【第13話 仲間】
レグナスらとの戦闘から半月後。
デインラムのメンバーは一堂に集まり、話をしていた。
ロルダン「…このままでは、ここが戦場になる。」
その言葉は、だれも否定できなかった。
ガルド「望むところじゃねえか。」
テス「だが、表立って軍隊を派遣することなんて、文院はできないだろう?」
ロルダン「もちろんだ。…だが、あの手の輩はまた来るだろう。」
テス「ならば、レドは館にいた方がむしろ安全だな。」
ジザ「…。」
テス「紙文律は、もっと仕込んでおいた方がしれない。」
ロルダン「そうだな。」
レド「…ちょっと、すみません。」
ロルダン「なんだ。…作戦でもあるのか?」
レド「…い、いえ。」
ロルダン「?」
レド「…ここを出ます。」
ロルダン「…なに?」
ジザ「…。」
レド「……ここに居たら、みんなに危害が及びます。」
ロルダン「…。」
ガルド「はっは、お前なにを今更言っているんだ?」
テス「そうだ。ここに居た方が安全だ。」
レド「…。」
レド「…いえ、また、あなた達のせいにしている。」
レド「…これは、自分で決めたことなんです。ケジメをつけなくちゃならないんだ…。」
レド「…もう、逃げたくないんです。」
ガルド「…どこへ行くつもりだ。まさか、文院と言うつもりじゃないだろうな?」
レド「…。」
ガルド「はぁ。…当たりかよ。」
ジザ「…死にに行くようなものね。」
レド「…はい。そうかもしれません。」
ロルダン「それは、賛成できないな。…レド。お前は、確かに並外れた使い手だ。しかし、一人でやれることなど、大したことではない。」
レド「わかっています。…だけど、これは心の問題なんです。」
ロルダン「…?」
レド「…僕は、あいつと決着をつけないと…ずっと、繋がれたままなんだ…。」
ロルダン「あいつ…?」
ガルド「…一旦、冷静に考え直せ。」
レド「…。」
ロルダン「そうだな。…来月まで、君の答えが変わらないのなら…もう一度、話す。」
レド「……。」
内心の思いは変わらなかった。
ただ、レドは引き止められるとは思ってもいなかった。
―――数日後。
ファーボ「失礼しますぞ…レドさん。」
レド「はい。」
ファーボ「…おそらく、君宛てに、手紙が来ています。」
レド「!……。」
レドは手紙を取る。
デインラム領主の館宛ての住所の下に、「しかめっ面の文律師のガキ」と書かれている。
送り主は書いていない。
ファーボ「おっと。私がそう思っているのではありませんぞ。」
ファーボ「この館で、文律師の男性はあなただけ。そういうことです。」
レド「…わかっています。」
レドは、封を手で破く。
自分の居場所を知っているのは、ここにいる者と“文院”しかいない。
レドの動悸は高まっていた。
手紙を開く。
―――まっさらな紙だ。
レド「…“ジャブス”…。」
紙の上に文字が浮かび上がる。
『生きていたか。
お前はもう、気づいているはずだ。
文律が“自然ではない”ことに。
あの組織は、力を管理しているのではない。
もっと別のものだ。
“原基”という言葉に、心当たりはあるか。
お前は、理解する側の人間だ。
だから書いている。
来い、とは言わない。
だが、来なければ一生わからない。
ミレンハーセのリーツェで待つ。
お前なら、来る。
ガナック』
――その日の午後。
ロルダン「レド宛ての手紙だと……脅迫か?」
レド「いえ…。まったく予想外の人からでした。」
ロルダン「…?」
レド「……ガナックです。」
ロルダン「ガナック……?」
一拍の静寂。
ロルダン「あのガナック・エギング…!?」
ジザ「!…」
ガルド「はっはっはっ!…で、なんだって?」
レド「…ある場所で会いたいと…。」
テス「罠の臭いしか感じないが?」
レド「…いえ。あいつは、そういう人間じゃありません。…うまく言えませんが。」
ロルダン「文院の文律師の次は、執筆官か…。やれやれ。」
ジザ「ホント、イラつくわね。あんた。」
レド「!…」
ロルダン「おい、何を言っているんだ、ジザ。」
ジザ「わかってるわよ!」
ジザ「あんたが、色々喋ると私たちが危なくなるって思っているんでしょう?…だけどね、これでも数か月、あんたとは色々あったし、文律も教えてもらって…ああ、もう、何でもないわ!さっさと行けば!?」
ジザが乱暴にドアを閉めて出ていった。
ガルド「あいつ…語彙力ゼロだな。」
テス「かわいい所もあるんだよな、たまに。」
ロルダン「はぁ。…不器用すぎるな。」
レド「……。」
ガルド「おいおい、泣くなよ。坊主。」
レド「…ち、違うんです。…嬉しいんです…。」
少しだけ、言葉が詰まる。
レド「…仲間、か…。」
続く




