8.何故、貴方に歪みがあるのか、カウンセリングしましょう。
ジャネットは話を聞いて、まず唖然としさらに困惑する。
親たちの行動結果(因果)が子供たちに影響する(報いる)。
アジアのヒンズー教などにおいてはよく聞く考え方であるけども、キリスト教が一般的なこの国においては一般的では無い。
キリスト教などは基本的に個人の行動結果が天国(理想郷)への鍵だ。
まして、現代の凶産主義教育においては、親の因果が子供に報いるという考え方自体が迷信として笑われるのがおちである。
ジャネットが憤然として言う、
「そんな迷信を聴く為にここへ来た訳ではありません。」
合衆国の一般人なら普通の感想である。
ハートが落ち着いて言う。
「まず、言葉の定義から始めましょう。
まず迷信とはなんですか?」
ジャネットが答える。
「迷信って言うのは、有りもしない事です。」
イワシの頭も信心からなどが迷信である事をジャネットが説明する。
ハートがまとめて言う。
「つまり、事実に基づかない言伝えですか?」
ジャネットが言う。
「そうです。」
ハートがジャネットに聞く。
「でも、親たちの行動結果(因果)が子供たちに影響する事は、多くの実例がある事実です。」
ジャネットが思わず叫ぶ。
「そんなバカな!」
ハートが更に説明する。
「まず落ち着いて下さい、赤ん坊が最初に影響されるのは母親、あるいは自分の世話をしてくれる人、つまり通常は親たちですよね。」
それは普通の事なので、ジャネットは頷く。
「なら、赤ん坊が親の行動を見て真似する事も当たり前ですよね。」
またもジャネットは頷きそうになるが、反論する。
「でも、子供の頃はそうかもしれませんが、大人は自分の判断で行動できますよね。」
「果たして本当にそうですか?実は人生の選択において重要な選択には無意識が影響していると思った事はありませんか?」
ジャネットが驚いた表情をする。
「そんな事、思った事も有りません。」
ハートが続けて言う。
「これが運命心理学とも言われているこの家族心理学の仮説です。」
ジャネットが分からない言葉について聞く。
「無意識ですか?」
ハートが説明する。
「通常、人は表面意識で判断していると、自分では思っています。つまり、今話しをしているのが表面意識です。要は理屈や利害です。」
ジャネットが言う。
「そうです。人は理屈や利害を考えて行動するのです。」
ハートが更に聞く。
「本当にそうでしょうか?むしろ、多くの人は好き嫌いで判断していませんか? つまり、もっと分かりやすい言葉で言えば感情によって選択をしているのではないですか?」
今度は、ジャネットが黙る。
ジャネットはまさに何かを選択する場合、好き嫌いなどその時の感情でしばしば選択している。
だからジャネットは黙ってしまう。ハートが続ける。
「この感情、普通は判断をする時に隠れて影響する意識を、無意識と言います。」
ジャネットが聞く。
「確かに、親は子供たちの選択に、影響を与えているかもしれません。でも、だからと言って運命を決めるほどの影響は無いのでは?」
ハートがジャネットの目を見て言う。
「いいえ、むしろ運命を決めるほどの影響を親の世代のもつれ(歪み)が、次の世代(子供たち)に与えています。」
ジャネットが唸り聞く。
「どうすればいいのですか?」
ハートが言う。
「それをこれから探すのです。」
ハートは静かに紙形を並べる。
ジャネットの別れた夫がジャネットとジャズの方向を向いていないのは当然だが、ジャネットがジャズを向かず何もない方向を向いていた。
ハートはその配置を見てジャネットに質問する。
「男の子が、女の子の姿や服装をする場合においてよくあるケースは、隠された子供が女の子の場合です。」
ジャネットが引き攣った表情で聞く。
「隠された子供って?」
ハートが静かに言う。
「死産、流産、或いは赤ん坊の頃に養子に出されていなかった事にされた女の子です。」
ジャネットが暫し固まり、やっと話す。
「もし、私が女の子を流産してその事を隠していたら、その女の子がジャズに影響してるかもしれないのですか?」
ハートが少し困った表情で言う。
「ここで問題になる事象は、事実を無かった事にするもつれ(歪み)なのです。」
実はジャネットはジャズを生む前に、ジャズの父親とは別のイケメンの男と遊び半分で付き合い、妊娠して流産した事が有る。
ジャネットにこの時、自らの過去の記憶が噴き出す。
ジャネットの全身から脂汗が噴き出す。
ハートは静かにジャネットの表情の変化を見て言う。
「何か思い当る事がありますか?」
ジャネットが一旦、目を落とし、再度ハートを見て言う。
「実は、私はジャズを生む前に赤ん坊を流産した過去が有ります。」
ジャネットはやっとの事で言う。
この事実は誰にも話さず、赤ん坊が出来た事が分かった時に人に相談せずにした事であり、誰にも話した事はない。
ハートが淡々と言う。
「事実を確かめているだけです。非難する事を私はしません。もちろん、他の人に話す事も有りません。」
ジャネットが聞く。
「私はどうすれば?」
ハートが淡々と言う。
「まだ、探しモノ(歪み)は途中です。ジャネットさん、貴方には姉さんが居たのでは有りませんか?」
またもジャネットが固まり、遠い過去に意識が飛ぶ。
ジャネットがまだ小さかった頃、何かの拍子にジャネットの母親がふと漏らした一言を、ジャネットはまたも思い出す。
ジャネットの母親が公園である親子が居るのを見ている。
その親子の前では二人の仲良く遊んでいる女の子たちがいる。
そんな光景を見たジャネットの母親がふと言う。
「実は貴方、二人目の女の子だったのよ。あの時、あの子が生きて生まれれば、ちょうど遊び相手には良かったのにね。」
急に思い出すジャネットの母親の一言。
ジャネットが聞く。
「もし、私には死産した姉が居たらどうなのですか?」
ハートが言う。
「まず、今はそこから始めましょう。貴方のもつれ(歪み)についての解消を。」




