表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/52

【第21話 共鳴】

 オングステート領トラウダンの町。

 明朝。静寂を切り裂く矢の雨が降り注ぐ。


門番「敵襲!…敵襲ーッ!!」


 町の鐘が鳴り響く。


衛兵A「“ダイガナの牙”だ!」

衛兵B「東門へ応援を回せ!」



 ――同時刻。

 カイグンクス領、南の平原。


カザーナ文律師「ぐはっ!」


 それは、レドたちが昨日遭遇していた輸送隊の一行だった。

 文律師たちが地面に伏せて倒れている。

 戦士風の男たちが3人、馬車を囲んでいる。


戦士A「ここだな。」


 一人の戦士が、馬車の側面を覆っている布を剣で払う。


戦士A「!…いない?」


 次の瞬間、男たちは視界がわずかに暗くなったような気がした。

 ――頭上を見上げる。


戦士B「!!」

若い男の声「“ヴァイラ”。」


 それは、宙に浮かぶはずのない大きな岩だった。

 男たちが見上げた瞬間、岩は急降下する。

 鈍く重い音が、砂塵と共に響き渡る。


 少し離れた林の影に、ユリックたちの姿があった。


若い文律師「…やはり、すごい“効果”です。」


若い文律師「ユリックの近くにいるだけで、出力が…明らかに上昇している…。」


ユリック「……まだ、いけますよ。」

若い文律師「…え?」


ユリック「…一人、回避している。」

若い文律師「!…そこかッ!“エンボル”!」


 若い文律師から光弾が放たれて、土煙から這い出てきた男に直撃する。

 教師が後ろから短剣で一突きする。


ユリック「…後方からも気配を感じます。」

若い文律師「なんだって…。」


カザーナ教師「…狙いは…物資ではなく、君かもしれない。」


ユリック「…?」

若い文律師「えっ…!」


若い文律師「なぜ、ユリックを?」


 その教師は、首を横に振った。


カザーナ教師「…今しがた、襲ってきた連中は“牙”だ。」

若い文律師「“牙”…!?……でも、なぜ、たった一人の文律師を狙うんです…?」

カザーナ教師「…我々には計れない力学が働いているんだろう。」


カザーナ教師「…ともかく。警戒しておいて損はなかった。護衛を失ってしまったが…。」


ユリック「ちょっと、“ジャブス”で索敵してみます。」


若い文律師「…今のうちに、紙文律を準備します!」

カザーナ教師「頼む。」


 ユリックは林から出ると、ふらふらと歩きながら、俯いて黙り込んだ。


ユリック「……敵は…文律師以外はわかりにくいな…結構いる……文律師もいる…。」


ユリック「…強そうなのが居る……。でも、こっちからも“何か”迫っている…やばそうなのが…。」


カザーナ教師「なに…?北側からも、来るというのか?」

ユリック「…でも、これは……ああ、昨日の人だ。」


 そのユリックの表情は、この状況には似つかわしくない、安堵にも似た笑みだった。


カザーナ教師「昨日の……?」

若い文律師「お二人とも!…南の方向!敵の影を捉えました。」

カザーナ教師「その紙文律は、広範囲と言っても座標指定のものだ。敵をしっかりおびき寄せてから使用するんだ。」

若い文律師「…わ、わかっています。」

カザーナ教師「ファーレイン君も頼むぞ。」


ユリック「…」


 ユリックは、呼びかけられたのにも関わらず――

 どこかを向いて、ぶつぶつと何かを呟いている。


カザーナ教師「おい、ユリック。」

ユリック「…ああ、すみません。…今なら、いいかもしれない。」


 戦士の集団が、若い文律師に気が付く。


若い文律師「……今だ、発現。」


 若い文律師が手に取る羊皮紙が、暴れるように震える。

 羊皮紙は、乱れながら燃え尽きる。

 そして、いくつもの光弾が周囲に生成されて、敵の方へ急発進した。


戦士「!…文律だ!構えろ!」


 戦士たちは盾を前面に出し、身構える。

 盾で防いだのも、束の間だった。

 ――次の瞬間、男たちの足元が激しく振動して、地盤が崩れる。


戦士「なに!?」


 戦士たちは、その崩れた地面に足を取られて転倒した。


若い文律師「…やっぱり…すごい力だ…。」


 若い文律師は、そのまま横へ傾く。

 咄嗟に教師が、その青年の肩を抱き寄せる。


カザーナ教師「よくやった。…ファーレイン君、行けるか?」

ユリック「…ああ、はい。でも、その必要はないみたいです。」

カザーナ教師「…なに?」


レド「……発現。」


 後方から、いつの間にか来ていたレドが紙文律を発動した。

 天空から無数のエンボルが敵へ向かって急降下する。

 ――その光弾の軌道は、“滑りすぎていた”。


 爆風の中で、戦士たちの断末魔が響く。


レド「…(速すぎる…)。」


ユリック「…ね、そうでしょう?」

カザーナ教師「君たちは…昨日の…!」


レド「…さすが、ジザさんの紙文律…破壊力抜群だ。……でも、これは…」

ガルド「なんとか間に合ったか。」


カザーナ教師「君たちは昨日のお方。…助太刀、感謝します。」

レド「いえ…」

ユリック「敵は、まだ来ます。」

レド「そのよう…ですね。」


レド「…明らかに構文以上の威力があった。」

ユリック「はい?」

レド「…辻褄が合わない。…何をした?」

ユリック「……鋭いんですね。でも、わかりません。」

レド「わからない…?」

ユリック「…奥に引っ張られると感じがあると、うまくいくというか……」


レド「…(その感覚、普通じゃない。あれは――)」


ガルド「…おい、頭がおかしくなりそうな会話は、その辺にしておけ。」

レド「はい。…明らかに、下っ端じゃなさそうなのが、来ていますね。」

ガルド「ああ。…さすがに、オレでも殺気を感じるぜ。…格が違う。」


 砂塵の向こうから、数人の戦士たちが現れる。

 その集団の奥に、大きな斧を持つ文律師の男がいた。


ニルヴァン「…“ご予約”の無い方は、ご退席願おうか。」


ユリック「…頼りにしてます、“元文院”の人。」

レド「…。」


続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