此妹、美少女故問題点有。
一月になり、杏珠は思いを寄せていた瀬名へ
少しずつ距離を縮めてゆく。
一方、彼女達の関係にも
とある動きが生じていた・・・
☆姫野視点☆
「おい、見ろ!! 姫野様だぞ!」
「ああ……なんてお美しいんだ……!」
「まさかこんなところでお会いできるとは、神に感謝せねば……!」
数々の男子が、玄関口で姫野を出迎えてくれる。
みんなのデレデレした顔と言葉を聞きながら、私は笑みを隠せずにいた。
私の名前は渕脇姫野、高校三年生。
この世界で一番かわいい、と言っても過言じゃないくらいかわいいのが自慢なの❤︎
え? 自分で自分をかわいいって思うなんて珍しいって?
でも姫野は、自分でそう思うほどかわいいの❤︎
姫野が歩いてるだけで、み~~~んな振り向いてくれるの。
うふっ、かわいいって罪よねぇ~。
そんな姫野がどうして町を歩いているのか、気になる?
それはねぇ……
「ひひひひ姫野さん! お待たせしました!!!」
肩でハアハア息をしながら、すみませんと連呼する。
走ってきたのか髪はめちゃくちゃだし、服装も乱れている。
この人こそ、姫野の同級生である寺濱直樹君。
姫野の下僕の一人だけど、私にとっては少し特別な人。
見た目は地味だし、成績だって普通だし、姫野とじゃ天と地の差がある。
それでも姫野を、みんなとは違って「一人の女の子」として見てくれるから一年の終わりの頃から、気が付いたら目で追っている。
まあ絶対本人には言えないんだけど。
「ううんっ、全然待ってないよ❤︎ 直樹君から誘ってくれて、姫野嬉しい❤︎」
「い、いえ……僕もまさかオッケーしてくれるとは思ってなくて」
「えへへ~姫野、スイーツには目がないからつい❤︎ 直樹君こそ、よくおうちの人が許したね? 遊びに行くの」
「それが……姫野さんと、とは言ってないんです。親も妹も馨とだと思ってますし、馨にも言ってませんので……このことは二人だけの秘密にしてください」
二人だけ。
その言葉が、やけに姫野の脳裏をくすぐる。
直樹君は私が思いを寄せていることなんて、まったく気づいていない。
それでも彼は自分の思いを伝えることを恐れずに、一生懸命私に話しかけてくれる。
ほんと、どうしてこうこの人は……
「うんっ、わかった♪ じゃあ早速……」
私達が歩こうとした瞬間、ぷっぷーと車のクラクションが鳴る音がする。
なんだろうと思い、振り返ると一台の車が走ってきている最中だった。
高級車のようにみえるその車は、沿道にとめタキシードを着た人が後部座席を開ける。
そこから出てきたのは、どこかで見覚えがあるような……そんな人だった。
「こ、こっちに来ますけど……姫野さん、お知り合いですか?」
「うーん……多分知らない人ぉ……かも?」
「知らない人、とは冷たいな。僕達は契約を交わした仲だというのに」
「契約? なんだっけ、それ」
姫野が首をかしげていると、その人はかがんで私の手を取り……
「やっと会えたね、マイプリンセス」
とキスをして……
「って!!! 何やってるんですか、姫野さんに!!!」
あっけにとられている私に変わり、直樹君が彼に詰め寄る。
きれいな金髪をした青年は、澄んだ笑みで直樹君に笑いかけた。
「挨拶ですよ。未来の妃に、ね」
「み、未来の妃ぃ!?」
「僕は芹沢一馬。姫野さんの、婚約者だよ」
彼の名前を聞いて、かすかに残っていた記憶からぴんときたものがある。
そういえば昔、お姉ちゃんより先に私が選ばせてもらったっけ。
昔の私はいいところのお坊ちゃんがいいとか言って、顔がよかったこの人を候補にあげたんだった。
小さい頃の思いつきだったから、今の今まで忘れてたけど。
「芹沢君、だっけ。姫野を探してきたの?」
「ええ、僕はずっと見ていました。あなたのことを」
それじゃストーカーみたいだな、とお姉ちゃんみたいなことを思ってしまう自分がいる。
正直今は婚約者とかどうでもいいし、直樹君との時間を無駄にされることの方が嫌だ。
それにこの人、なんか違和感が……
「近々、僕の誕生パーティーがあるんです。その日に僕は、あなたを正式な婚約者としてみんなに伝えたいと思っています。どうでしょうか?」
「どうって……姫野、結婚とか考えてないし……」
「明日の午後、あなたをお迎えに上がります。いいお返事を、期待していますね」
そう言って車に乗り込み、颯爽と去っていく姿を見ることしかできない私は思わずため息が漏れてしまう。
あーあ、嫌になっちゃう。あんな強引な人だなんて。
そもそも昔の口約束を、本気にしてる人なんていたんだ。
お姉ちゃんにも一応いたけど、興味ないの一言で今も空席になっているというのに。
「お迎えに~だってぇ。昔のことなのに、まだ本気にしてる人っていたんだぁ。姫野、びっくり~」
「……婚約者が、いらっしゃったんですね……」
「うん、でも昔のことだしぃ……姫野も、さっき思い出したっていうかぁ」
「とても素敵な方じゃないですか。いいと思いますよ、婚約」
胸をとんかちでたたかれたような、重たい衝動が私に襲い掛かる。
その痛みを抑えながら、その言葉を取り消してくれることをわずかながらに期待する。
それでも彼は満面の笑顔で、姫野に向かってー
「僕、姫野さんにぴったりなお方だと思います。幸せにしてくれると、いいですね」
直樹君は、私のことを思ってのことだろう。
悪気なんてない。そんなのは分かってる。
でも、言ってほしかった。姫野さんは渡さないって。
それがどこか悲しくて、切なくてー
「……ありがとう、直樹君。結婚式には、ちゃんと呼ぶね❤︎」
だから私は、嘘をついた。
思ってもいないことを、彼に……
(つづく・・・)
実は初めてでもある姫野ちゃん視点です。
もう一人の主人公な割に、
スポットライトがあてにくいのは
柴乃ちゃんより奥手で考え方も
結構違うからでもあります。
まあ前半は、ほぼほぼ一話の
柴乃ちゃんまんまなんですが。
それでもやっぱり作者的には姫野推しです。
次回は14日更新予定。
姫野の思いに気付くことが一切ない
直樹はどうする!?




