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【第17話 道】

 朝日が稜線からわずかに顔を出す。

 村唯一の宿屋からレドは出た。

 ガルドは、すでに表で馬の手入れをしていた。


レド「…行きましょう。」

ガルド「……ああ。」


 ガルドは、背中を向けたまま応えた。


ガナック「…発つのか。」


 村の広場の方からガナックが歩いてくる。奥にヴェシュラも居た。


ガルド「…先に行ってる。」

レド「…あ、はい。」


 ガルドは馬の手綱を引き、村の外へ向かい始める。


レド「…。」

ガナック「…“禁律”を受けたそうだな。」

レド「……やはり、知っているのか。」

ガナック「セヴァルドのことだ。…いや、その“上”の意思かもな。」


レド「…どうして…」

ガナック「…?」

レド「…オレを殺したところで、何にもならない。」


ガナック「…正常な社会運営を脅かす危険因子は、早期に潰しておくのが賢明だ。」

レド「わからない。」

ガナック「お前は、そうだろうな。」


レド「…原基を無力化するなど、できるはずがない。」

ガナック「それは、どうかな。」

レド「…可能だとしても、ルンド・バルゴアが気付かないはずがない。」

ガナック「…だろうな。」


レド「戦いになる。……いや、戦いにもならずに死ぬよ。」

ガナック「…それも、わかっている。」

レド「ガナック、君は……」


ガナック「…ところで、レド。」

ガナック「…あいつと、お前。…戦ったら、どっちが勝つと思う?」


 ガナックは静かな笑みを浮かべる。顎でヴェシュラを指した。


レド「…勝てないよ。彼女には。」

ヴェシュラ「……ご謙遜を。」

ガナック「…いや、レド。お前の意見は正しい。」

レド「…。」

ガナック「ヴェシュラは、文律師の完成品と言ってもいい。」


ガナック「それが、文院を根底から破壊するのだ。…皮肉だろう?」

レド「……ガルドが待っている。…もう行く。」


ガナック「…ルンド・バルゴアは、文律師の“死”の上に成り立っている。」

レド「……。」

ガナック「平和だと困るんだ。」


ガナック「…だから、止めるのだ。――全てを。」


ガナック「…見て見ぬ振りも、罪だぞ。」

レド「…わかっている。」

ガナック「だったら、道は一つだ。」

レド「……いや。」


レド「…もしかしたら、君が正しいのかもしれない。」


レド「…だけど、そのために流される血がある。…君は、そういう男だ。」

ガナック「国家の再構成には、避けては通れん。」

レド「……だから、わからないんだ。」


ガナック「…?」

レド「…君を信じていいのかすら、わからない。」

ガナック「……本音だろうが…。飾り気が無さすぎる物言いだな。」


レド「…ガナック。オレは、文院を抜けて良かったよ。」

ガナック「…。」

レド「身寄りのない、こんなオレにも、手を差し伸べてくれる人たちがいるんだ…。」

ガナック「…そうか。」

レド「…少なくとも、オレはあの人たちに恩返しがしたい。」

ガナック「……。」


レド「…ガナック。君にも、そう思える人はいるかい?」


 レドは、そう言い残すと、そのまま去っていく。


ガナック「……。」

ヴェシュラ「…ガナック様…。」


ガナック「…文律師が死ねば、原基は動く……」


ガナック「……それを止めるには…」


続く


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