通行人Aでも時には主役になれるんです
自他共に認める美少女である姫野は
密かに想いを寄せている直樹と
共にデートを楽しんでいた
そんな中、
婚約者だと名乗る青年が突如現れる。
お互いの思いは気づくことなく
狂い始めていき…?
☆直樹視点☆
その日、彼は突然現れた。
姫野さんの、婚約者だと言って。
爽やかそうな好青年で、馨や隼人君と同じくらい「かっこいい」といわれてもおかしくない人。
僕なんかとじゃ、比べ物にならないくらい。
だから僕はー……
「待たせたな、直樹。珍しいな、お前から呼び出すのは」
とぼとぼ歩いた先にいるのは、友達でもある馨だ。
姫野さんと別れて、家族に相談するわけにもいかなくて、一人で考えれば考えるほどきりがなくなって……
気が付いたら、馨に連絡していた。
馨は急に呼び出したにもかかわらず、買ってきてくれたのか温かいお茶をすっと差し出してくれた。
「ほい、おごりな」
「あ、ありがと……ごめんね、突然」
「お前からくるってことは、渕脇あたりとなんかあったんだろ? 格好からして、ただ出歩いてたってわけじゃないし」
やっぱり、馨にはすべて見通されちゃうんだな。
馨に悪いという理由で、あまり僕からは連絡をしたことがない。
それを隼人君に話した時は、「君達って不思議だね」と言われたけど。
僕が悩んでるときも基本彼は、何でもわかっている風に声をかけてくれる。
持つべきものは友達、っていうものなのかな。
「……姫野さんの、婚約者って人が来て……誕生日に迎えに来るって言ったまま、帰っちゃって……」
「随分と急な話だな」
「昔に決められてたみたい。前、柴乃さんにもそういう話があったからもしかしたらとは思っていたけれど……」
一度だけ、姫野さんのお母さんに会ったことがある。
とても厳しそうな、きっちりとした人だった。
いつもは姫野さんにうるさく言う柴乃さんですら、お母さんの前ではおとなしかったくらい。
そんな人が、僕を選ぶわけがない。
きっと姫野さんの将来を考えて、あの人と幸せになった方がいい。
僕なんて普通すぎる、ただの通行人だから。
「……それさ、渕脇本人が言ったのか?」
「え?」
「婚約者ってだけで、親が勝手に決めたってこともあるだろ。柴乃の時も、自分で言ったら普通になくなったって言ってたし」
「それはそう、だけど……」
「毎度毎度遠慮ばっかしないでさ、たまには自分の意見も言ったらどうなんだ?」
馨の言うことは、もっともだ。
そう思ってはいても、体が言うことを聞かない。
「僕なんか」。その考えが自分自身を邪魔している。
僕は、姫野さんが幸せならそれでー……
「どうしたんだい、姫野さん。僕を追ってくるなんて」
声が、聞こえる。
はっと振り向くと、僕達が座っているベンチの後ろにある噴水の向こうに、婚約者と名乗った彼がいた。
慌てて身を隠しながら、噴水の陰から覗き姫野さんの姿があることに気付く。
僕とは逆に馨は身を隠そうとしないも、二人の話に聞き耳を立てていた。
「もしかして、婚約について返事をしに来てくれたのかい?」
「うん、まあそんなとこ」
「では僕と一緒にー」
「ごめんなさい。姫野、あなたとは結婚できない」
いつにもましてはっきりとした声で、彼女は堂々と言い放つ。
その姿はまるで、姉の柴乃さんと重なる部分があった。
「どうして、だい? 君のこと、こんなに愛しているのに」
「姫野を愛しているなら、もっと前から姫野を探せたはずだよ。それに姫野、どんなにあなたがすごくてお金持ちの人でも、姫野にはいらない。姫野は、好きな人と結婚するの! 決められた結婚なんて、ほんとの幸せじゃないもの!」
初めて見た、姫野さんが堂々と人にモノを言うのを。
姫野さんは自分からは動こうとしないから、柴乃さんにも下僕だった人たちもしびれを切らしていた。
でも彼女には、彼女の意思がある。
すごくはっきりとした、彼女の思いがー
それを僕は、なんてひどいことを……
「だ、そうです。よかったですね、そこにいるお友達さん」
「ほああ!!? な、なんでばれてるんですか!?」
「なっ、直樹君! いつからそこに!!」
「正直負けたのは癪ですが、本人の意思なら致し方なしですね。そのかわり、ちゃんと伝えてくださいね? あなたの気持ちを、その好きな人とやらに」
彼が誰に向かって、何の話をしているのかは僕にはわからなかった。
何事もなかったかのように去っていく彼の背中を見ながら、ぼーっと突っ立っていると……
「直樹君のバカ! 無神経! 姫野の後ついてきたんでしょ!?」
すぐに姫野さんが、僕にずんずん詰め寄ってきた。
「ち、違います! 僕は馨と話してて……ってあれ? 馨はどこに?」
「もう! 信じられなぁい。罰として、今日行く予定だったカフェ、今から行くよ! 二人で仕切り直しに、ねっ」
姫野さんが言う好きな人が誰なのか、僕にはわからない。
ただ僕は、彼女が今それが幸せだと思うのならー
「はい、もちろんです。姫野さん」
僕はずっと、あなたのそばにいたい。
例えかなわない、一方通行の思いでも。
そう、心に決めながら僕は彼女とその道を歩き出したー
(つづく!)
前回のあんちゃんもそうですが、
双子以外のメインキャラはほぼ
自分に自信がない子ばかりです。
だからこそ、応援したくなりませんか?
そんなことより、ですよ。
直樹と馨は本当にいいコンビですよね。
お互いがお互いを思い合っていて…
もうここでくっついても…あ、
なんでもないです。
次回は19日更新。
杏珠、姫野、ときたら…?




