12.本当の狙いは文明の破壊です。
ここはダウンタウンの古びたアパート、その三階にギャグは年老いた母親と共に暮らしている。
嘗ては若かった母親も年老いて、叔父は既に死んでいる。
彼らは嘗て民主党左派たちの理想を信じ、賭けたのだ。
叔父はよく言っていた。
「みんなが幸せになれる社会をお前たちに残したい。」
それに対しまだ若かった母親が言う。
「でも、このカリフォルニア国では凶産主義者は政権を取れないよ。」
まだ、みんなが若かった頃に語った夢は、夢というより悪夢でしかなかった。
結局、みんなが幸せな社会ではなく、強盗と殺人が昼間から横行する国になっていた。
ギャグがくどいほどパンをスープにつけて食べるように言ってアパートを出ると、そこには双子のギャグの愛人が待っている。
ギャグが二人に言う。
「まず日雇いの仕事をして、日銭を稼ぐ。」
三人とも、金がなくクレジットもないので日銭を稼がなければ、次の日から何も買えなくなる。
ギャグが二人に聞く。
「何処か、まだ営業している店はあったか?」
二人が共にノーと言う。
あまりにも強盗が多いと、商売として成り立たなくなり店自体が無くなる。
今やカリフォルニア国の都市部は、聖域(無法地帯)となり武装警備員を雇える大金持ちの豪邸以外は、犯罪者と郊外へ脱出できないギャグなどの貧しい人々しかいない。
だから、ドラッグストアなどが無くなるとギャグたちなどの貧しい人々は途端に生活に困る。
「やり過ぎだったかな?」
双子の愛人が揃って言う。
「「俺たちが強盗しなくても他の連中が強盗するから同じ。」」
「そうだよな。その通りだよな。」
ギャグは自分で言っていて思う。
「不法移民が多すぎだよな。」
二人も揃って言う。
「「これじゃ、まるで開拓時代に戻ったみたいだ。」」
しかし、今は開拓時代ではない。つまり、開拓時代はかなり自給する出来ていた生活も、今は都市のインフラが前提になる。
既に無法地帯となったカリフォルニア国のサクラメントの橋を見ると、そこには無数の人々が水を求めてバケツなどを持って水を汲みに来ている。
その光景は水道さえしばしば止まっている事を意味する。
無数地帯になると言う事は、全ての公共サービスもしばしばストップする事を意味する。
ギャグたちは、デモどころではないので、カインのいるリベラル・トランスジェンダー・ヘルス専門協会へ向う。
そこにはいつもデモに参加してきたアンティファ(極左ファシスト)のメンバーがいた。
ギャグたちは、彼らと共にある時は地球温暖化、ある時は軍拡反対、ある時はLGBTといったプラカードを持ってデモに参加していた。
デモ参加者の一人、ハイエナ族の男がカインに質問する。
「不法移民たちが強盗するので、どの店も閉まっている。俺たちは金があっても何も買えない。」
「そうだ。そうだ。不法移民たちを受け入れた民主党左派(凶産主義者)はどうするつもりだ!」
皆が非難するなか、ギャグが発言する。
「今日の食い物がないのです。」
皆が一斉に沈黙し、次に誰かが叫ぶ。
「食い物と飲み物を寄越せ!」
カインがハゲタカ族の職員に指示して食料と飲物を配り始めた。横にはライフルを持ったハゲタカ族の警備員がいる。カインが宣言する。
「一人、3つまでだ。」
つまり翌日またここにくるようにする為、1日分を配る。
ギャグたちは、とりあえず食物と飲物を受け取る。
ギャグたちが協会からある程度離れたところで、愛人たちがギャグにパックを一つずつギャグに渡す。
「「私達は一食分減らすから。これをギャグのお母さんに渡して。」」
ギャグは思わず二人を見て言う。
「ありがとう。本当に助かる。」
二人は言う。
