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【第34話 兆し】

 ――文院最高評議機関の間。


パラ「オルデアの封鎖の件、どうだ。」

セヴァルド「はっ。王府軍からの撤退要請は続いておりますが、衝突は避けている模様です。」


パラ「……他は。」

セヴァルド「現在、各地の情報を収集しております。断定はできませんが――」

セヴァルド「……不安定化の兆候は、各地で確認されています。」


パラ「傾向はあるか。」

セヴァルド「……辺境区に、偏っているようです。」


ゾラル「……妙だな。」


ゾラル「ガナック。貴公はどう見る。」

ガナック「……原基の負荷が、想定を超えております。」


パラ「それは確かか。」

セヴァルド「……はい。ジラ島にて確認済みです。」


ゾラル「稼働率が高すぎる、か……妙だな。」


ガナック「(……そう来るか)」


ガナック「供給と消費の均衡が崩れている可能性があります。」

ガナック「……過剰運用による不安定化、という見方もできるかと。」


セヴァルド「……それだけで、説明がつくか。」

ガナック「……」


ゾラル「……我々は、まだ何も知らぬ。」


ゾラル「原基が何であり、なぜ力をもたらすのか」。


ゾラル「……その根幹すらな。」

セヴァルド「……はい。それを解き明かすことこそ、我らの務め。」


パラ「……この程度で揺らぐようでは困る。」

ゾラル「セヴァルドの見立てが正しければ――」

ゾラル「オルデアと同様の措置も、やむを得まいな。」


ガナック「……王宮との関係は、綱渡りです。」


ガナック「押し引きを誤れば、戦になります。」

パラ「……それがどうした。」


パラ「近年の王宮の振る舞い、看過できるものではない。」


ゾラル「……ああ。奴らは我々の力を削ごうとしている。」


ンカィ「……執筆官制度など、不要だったのだ。」


ンカィ「国家の監視など……。」


ゾラル「……その通りだ。」


ゾラル「……そうは思わぬか、ガナック。」


ガナック「……はっ。」



 ――アリハンテ地方、サヌアルステート領。

 ローダ地方を沿岸に北上してグノース川を渡ると、最初に現れる領地だ。

 エッペルの町。

 古くからある港町だが、沿岸部は浅瀬が広範囲に続くため、

 大型の船舶は接岸することができず、もっぱら地元の漁船が往来している。


 埠頭の端。

 小柄な男が、立ち止まっては歩き、また止まる。

 潮と土にまみれた外套。手入れの跡は、ほとんどない。


 ――レドだ。


レド「……安定している」


レド「……沿岸部だからか」


レド「……いや……」


 レドは、ぶつぶつと独り言を呟いて、目的もなく、歩き続ける。

 周囲の奇異の目には、まったく気づいていない様子だった。


男の声「おい。…そこのフランバル人。」


レド「…?」


レグナス「……通報があってな。」

レド「!……レグナス。」


 レドは、すぐさま距離を取って、左手を構える。


レグナス「…殺すつもりなら、もう斬っている。」

レド「……?」


レグナス「……ここで、何をしている?」

レド「…あなたこそ。」


レグナス「…そりゃ、知らないか。…当然だ。」


レグナスは、潮で傷んだ樽の上に腰を下ろした。


レグナス「…もう、お前を討つ任からは外れた。」

レド「…え?」

レグナス「二度も失敗したのだ。…想像がつくだろう?」

レド「……」


レグナス「笑えよ。」

レド「…」


レグナス「…オレはミルザとは違う。余計な労働はしたくない。」

レド「……」

レグナス「…だが、その警戒は、まともだ。」


 レグナスの視線は、水平線を眺めていた。


レグナス「…レド、田舎へ帰れ。そこで、慎ましく暮らせ。」

レド「…?」

レグナス「…どこへ行くつもりか知らんが、やめておけ。…犬死するぞ。」

レド「…なぜ、そう思う?」

レグナス「…顔に出ている。」

レド「……」


レド「…レグナス。あなたも、あそこに長いこと居るだろう。」

レグナス「…ああ。」

レド「…なら、わかるはずだ。」

レグナス「……何が。」

レド「……」

レグナス「…わかったところで、何だ。」


レグナス「…共に腐敗を是正しようってか。」

レド「…」

レグナス「……好き好んで死にに行くつもりは無いね。」

レド「…僕も、そんなんじゃない。」

レグナス「…?」

レド「…確かめるだけだ。」

レグナス「……確かめる?」

レド「…ああ。」


レグナス「……まあ、お前は昔から変人だったからな。」


レグナス「お前のことは、理解できん。」

レド「……レグナス。」


レグナス「…“物乞いが居た。追っ払った。”……それだけだ。」

レド「…」


レグナス「…以上だ。また見かけたら、次は斬るぞ。」


レド「……」


レド「…わかった。」


レド「…最後に、ひとつ聞いていい?」

レグナス「?」


レド「…ルクインさんは、まだ本部にいる?」


レグナス「……だろうな。」


 レグナスは、そう言い残すと去っていった。

 夕日が、波の上で砕けていた。


続く


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