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【第46話 決戦】

 ジラ島へ入島したセヴァルドは、中央の断崖に囲まれた場所にいた。

 足元の白い床は、革靴の底が当たるたび、硬い音を響かせている。


セヴァルド「…ドレヴァ。ここへ来るのは初めてだったな。」

ドレヴァ「…はい。まさか、このような場所があるとは…」


 ドレヴァは床を見つめる。


ドレヴァ「…見たことも無い素材です。この先に“原基”が?」

セヴァルド「……うむ。」


 そこへ、ファルドが王府軍の数人を引き連れてきた。


ファルド「先ほどの奇襲により、我々の戦力が削がれてしまった。」

セヴァルド「…そのようで。」

ファルド「……この期に及んで、我々を出し抜こうなどと思わぬことだ。」

セヴァルド「…それは、誤解ですな。」

ファルド「…ガナックはいつ来ても、おかしくはない。沿岸をもっと厚くしたまえ。」

セヴァルド「……もう少しお待ちいただけますかな。」

ファルド「なぜだ?」


セヴァルド「…ルンド・バルゴアの一人が、まもなく到着する。」


ファルド「…ここへ来るというのか?」

セヴァルド「この戦いに大変関心を持たれている。…実に心強い。」

ファルド「……」


 そして、その船は辿り着く。

 数人の護衛の中には、スーラの姿もあった。


スーラ「…お足もとに注意してください。」

ゾラル「……」


ゾラル「……久しいな…ジラ島…。」




 冬の太陽が、海上を照らしている。

 ちょうど、昼に差し掛かった頃。

 島の見張りの王府軍が、水平線の彼方から船影を視認した。


兵士A「見えました!…四…いえ、五隻の船が近づいてきます!」

兵士B「ファルド様へ報告してきます!」



 その船団の中――

 甲板に出たガナックは、ヴェシュラに近づく。


ガナック「…見えてきたな。」

ヴェシュラ「…すでに占拠されているようです。」

ガナック「……仕方あるまい。それにしても、なかなかの軍勢に見える。」


ガナック「…ナイラ殿。」

ナイラ「?」

ガナック「他の船を、この船を取り囲むように編成してくれ。」

ナイラ「…何の為だ?」

ガナック「文律で防御する。」

ナイラ「……解せないな。これだけの船を、か?」


ガナック「…彼女には、それができる。」

ナイラ「……わかった。」


 ナイラは、部下を引き連れ、各船の操舵手へ伝令した。

 船は、互いの距離を縮めて、一塊のように密接して進む。


ヴェシュラ「…よいでしょうか。」

ガナック「……もう少し引きつけろ。」


 視線の先には、島の全景が現れてきた。

 海岸線を中心にして、連合軍が今まさに攻撃態勢を作っていた。


ガナック「…撃ってきたら、始めろ。」

ヴェシュラ「…はい。」


 一拍の静寂。

 船にぶつかる波音と、マストが軋む音だけが響いていた。


 遠くから微かな音がした。

 小さく映った人影から、何かが放たれる。


ヴェシュラ「……“ランバー・ネア”。」


 ヴェシュラの左手から、赤黒い光が灯る。

 左手を光源としたその波動は、球体状に拡大していく。


 次の瞬間。

 風を切る音と同時に、矢が船に降り注がれる。

 しかし、まるで“壁”にぶつかるように、その手前で弾き飛ばされた。


ガナック「……勝てるぞ。」




兵士「ファルド様!文律か何かで、攻撃が届いていません!」

ファルド「構うな。攻撃を続けろ。」


ファルド「…あれが、かのヴェシュラか。」


ファルド「…しかし、奴も人間だ。そう持つまい。」


セヴァルド「…来たか。文律軍も動け!“エンボル”で援護しろ。」

文律師「はっ!」


 海岸から少し離れた高台にセヴァルドたちは立っていた。


セヴァルド「…ファルド殿、油断は禁物です。」

ファルド「…?」

セヴァルド「ヴェシュラは…あの世代を代表する稀代の使い手だ。」

ファルド「油断などするものか。」


 後ろからゆっくりとゾラルが近寄る。


ゾラル「……ヴェシュラか…。」

セヴァルド「…ここは危険です。…中へ。」


ゾラル「…奴の力も…欲しい……」

セヴァルド「!………」


ファルド「……」


 その台詞が、何を意味しているのかを理解できる者は、

 そこには居なかった。




 島から見える船は次第に明確に姿を現し、

 ほぼ無傷のまま、島の東部へ接岸した。


ファルド「やはり、ガナック…!」


ファルド「王の招集を無視し、賊と手を組むとは!血迷ったか!」


 崖の上からファルドの声が響く。


ガナック「…ファルドか。」


ヴェシュラ「…どうされますか、ガナック様。」


ガナック「……ナイラ殿、乗り込む準備はどうだ。」


ナイラ「万全だ。」


 ナイラは、そう一言だけ発し、細身の曲刀を腰にぶら下げた。


ガナック「…始めるぞ、ヴェシュラ。」


ヴェシュラ「…はっ。」


 ヴェシュラは、瞼を閉じて深呼吸する。


ヴェシュラ「…“ランバー・アステ”。」



 島の中央部の上空に小さな球体が現れる。

 それは、みるみるうちに巨大化をした。


 ――まさに島そのものを取り囲む障壁だった。


セヴァルド「…島全体を、だと……?」


ドレヴァ「…」


ドレヴァ「…馬鹿め!自らの退路を断ったか…!」


ガナック「……それは違うな。」


ドレヴァ「……?」


ガナック「もう、お前たちは逃げられないということだ。」


ドレヴァ「…ッ!」


ナイラ「進めーッ!目標は“原基”、ただ一つ!」


牙の戦士「おおーッ!!!」






 その島を、小さく捉えた小舟の青年がいた。


レド「…(近くまでは“トーリエ”で来れたが、ここからは手漕ぎの方がいいか…)」


レド「…!」


 波音だけが響いていた。


レド「…あった。」


続く


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