬのなら、粛清するだけだ。」


セヴァルド「…それが、最初から狙いだったのだな…!」


ガナック「…その勘の良さが無ければ、計画はもっと円滑に進んだのだがな…。」


セヴァルド「……。……ん?」


 セヴァルドは、ガナックの後方に小さな影を見つけた。

 この場にいた数人だけが、その気配に気づくが――


ヴェシュラ「ガナック様!」


ガナック「……来たか。」


 倒れた兵士や戦士たちの脇を、歩く足音がわずかに聞こえる。


レド「…ガナック。」


ガナック「……よもや、このような場所へ来るとは――」


ガナック「…どういう風の吹き回しだ?」


レド「……君を止めに来た。」


ガナック「……」


セヴァルド「!…レド、だと……?」

ドレヴァ「!!」

スーラ「……」


ガナック「…“止めに来た”?」


ガナック「……なんの為に?」


レド「…お前のやり方は、違う。」


ガナック「……ああ、そうだろう。」


ガナック「…だが。奴らは、もっと間違っている。」


レド「…だから、来た。」


ガナック「…」


レド「ガナック…好きにはさせない。」


ガナック「……ヴェシュラ。」


ヴェシュラ「…はい。」


 ヴェシュラが振り向いて、ガナックの前に立った。

 レドとヴェシュラ、二人が距離を取って対峙する。

 その光景は、まるで時が止まったかのように周りの視線を釘付けにしていた。


続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