15.ある青年の新たなる始まり。
コウジは、よく動いていると思える古びたトラクターに乗りタヌキ族のトオルと共にあちこちガタがきた教会に来ていた。
そこは、シスター二人が孤児達の面倒をみている。
初老のシスターは猫族のナツ、若いシスターはやはり猫族のミコ、二人で僅かな畑と孤児達の面倒を見ており、その手伝いをタヌキ族のトオルがしている。
孤児達は全部で今は十二人、毎年十三才をこえた者から社会へ旅立つ。
ある程度の年齢は近くの公立学校へトオルのトラクターとは別のオンボロの自動車で送り迎えしている。
そうでない者は基本は手伝いか勉強だ。
シスター二人は朝から忙しい。
トオルがナツにコウジを紹介する。
「自殺しようとしてたから拾ったタヌ。今日からアルバイトとして雇ってくれタヌ。」
洗濯物を持っていたナツは、コウジを上から下まで見る。
「まあ、華奢な男だね。」
コウジに洗濯物を持たせる。
率直に洗濯物を持ちコウジは洗濯物を干し始める。
この後、様々な仕事をしてコウジ達は最後に夕食を取る。
ミコは孤児達について一通りこの日に起こった事を夕食でコウジを含めた皆に説明する。
その後、誰もコウジの過去につき説明を求めない。
そして夕食後、コウジは外に出て月を見る。
コウジは母親がよく言っていた事を思い出していた。
母親は、どんな仕事でも人の役に立つ仕事をしなさいと言っていた。
「働くとは、傍が楽になる事だから。」
今までコウジがしていた事は、傍が楽になる事だったろうか?
芸能界は虚飾にまみれているとはよく言われているが、本質的には弱肉強食の世界であり、傍が楽になるような世界ではない。
それに比べて、今の自分はどうだろうか?
そこにトオルがやってくる。
トオルがコウジに話かける。
「ここには、お前さんの過去に触れない優しさがあるタヌ。」
コウジがトオルに言う。
「実は、母さんが死んでもうどうでもよくなったんだ。」
トオルは黙って聞いている。
「母さんは、僕の為に頑張って働いてくれた。だから僕もどんな事があっても母さんに楽して欲しかった。」
コウジが男妾のようにゲイ能プロダクションのサメ族のジャニーにあの穴を掘られても我慢していたのはいつか母親に楽してもらいたかったからだ。
トオルは静かに聞いている。
「でも、もう母さんはいない。」
ここでコウジは言葉をきる。
「だから、僕はここで子供たちの為に、色々してあげる事にした。」
トオルが答える。
「きっとお母さんが見守ってくれるタヌ。」
コウジは、暫くここで働く事にする。




