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14、人誑し

 カーク市庁。ここは現在、クラリーチェ・ヴァレンティア率いる第八強襲機甲師団暫定司令部になっていた。

 

 朝の光が差し込む中、灰色のコンクリ造りの執務室には、二人の男女がいる。

 

 そこに、扉が開き、軍服姿の少年が姿を現す。

 

「姉上、お元気そうでなによりです……というわけで第666特別大隊、徹底抗戦演説を聞いて馳せ参じました。姉上の戦列に加わりたく。合流の許可を」

 

 軽く片膝をついての挨拶。白の髪が揺れ、少年──スカイ・キャリアベースの口元には、僅かながらの微笑が浮かんでいた。

 

 執務机の奥、栗毛の長身の女が、しばし沈黙する。

 

「……よく、生きていたな」

 

 その声は低く、震えていた。クラリーチェ・ヴァレンティア。カーク市を守り続ける女傑であり、スカイの腹違いの姉。王家に連なる高貴な血筋でありながら、最前線で自走ロケット砲を愛車とし、指揮を取り続ける彼女は、普段決して涙など見せる女ではなかった。

 

 だが次の瞬間、彼女は大股で歩み寄り、弟を強く抱きしめた。

 

「本当に……よく来てくれた、我が弟よ……」

 

 スカイの肩が、少しだけぴくりと動いた。

 

「姉上、人目が……」

 

 少し離れた所には彼女の参謀がいる。彼ともスカイは顔見知りだ。少し気まずい。

 

「弟との再会を喜んで、何が悪い!」

 

 その声は嗚咽混じりだった。あの鉄の姫が、涙を流している。それだけで、長き逃避行の果てにここへ辿り着いた価値があったと、スカイは思った。

 

 しばらくして、クラリーチェは涙を拭き、ようやくいつもの凛とした顔に戻る。

 

「まずはゆっくり休め。指令は追って伝える。……それと、ここだけの話だが」

 

 彼女はそっとスカイの手を取ると、真剣な眼差しで言った。

 

「カークに集った政府軍残党の中でも、私はお前を、一番信頼している。……活躍、期待しているぞ?」

 

 スカイは一瞬、目を見開いたが、やがてふっと笑う。

 

「……ははっ。光栄です、姉上」

 

 敬礼を一つ残して、スカイは執務室を後にする。

 

 その扉が閉まったのを確認してから、壁際で書類をまとめていた青年が小さくため息をついた。

 

「……またクラリーチェ様の『いつもの』ですか」

 

 眼鏡をかけた青年、シオン・ハインド。クラリーチェの参謀であり、恋人でもある。そして、あのジョオン・ハインドの兄だ。

 

「まーた『ここだけの話、お前だけを信頼している』……って。カークに来た指揮官全員に言ってるでしょ、それ。クラリーチェ様の『一番』は何人いるんですか」

 

「ふふ。私なりの『誠意』よ、『誠意』」

 

 クラリーチェは椅子にどっかりと腰を下ろし、紅茶のカップを手に取る。

 

「言葉でやる気になってくれるなら安いもんじゃない。燃料弾薬は有限でも、言葉は無限よ。何人でも言える」

 

「相変わらずの人誑しで……しかし、ハグはやり過ぎだと思いますがね」

 

 やれやれ、といった風にシオンは肩を竦めた。

 

「なーに、嫉妬してるの?」

 

 クラリーチェがにやりと笑う。シオンはむっと目をそらした。

 

「どうもハインド一族は愛が重い」

 

 まるで悪戯をしかけた少女のような声だった。だが、その言葉の裏には確かな想いがあった。


ここでクラリーチェ姉貴の第八強襲機甲師団の内訳を見てみよう。

・主力T55 (骨董品。近代化改修はしてあるので突然エンジンやトランスミッションが壊れたりはしない……はず。ジョオンの愛車)

・二線級T34(戦車というか近距離戦も出来る近距離自走砲扱い。防衛戦ではもっぱら砲塔から下を埋められて簡易トーチカにされてる)

共にある程度は近代化改修済み。最新MBT? 列強がこんなゴミ国家に売ってくれると思うか?

・BM-21(真の主力。動き回りながらロケットをまき散らして怯ませた所に主力戦車が突入するのが第八機甲師団の十八番。クラリーチェの愛車。一部の車両は下のウラル製トラックが故障し、ロケットだけ引っ剥がされてト〇タのピックアップに移植されてたりする)

・M107 175mm自走カノン砲(主力その二、BM-21に比べると地味ながら堅実な働き)

・PT-76(偵察担当。森林と山と湿地だらけのブラックバニアでは意外にも重宝される。敵と交戦状態になったら祈れ)

・兵員輸送トラック(歩兵戦闘車? んなもんねぇよ。一応、天照の一流メーカー品の中古車の改造品(ふそ〇とかいす〇とか三〇とか)なので信頼性は高い。たまーに日本語で荷台に〇〇工業とか〇〇建築とか書いてある)

・M42ダスター(対空砲だが対地機関砲としても使う)。

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