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【第41話 亀裂】

 ――ルンド・バルゴアの“庭園”。

 文院より裏口へ続く通路を抜けた先、高い城壁で隔てられた中に、それはあった。

 ルンド・バルゴアが一堂に会している。


ゾラル「…原基の稼働率の問題だけではない。」

パラ「……虚偽をほざいたか、あの若造め。」

ゾラル「不安定化に続き、供給にも問題が生じている…ごほっ、ごほっ…!」


ンカィ「…どうされますかな。」

モルトガ「……」

ンカィ「…モルトガ殿は、この事態にも冷静ですな。」

モルトガ「…重要なのは、この不均衡をどう正すかではないのか?」


パラ「このままでは、戦を行っても割に合わん。」

ンカィ「…どう思われますか。」


ンカィ「――“ファイ・デュナンプ”様。」


 奥の小さな椅子に腰を掛ける“その男”は、

 そこに居ながら、あまりにも静かで、気配を感じさせない雰囲気があった。

 だが、その浅黒い顔が、わずかに動く。


ファイ「……原基は、その程度では死なん…」


ンカィ「…それは安心できる。…しかし、これ以上、泳がせておくわけにもいきません。」

パラ「…“牙”と連携して文律師の死者の安定供給をやってみせたのは、評価に値するが…」


パラ「…まさか、その裏で原基の改竄を進めているとは…」


パラ「ガナック・エギングめ…!」


 その時、遠くから扉を叩くような音が聞こえる。


ゾラル「……セヴァルドだ。……パラ、応対を頼む。」

パラ「…はい。」


 パラは、庭園の入り口の扉に触れると、体がその中へ溶け込んでいくように消えていった。


 セヴァルドは、長い廊下の一番奥、扉の前に立っている。

 扉が擦れた音を立てて開く。


パラ「…何だ。」

セヴァルド「……ようやく、しっぽを掴みました。」

パラ「……」


セヴァルド「…原基から、奴の改竄した履歴を入手しました。」

パラ「……ほう。」


セヴァルド「…しかし、奴の改竄は予想以上に進められており…」

パラ「…?」


セヴァルド「…単刀直入に申します。」


 セヴァルドは、少し呼吸を整えた。


セヴァルド「…骸府の回収条件が変更されております。」

パラ「!……」


セヴァルド「しかし、詳細の内容は小生では掴めず。…パラ様なら何か分かるかと…」


パラ「…さて、どうかな。……一旦、下がるがよい。」

セヴァルド「?……はっ。」


 扉は閉められた。



 ――再び、“庭園”。


パラ「…骸府の回収条件が書き換わったと。」

ゾラル「……なに?」


パラ「…ファイ様。ご覧になれますか?」


ファイ「……。」


 ファイは、静かに目を閉じる。

 手に持った黒い“杖”のような物体が、少し振動したように見える。


ファイ「………“自然死”に戻っているようだ…。」


パラ「!」

ゾラル「なんだと……?」


 そこに口を挟んだのは、ロゥバル・シャルティエという老人だった。


ロゥバル「…元の原基に戻ったわけだな…ふふふ…。」

ンカィ「…笑っている場合ですか、ロゥバル殿。」

ロゥバル「……いや、一端の人間がここまで潜れるとは、感心していたところだ。」

ンカィ「これは、ヴェシュラ・ジルクウェイによる所も大きいでしょう。」


ンカィ「…奴は、やはり危険だ。古言語を理解し始めている。」


ゾラル「…回収条件を“不問”に戻せ。」


ゾラル「血が足りん。……このままでは、我らが先に朽ちる。」

パラ「…はっ。セヴァルドに申し付けておきます。」


ゾラル「……それと、ガナック・エギングを失墜させる。」

パラ「…方法は?」


ゾラル「…国の権威に担ってもらおうか。」

パラ「…?」


ファイ「………」



 ――一週間後。

 エストルド城。


ファルド「陛下。」

ウィガロ「…ファルドか。」

ファルド「……こちらを」


 ファルドは、慌てた様子でウィガロの前に跪き、文書を差し出す。


ファルド「…ルンド・バルゴアより書簡であります。」

ウィガロ「…なんと。」


 ウィガロは紐を解き、丸められた紙を広げると、その目がせわしなく動く。


ファルド「…ご内容は?」

ウィガロ「……」


ウィガロ「…文院と牙の繋がりは、ガナックが発起人とある。」

ファルド「!……」


ウィガロ「…原基の改竄を進め、文律の暴発を引き起こしているのも奴と…。」

ファルド「誠ですか?」


ウィガロ「……奴らを信じるか否か、問題はそこではない。」


ウィガロ「…事実確認は、この私が行う。」


ウィガロ「…ガナックを召喚しろ。……奴の言い分も聞く。」

ファルド「…はっ。」


ウィガロ「…事実であれば、執筆官の役職を剥奪する。」

ファルド「!……はっ。」


続く


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