【第23話 交差点】
レドとガルドの先に、ニルヴァンが構える。
その更に後方、文律師のオルトラとグラムが木陰に身をひそめる。
オルトラ「ちょっと待て…奥のあいつ…見たことがある。」
グラム「あいつ、レドじゃないか?……オルトラ、さっさと退却するぞ。」
レドは半身の体勢を取る。
ガルドも、その少し前方で剣を構える。
ニルヴァン「“トーリエ”。」
レド「!!」
レドは、瞬きほどの刹那に、弾き飛ばされたガルドの姿を捉えた。
ガルド「――ッ!」
レド「(速い…!)」
ニルヴァン「“トルヴァ・オルド”!」
ニルヴァンの斧が赤黒く包まれる。
ガルド「逃げろ、レド――」
レド「“ランバー”!」
レドは、避けない。
――むしろ、一歩踏み込んだ。
防御の重ね掛けで、ニルヴァンの会心の一撃を受け止めた。
二人の距離は、ほぼ零。
ニルヴァン「(こいつ…オレの必殺技を…!)」
ニルヴァンは、バックステップで間合いを取る。
ニルヴァン「なるほど、“逃げないか”…。……ん?」
レド「…!」
二人は、ある“違和感”をほぼ同時に感じ取った。
わずかに、空気が歪んでいる。
ニルヴァン「(…なんだ…この揺れは。)」
レド「(…これは…ユリックの“残滓”…!)」
レドは、直感的にその“力場の歪み”を捉えるように、左手を少し引いた。
ニルヴァン「(まずい…!)…“トーリエ”!」
それを感じ取ったニルヴァンは、後方へ高速移動する。
レド「“エンボル”…!」
光弾の収束が不安定だ。
ニルヴァン「馬鹿めッ!暴発するぞ!」
レド「…構うか…!」
エンボルの形状が不安定に暴れている。
空間そのものを削るように、光が歪んだ。
そして、それはニルヴァン目掛けて解き放たれた。
ニルヴァン「!!!」
すさまじい爆風が巻き起こる。
同時に、レド自身の身体が歪むように見えた。
レド「…ぐっ!」
レドは膝をつき、口から血を滴らせた。
ニルヴァン「…がはっ……!」
ガルド「お前は、逃がさん。」
倒れたニルヴァンの喉元に、ガルドは剣を突きつけた。
ニルヴァン「…!」
ガルド「……お前ら、何を企んでいやがる。」
剣先が、わずかに沈み込む。
ニルヴァン「……はは……」
ニルヴァン「……まだ、そこか……」
ガルド「答えろ。」
ニルヴァンは、血を吐く。
ニルヴァン「……“上”を見ろ……」
ニルヴァン「……全部……繋がってる……」
ガルド「!……。」
レド「……ガルドさん。」
レドは、ふらふらとガルドへ近づく。
ガルド「……死んだ。」
レド「……。」
ニルヴァンは、瞳は虚ろに宙を眺めたまま、息絶えていた。
ガルド「………。」
レド「…。」
二人の間には、沈黙が包み込んでいた。
――その日。
“ダイガナの牙”によるローダ地方を中心とする同時多発テロが勃発していた。
だが、レドとガルドは、その奥にある“闇”を見据えていた。
別々だったはずの二つの道が、一つになる。
レド「…行きましょう、ガルドさん。」
ガルド「……ああ。」
レドは、遠くを見ていた。
その瞳に、もう迷いはなかった。
――それが、この世界の“都合”だというのなら。
――それでも、抗うしかない。
続く




