7. 貴方のよどみ(歪み)についてカウンセリングしましょう。
やっとのことジャネットとジャズはヘリンガー協会の門の中に入ることが出来た。
ジャネットには、そこはかなり広くまるで要塞のように感じた。
ジャネットがほっとしたのもつかぬ間、ハートがジャネットに言う。
「さあ、貴方のよどみについてカウンセリングしましょう。」
そのままハートは、ジャネットとジャズを個人カウンセリングをする部屋へと案内する。
ハートは案内する間に、このヘリンガー協会の仕組みをざっと説明する。
「普通は集団セミナーに参加してもらい、その中で必要な人が、何人かのファミリー・コンストレーション(家族因果配置)の爲の代理人(家族の依代)の協力を得て、何故、よどみ(歪みのエネルギー)があるのか探すのです。」
ジャネットの頭の中には?マークだらけになる。
「ファミリー・コンストレーション?」
ジャネットの口から思わず疑問の言葉が出る。
普通は使わない言葉であるから、ジャネットが分からないのは当たり前である。
ハートは笑いながら言う。
「分からないのは当たり前です。今迄ほとんど語られていないのですから。」
ジャネットが分からないけどとても大切な事だと思い必死になって聞く。
「どういう意味ですか?」
ハートがある部屋の扉を明けて言う。
「それをこれから説明します。」
ジャネットとジャズが部屋に入る。
その頃、残された二人、チェトナとジョンソンはさっきのやり取りについてチェトナが質問していた。
チェトナが不満げに聞く。
「なぜ、あんな自分の息子のあそこを切らせ、それをお祝いする女に個人カウンセリングの代金を貸すの?」
チェトナにしてみれば、あんな人でなしのリベラル・トランスジェンダー協会の協力者は、不幸になるのが世の摂理だと思っている。
ジョンソンが遠い過去を見るようにチェトナから視線を外して言う。
「ナザレのイエスの話を聞いて、実は、俺も過去に誤りを犯していた事を思い出したのさ。」
チェトナが驚きの表情をして言う。
「ジョンソンは過去に間違いをしていたの!」
ジョンソンが言いにくそうに言う。
「ああ、俺は嘗て性転換手術を受け、女性モドキになり、再び性転換手術を受けて男に戻った元トランスジェンダーなのさ。」
チェトナはジョンソンの予想外の告白に何も言う事ができない。
「全く、彼女を見て、先生の話を聞くまで自分自身がもつれを持っていた過去をすっかり忘れていたよ。」
チェトナがやっと言う。
「つまり、あの女に同情したの?」
ジョンソンが言う。
「いや、同情ではなく賭けたくなったのさ。」
チェトナが聞く。
「あの女がもつれを解消できる方に?」
ジョンソンが言う。
「ああ、あの女がもつれを解消して、俺に金を返す未来に賭けたくなったのさ。」
チェトナが呆れて両手を広げて言う。
「全く勝率の少ない賭けが好きね。」
個人カウンセリングの部屋ではジャネットとジャズか座った前の机の上で、ハートが、紙で作られた依代(代理人の代わり)を並べ始める。
「まず、ジャネットさんと息子のジャズ君、そしてジャズ君のお父さんがいますよね。」
ジャネットは丸い紙型で方向を示す切込みがあり、息子のジャズは四角い紙型で、同じく方向を示す切込みがある。
紙型の依代は女性は丸い紙型であり、男性は四角い紙型だ。だから、ジャズの父親も四角い紙形で置かれる。
ジャズの四角い紙形はジャネットを見ているが、ジャネットはジャズの依代でも、別れた元夫の紙形でもない方向を向いている。
ただ、それを見ているジャネットには全く意味が分からない。
「何をしているのですか?」
ハートが説明する。
「本来なら、集団セミナーに参加して貰ってその中で行われるもつれ(歪み)の調査を、人の代わりに紙型を使って行おうとしています。」
更に分からないという表情をしてジャネットが聞く。
「さっきから、もつれ(歪み)とおっしゃっていますか、それはどういう意味で、何故不幸に結びつくのですか?」
ハートが語り始める。
「まず、事実が有ります。そしてそれを認める事が正しいと分かりますか?」
ジャネットが首をかしげながら言う。
「当たり前の事ですよね?」
ハートが微笑みながら聞く。
「その当たり前の事実が、実に多くの場合において無視され、無かった事にされる時、もつれ(歪み)が発生して、人が同じような不幸を繰り返すのです。」
ジャネットが驚きの表情で固まる、
「そんな事があるのですか?聞いた事が有りません。」
ハートが更に説明を続ける。
「具体的な実例を話ましょう。私のおばが若く、幼い赤ん坊を残して自殺しました。」
ジャネットが言う。
「その赤ん坊がかわいそうです。」
ハートが続ける。
「でも、これは二度目の繰り返された不幸なのです。」
ジャネットが聞く。
「繰り返された不幸とは、どういう事ですか?」
ハートが言う。
「実は、自殺したおばは、赤ん坊の頃に実父と実母に見捨てられ、養父と養母に育てられたのです。」
まだ理解が追いつかないジャネットにハートが更に説明する。
「つまり、赤ん坊は本当の両親から失われたという事実が相似形で繰り返されたと言えば分かりやすいと思います。」
ジャネットがショックを受けて言う。
「そんな不幸が続くなんて。」
ハートが声を落として言う。
「この不幸の原因は、私にとっての曾祖父の時代の殺し合いに遠因があるのです。曾祖父はある事業で反対派の大人を殺し、その報復で殺されました。」
突然のハートの曾祖父の話にジャネットの理解が追い付かないのが分かる。ハートが補足する。
ハートが続ける。
「自殺したおばには、実は養子である事は知らされていませんでした。だから、おばは少なくとも養父、が実父と思っていたはずです。」
ジャネットが言う。
「誰か、例えば実父か実母が現れておばさんに話をしたのでは?」
ハートが続ける。
「もちろんその可能性は有ります。でも、重要な事は相似形の不幸が、続いた事実です。」
ジャネットが思わず聞く。
「どうすればよかったのですか?」
ハートが言う。
「まず事実を本人(自殺したおば)に話し、本人が不幸の繰り返しを止める為に実父と赤ん坊に起きる不幸の繰り返しを止める必要があったのです。」
ジャネットが聞く。
「そんな事が可能なんですか?」
「可能です。だから、私は貴方と話しているのはです。」
それからハートは、前の世代(親たち)が為した業は、次の世代(子供たち)によって不幸という形で報いを受けるという摂理とでもいうべきエネルギーが存在する事をジャネットに説明する。
聞いた後、ジャネットが聞く。
「不幸を避ける壺とは、ネックレスとはを売りつけるのですか?」
ハートが笑って答える。
「そんな物などここにはありません。」
ジャネットがほっとした表情で答える。
「今はお金が無いので、良かったです。」
ハートが聞く。
「不幸な人々は、不幸な選択を繰り返した人々だと思いますが、どうですか?」
ジャネットが頷く。
「ええ、間違った選択の結果、高額の壺を買わされてしまった結果がクレジット返済に追われ、あげくの果てにここに居ますから。」
ハートが言う。
「結局、人は不幸を選択を繰り返した結果、不幸になる。」
ジャネットには反論できなかった。




