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【第4話 はぐれ者たち】

 土嚢で補強された堤防。

 彼らは一仕事終えると、館へ戻っていた。


ロルダン「話の途中であったな?」

レド「え…。あ、はい…。」

ロルダン「…文院を抜けようとしただけで、命を狙われる…か。」

ファーボ「何か重要な情報を知っているのか、それとも…」

ロルダン「文律の才が図抜けているか…だな?」

レド「…そうでしょうか。」


レド「…僕は、そういう評価をされたことはありません。」

ジザ「…。」

レド「…それに、機密情報を知っているわけでもありません。」

ジザ「はぁ……。とぼけているのか、天然なのか…。」

レド「?」


ガルド「なあ、小僧。」

レド「…はい?」

ガルド「文院に、剣士風の男がいるだろう?…大柄で、腕に大きな傷があるはずだ。」

レド「…大柄の剣士…。すみません。心当たりは……。」

ガルド「…知らねえはず、ねえよな?」

ロルダン「ガルド、止さんか。」

ガルド「……。」


ガルド「…悪かった。」

レド「いえ…。お力になれず、すみません…。」

ガルド「お前、年齢は?」

レド「…26です。」

ガルド「…なら、お前じゃないな。…オレから聞きたいことは以上だ。」

レド「…?」


ロルダン「…うむ。正直なところ、今の君の話を我々が信じていいかどうか、判断する材料に乏しい。しかし…」


 ロルダンの発言を聞き、ジザが何かに感づく。


ジザ「…ロルダンさん。まさか…」

ロルダン「…それ以上に、文院に何か企みがあることは、君の話以上に信じられるものだ。」

ジザ「…出たわ…。」

ロルダン「いちいち口を挟むな、ジザ。」


ロルダン「…レド殿、しばらくここに居るといい。」

レド「え…?」

ジザ「…はぁ。」

ロルダン「君を信じる…など、簡単に言うことはできない。」


ロルダン「しかし、君はその年まで、あの組織に居てもなお、抜けることを選んだ。」

レド「…はい。でも、これが正しいことだったか…。」


レド「…それに、迷惑をかけることになります。」

ロルダン「…気にするな。ここは、すでに厄介者の巣窟のようなものだ。」


 ――その日の夕刻。裏庭の畑。


ファーボ「ここの畝は、全部収穫してもらって構いません。」

レド「…わかりました。この籠、使っていいですか?」

ファーボ「まだ、傷が痛むでしょう?…休み休みで構いませんよ。」

レド「…役に立ちたいんです。ただ、休んでいるだなんて…。」

ガルド「殊勝なこった。」


 ガルドは木のベンチに腰を掛けて、硬そうなパンを頬張っている。


ファーボ「働かざる者、食うべからず。」

ガルド「はいはい。…わかってますよ、じいさん。」

レド「…ガルドさん。」

ガルド「なんだ、坊主?」

レド「あの…。助けてくれて、ありがとうございました。」

ガルド「…お前の為じゃねえ。」

レド「…?」

ガルド「オレは…ある男を捜しているんだ。」

レド「それが、さっきの…?」

ガルド「文院の文律師で間違いない。…だが、今回も手掛かりなしだ。」

レド「すみません…。」


レド「…あれを扱う人間は、文院でも限られています。」

ガルド「…。」


レド「僕も探してみます。」

ガルド「いいって。お前には、関係のない話さ。」


レド「…あの聞いてもいいですか?…なぜ、捜しているんです?」

ガルド「復讐だ。」

レド「…。」

ガルド「…レータといってな、昔の仕事仲間だった文律師だ。」


ガルド「文院のある男に殺された。」


ガルド「……よく笑う奴だった。くだらねえ冗談ばっか言って、うるせえくらいに。」


ガルド「……それが、血だまりの中で転がってた。」

レド「……。」


レド「…あなたが持っている、その剣…。」

ガルド「ああ。…これか。お前なら、わかるだろう?」

レド「…骸府に干渉できるもの、ですよね…。」

ガルド「…レータが殺された現場には、オレもいたんだ。」


ガルド「ヤツに傷をつけて、この剣を奪うのが精一杯だった。…オレはこれを“骸斬り”と呼んでいるが…。」

レド「…僕が骸府に回収されなかったのは、それを使ったから…?」

ガルド「ああ。…得体の知れない代物だ。これを使うとな、妙に静かになるんだよ。」

レド「…?」


ガルド「死体がな。」

レド「……。」


レド「それを預かる人間は、文院の中でも一握りです。…関りが薄かった部署でしたが、候補はそう多くないはずです。」

ガルド「…そうか。それは、一歩前進だな。」


 ガルドは強引に薬草を引き抜く。


ファーボ「こらっ!それは根っこも使うんですから!やるなら、ちゃんとやってくれないと。」

ガルド「…す、すまん。」


 場所は移り、館の廊下。


ロルダン「ジザ。ちょっといいか。」

ジザ「…はい?」

ロルダン「…彼のこと、どう思う?」

ジザ「……。」


ジザ「…あれは、とんでもない…いえ、それ以上のものね。」


ジザ「私はこれまで見たこともないし、表現のしようが無いわ。」

ロルダン「…さすがは、文院本部という所か?」

ジザ「冗談じゃないわ。文院の連中が全員あのレベルだったら。」

ロルダン「…それ以上か?」

ジザ「私はね、ロルダンさん。正直、今回の匿いは賛成できないわね。お人よしの悪い所よ。」

ロルダン「…わかっているさ。」

ジザ「…では、なぜ?」

ロルダン「…彼は、この社会の歪みそのものかもしれん。」

ジザ「…理由になっていないわ。」

ロルダン「ふん。…お前らを雇うときも、それ以上の正当な理由があったのか?」

ジザ「それは……。」


ジザ「…だけど、後悔しますよ、きっと。」


 ロルダンは何も答えなかった。

 ただ、わずかに口角を上げた。

 

 それが、ジザには一番気に入らなかった。


続く


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