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【第11話 禁律】

 ミルザの脳内に過去のレグナスの言葉がよぎる。

 「お前は、見たことは無かったか?…レドの“返し”には気をつけろよ。」


ミルザ「…“トルヴァ・レクサ”。」


 再び地を這う衝撃がレドを強襲する。


レド「“ランバー”。」


 レドの足元で衝撃波は左右に分かれて散る。

 レドは一歩前へ出る。


ミルザ「“エンボル”!」

レド「“ランバー”。」


 レドの目の前で光弾は弾け飛んだ。


ミルザ「!…。」

レド「…。」

ミルザ「何なの、こいつ…!」


 一方、ガルドとレグナスは、一進一退の攻防を繰り広げているように見えた。


ガルド「…(こいつ、文律師のくせに、やりやがる!)」

レグナス「(田舎の用心棒の割には、やるな…。)」


 レグナスがガルドの斬撃を横になぎ払う。

 ――一瞬の隙。


レグナス「“ザラー”。」

ガルド「!」


 レグナスの左手から光の刃が伸びる。

 ガルドは瞬時に体をそらすが、額をかすめた。


ガルド「ちっ…!」

レグナス「避けたか。」


 ガルドの額に横へ伸びた傷口から血が流れる。


ガルド「…二刀流だと…?」

レグナス「初見で避けるとは…お前、見込みがあるな。」

ガルド「…けっ、そいつはどうも。」


 レグナスに向かって矢が放たれるが、それを最低限の動きでかわした。


テス「…。」

レグナス「…いい連携だ。」


 再びレドとミルザ。


ミルザ「(このままでは…分が悪い…。)」

レド「…終わりか、ミルザ?」

ミルザ「…まだよ。」


 ミルザの左手に光弾が収束していく。

 みるみるうちに白い球体は赤みを帯びていく。


ミルザ「…“ドライン”!」

レド「…。」


 レドに放たれた赤黒いエネルギー体は、標的に近づくにつれて減速する。


レド「…“ランバー、ヴァルト、カナエ”…」

ミルザ「…!」


 レドの左手の刻印は、慌ただしく点々と灯る。

 一瞬、左手を引っこめると、軽く握られた拳は、再びミルザに向けて広げられた。


レド「……。」


レド「…“ファダン”。」


 レドの前で静止していた炎弾はさらに巨大化し、ミルザの方へと動き始めた。


ミルザ「(…これが“返し”!…受け切れない!)」


 炎弾は、さらに巨大化してミルザへ襲い掛かる。

 ミルザは瞬時の防御文律によって、直撃は免れたものの、

 その余波によって吹き飛ばされ、塀に激突する。


ミルザ「がはっ…!」


 レドの視線が揺れなかった。


レド「…降参しろ、ミルザ。」

ミルザ「……。」

レド「負けを認めろ。…それだけでいい。そうしたら、もう終わりだ。」

ミルザ「…仲間がやられたのに、甘いわね。レド。」


ミルザ「…発現。」

レド「…!」


 ミルザが懐から紙を掴む。

 それは、かつてレドを殺しかけた文律だった。

 避けきれない、と理解した瞬間――黒い閃光が、空気ごと抉り取るように走る。

 そして、レドを貫く。


レド「…!!!」

テス「レド!」

ガルド「なに!?」

レグナス「よそ見をするな。」

ガルド「くっ!」

レド「……や、やはり……禁律…か…?」


 レドはその場に倒れ込む。

 肩の辺りを貫かれたようだった。

 痛ましいその“穴”から遅れて血が溢れ出す。


ミルザ「…下手に避けたわね。苦しまずに死ねたものを…。」

レド「……なぜ、こんな…ものを…?」

ミルザ「あなたが知る必要はない。……楽にしてあげるわ。」


 ミルザが左手をレドに向けた。

 その時、ミルザのすぐ後ろを光弾が通り過ぎる。


ミルザ「!?」


 それは、もう“始末”したはずの場所からだった。

 土煙の中から、また光弾が飛び出してくる。

 ミルザは、“ランバー”で防御する。


ミルザ「…な、なんだっていうの。」


 その“エンボル”の連射は、止まることを知らない。


ミルザ「…あ、ありえない…!」

ジザ「…残念だったわね。」


ジザ「……覚悟なさい。」

ミルザ「……“力”が上がっている…!?」

ジザ「消し飛べ……。」


 ジザが左手を体の後方に引き、再び突き出す。


ジザ「エンボル!」

ミルザ「…やっぱり、あなたは…」


 砂塵がトンネル状に中央から飛散する。

 そのすさまじい速度は、ミルザの防御スピードをはるかに上回っていた。


 ――直撃。


 一瞬、音が消えたようだった。

 その勢いは、直撃してもなお、その後方へ恐ろしいほどの爆風をもたらした。


レド「…!」

レグナス「ミルザ、やられたのか!?」

ガルド「(隙あり!)」


 ガルドがレグナスの剣をへし折った。

 ガルドはそのまま畳みかける。


ガルド「相当、ガタが来ていたようだな!」

レグナス「わかってないな、貴様。…“ゼラー”!」

ガルド「なっ…!」


 レグナスは2本目の“ゼラー”を手に纏い、ガルドのわき腹を刺した。


ガルド「ぐはっ!」

テス「!」


 テスの体が自然と動いた。

 矢を一本放つと、屋根から飛び降りてガルドの前に立つ。


テス「やらせない!」

レグナス「…おっと、それは勇敢すぎるな。」

テス「ガルド、下がっていろ!」

ガルド「…なにを馬鹿なことを…!」


レグナス「……女をやる趣味はない。」

テス「ふざけるな!」


レグナス「…ミルザ。生きているか?」

ミルザ「…はぁ…はぁ…。……ああ…。」

レグナス「退くぞ。」

ミルザ「なっ…何を言うのです?」

レグナス「分が悪い。…このまま押し切れない。」


レグナス「…禁律を使ってもなお、仕留められないのだ。…これは負けだ。」

ミルザ「!…」


レド「……くっ…!」

テス「レド…!」


 レグナスは、テスの方を向いたまま後退した。

 ミルザも辛うじて立ち上がると、門の方へと下がっていく。


レグナス「だが、レド。…よく聞け。」

レド「……。」

レグナス「このまま、逃げ切れると思うな。…お前は“知りすぎている”。」

レド「……な、なに…?」

レグナス「…次は、終わらせる。」


 やがて、二人の影は遠くへと消えていった。

 崩れた塀と、焼け焦げた地面だけが残っていた。


続く


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