「「さあ、速く戻って食べさせてあげて。」」
ギャグは、すぐにアパートへと走って戻る。
アパートに着き、ギャグが部屋へ入る。
ギャグが帰ったよという。
いつもなら、ギャグの母親がお帰りと返事をする。
しかし、今日は返事がない。
時々、ギャグの母親は眠っている事もあり、その時は返事がない。今日もまた眠っているのだと思い、ギャグが母親を起こそうと大声をかける。
「母さん!帰ったよ!」
大声で呼びかける。ここでいつもなら母親が目をさます。
しかし、母親は起きない。
「母さん!お母さん!」
何度も呼びかけるが反応がない。
恐る恐る母親に触れる。
母親は既に冷たい。
ギャグが母親を抱きしめる。
その時、母親がえらく痩せている事に気づく。
ギャグが涙を流し叫ぶ。
「お母さん。」
小さかった頃から既に父親はいなかった。
ギャグの母親は、苦労しながらもギャグを育ててくれた。
ひとしきりギャグが泣いた後、母親の使っていた机を開ける。そこにはギャグが渡したパンと、一枚のギャグ宛の手紙があった。
"愛しいギャグへ
もうお母さんはボケてしまって
だから、お前のためにパンをとっておく"
どうやらギャグが渡していたパンを食べずに隠していたらしい。
ギャグは遠い昔、まだギャグが小さかった頃に母親がパンを取り出してギャグに渡していた時の事を思い出す。
ギャグが何処からか現れたパンについて聞くといつも母親は言うのだ。
「隠してあったパンだよ。」
でも、今は分かる。それは母親の食べるべきパンで、それを腹を空かせたギャグに与える為に、隠してあったといつも言っていたのだと。
ひとしきり泣いた後、ギャグはカインのいるリベラル・トランスジェンダー・ヘルス専門協会へと向かっていた。
途中で公園にいた愛人たちと共にどうしても聞きたい事を、確かめる為。
ギャグの母親は常にギャグに言っていた。
「カリフォルニア国では、凶産主義者は知事にはなれない。だから、貧しい人々はいつも苦労する。」
でも、今はカリフォルニア国の知事は、民主党左派(凶産主義者)だ。それなのに何故、こんな事になる?
おかしいだろ。
これが、ギャグの疑問だ。
愛人たちが聞く。
「「おふくろさんは食べたか?」」
怒りを全身にみなぎらせてギャグが言う。
「おふくろは餓死していたよ。」
ギャグは母親が渡したパンを机に隠し食べていなかった事を説明する。
絶句する二人にギャグが言う。
「どうしても確かめるたい事があるから、協会へ行く。ついてきてくれるか?」
二人が言う。
「「貴方が行くなら、地獄にだってついて行く。」」
「なら、その言葉通りに、殺し合いになるかもしれない。」
「「なら、尚更よ。どうせこの世に未練はないわ!」」
ギャグが言う。
「そうだな。もう母さんの居ないこの国に未練は無い。」
それぞれが胸にしまってあるピストルを確かめる。
「俺たち、ひょっとして始めて人を殺すかもしれない。」
二人が同時に言う。
「「望むところよ。」」
ギャグたち三人がリベラル|・トランスジェンダー・ヘルス専門協会に着き、受付にカインへの面会を申し込む。
ジャネットのサポートなどでもギャグたち三人はカインに会っていたので、すぐに面会できる。
カインを訪ねると、そこにはキンゼニ・アルフレッド教授がまるで血の色のようなガウンを着て待っていた。
カインが満面の笑顔でギャグたちを迎える。
「君たちの話をしたら、是非会いたいとキンゼニ教授がおっしゃっててね。明日にでも会う予定だったので、今日君たちが来てくれて助かったよ。」
ギャグは思わずキンゼニ教授に聞いてしまう。
「どうして俺みたいな男愛者に会いたい?」
キンゼニ教授は笑いながら答える。
「同じマイナーな性癖を持つ者同士、連帯できると思っているからさ。」
