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【第33話 一歩】

 レドは、穏やかな日々を――手に入れていた。


 戦で荒れた村を直し、水を引き、土を均し、作物を育てる。

 文律を使い、時には自分の手で。


 それは新しく、確かに満たされる日々だった。


 ……それでも。


 羊皮紙に文律を記すときも、

 鍬を振るい、掌に肉刺を作るときも、

 陽を浴びた布に包まれて眠るときも。


 ――消えない。


「……止める」

「――全部」


 ガナックの声が、離れなかった。


 ずっと、無知だった。

 ……いや、違う。


 知ろうとしなかった。


 世界がどう出来ているかよりも、

 誰かに必要とされることの方が、

 レドにとっての“世界”だった。


 このままでいい、とも思った。


 ……それでも。


 進まないと、続かない。


 レドは、もう迷わなかった。





 ――ある日。

 デインラム、早朝。


 ……静かすぎた。


 テスは違和感を覚え、ロルダンの部屋の扉を叩く。


ロルダン「……なんだ、テス。……賊か?」


テス「……レドが居ない。」

ロルダン「……なに?」

テス「部屋に……手紙があった。」

ロルダン「……」


テス「……私たち宛てだ。」

ロルダン「……まだ読んでいないのか。」

テス「……ああ。」


ロルダン「…すまない、テス。他の者を起こしてきてくれ。会議室に集合だ。」


 テスは頷くと、廊下を歩いて行った。



 ――会議室。

ガルド「…で、ベッドには大量の紙文律と、その手紙があったということだな?」

テス「…ああ。」

ジザ「……」

リュエラ「…まだ、たくさん教えてもらいたいことがあったのに…。どうしてですか?」

ファーボ「……ふむ。まずは、内容を読みましょうか?」

ロルダン「ああ、頼む。」


ファーボ「…それでは。」


 ファーボは、折りたたまれた紙を手に取る。

 折りたたまれた表側には『デインラムの皆さんへ』と記されていた。


『デインラムの皆さんへ


勝手に出て行くことを、先に謝らせてください。


ここでの時間は、好きでした。


……それでも、行きます。


最近の文律のこと、少しだけ心当たりがあります。

うまく言えませんが、このままにしてはいけない気がします。


止められるのかは、わかりません。

止めるべきなのかも、まだわかっていません。


でも、一度見てきます。


心配は、あまりしないでください。

たぶん、大丈夫です。


落ち着いたら、戻ります。


――戻ってきてもいい場所でいてくれると、嬉しいです。


追伸

部屋に残した紙文律、使えそうなものがあれば使ってください。


レド』


ファーボ「……ということです。」

ロルダン「……まったく、あいつは……。」


 ジザは、勢いよく立ち上がる。


ロルダン「おい、ジザ。どこへ行く気だ。」

ジザ「また勝手なことして!余計な紙文律まで残して……!」

ロルダン「……探しに行くことはない。」


ジザ「……は?」

ガルド「……今回ばかりは、オレもおっさんに賛成だな。」

ジザ「アンタ、本気で言ってんの……?」

テス「……ああ。行かせてあげよう、ジザ。」

リュエラ「皆さん、本当にそれでいいんですか?だって……仲間なんでしょう?」

ガルド「……ああ。」


 一拍。


ガルド「だからだよ。」

リュエラ「……どこへ行くのかは知りませんけど、レドさんは文院に狙われているんでしょう?絶対、危ないじゃないですか……!」

テス「……大丈夫だよ。」


リュエラ「……!」


テス「あいつなら。」

ガルド「そうそう。……いざって時は、オレたちが助けりゃいい。」

リュエラ「そんな……」


ジザ「……」


 ジザは、言葉を飲み込んだ。


 しばらくすると、会議室にいた者は散っていった。

 そこには、リュエラだけが残る。

 机にある手紙と、積まれた紙文律を眺める。


リュエラ「…“大丈夫”って……」


続く


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