更にギャグは確かめる。
「教授も男愛者なのですか?」
キンゼニ教授は下を向き答える。
「いや、私は児童性虐待で興奮する者だ。」
キンゼニ教授の差し出した手は握らずにカインに聞く。
今度はカインに向いてギャグが叫ぶ。
「おふくろは、リベラル(凶産主義者)の世の中になれば、貧乏人も、老人も、種族に関わらず誰でも幸せになれると言っていた。でも、カリフォルニア国はあんたたち(凶産主義者)が政権をとっても、みんなが不幸になっている。」
珍しく長い言葉を言ってギャグは一旦、息をつく。
カインが満面の笑顔でギャグに答える。
「君の母親は先見の明があるね。今、私は君たち(ギャグ)たちに、カリフォルニア国の警備員の仕事について貰おうとしていたのだよ。」
一瞬、ギャグは訳が分からなくなる。
「どういう意味ですか?」
カインがギャグに分かり安く説明する。
「我々(凶産主義者)が勝ったのだ。我々(凶産主義者)で利権を分けるべきだろう。」
つまりカインは凶産主義者が政権を取ったので、凶産主義者とその支持者が利権を自分たちの為に分けると言う意味だとギャグが理解する。
ギャグが意味を理解した直後、怒りが爆発する。
「そんな事の爲に、おふくろや叔父さんが人生を賭けたんじゃない!多くの貧しい人と恵まれ無い人が幸せになれると信じたから投票したんだ。」
ギャグの反応に冷ややにカインが答える。
「それは、凶産主義の誤解だよ。凶産主義は凶産主義者による凶産主義者の爲の社会を目標としている。」
「つまり、貧しい人々と恵まれ無い人々のような多数の人々の爲に凶産主義があるのではない?」
カインが自信に満ちた表情で言う。
「その通り。世界の何処にもそんな凶産主義の国は存在した事は無いし、存在する未来も無い。」
その時、人生を凶産主義に賭けた叔父さんと母親の怒りがギャグにピストルを撃たせた。
カインは、信じられないと言う表情でゆっくり倒れる。
そして、ギャグは隣にいたキンゼニ教授にも、ピストルを撃つ。
「俺たちは、男愛人かもしれないがお前のような弱い者虐めで興奮する人でなしじゃない!」
ピストルの全ての弾がギャグが撃つ。
しかし、キンゼニ教授は倒れない。
キンゼニ教授がギャグの首を締めつけて言う。
「分厚い脂肪に覆われているから、普通のピストルでは死なないのだね。」
ギャグがキンゼニ教授の手を振りほどこうとするが巨大ヒル族のキンゼニ教授の力はギャグより強い。
キンゼニ教授がギャグの男愛人たちに言う。
「こちらに味方すれば大金をくれてやる。」
彼ら二人は既にピストルを構えている。
二人共、その言葉に怒りキンゼニ教授の目玉をピストルで撃つ。
「全く頭にくるわ!金で愛する男を売るような人間じゃないよ!」
「その通りよ。バカにするのは止めてよね!」
二人は完全に怒っている。
二人の銃撃がキンゼニ教授の脳に達してキンゼニ教授が倒れる。
カインとキンゼニを殺した後、ギャグたちはその死体をどうするか考える。
カインの事務所の部屋は完全防音ではあるが、カインとキンゼニ教授の殺害はいずれバレる。
ギャグはキンゼニ教授の真赤なガウンを見て閃く。
ギャグが言う。
「手伝ってくれ。」
数分後、ギャグと二人の男愛人たちは、でかいゴミ箱のカートを押す二人とカートを引くギャグでカインとキンゼニ教授の死体を運ぶ。彼らは何時もいろいろな仕事をしており、誰も気にしていない。
ギャグたちは、カートを引きながらダウンタウンの裏道を走って、つい最近暴徒に襲われゴミしかない店にカインとキンゼニの死体を放り、火を付ける。
カートはカリフォルニア国の公園に放り投げ、ギャグたちは姿を消す。




