なにかと世話を焼きたいお年頃♪
姫野と直樹。進んでいるようで進まない二人は
徐々に距離を縮めていく。
夏休みはまだ、始まったばかり!
セミが、じりじり鳴いている。
五月蠅くて仕方なくて、窓と障子をそっと閉めた。
「ニュースで言ってたんだけど今日、今年最高気温なんだって。部屋、暑くない? 柴乃」
「へーき。むしろ暑い中そんな服着てる、むぎちゃんの方が暑そう」
「あはは……私は慣れちゃったから。これくらい大丈夫」
部屋にある布団をたたみながら話すのは、ここの制服でもある着物を身にまとうむぎちゃんだ。
私は毎年恒例行事でもある、東雲旅館にお泊りに来ている。
もちろん、姫野も一緒だ。
去年とは違ってあんちゃんはまだしも、寺濱君も来れずじまい。
馨君は……なんか姫野にすごくちょっかい出されそうで、あえて声をかけなかったのよね。
「そういえば柴乃、宿題とか進んでる? 私、あんなに多いの初めて。通信制の時もやってたけど、それ以上で驚いちゃった」
「まあ、うちのとこそういうのだけはちゃんとするのよね~」
「お姉ちゃあん、あがったよぉ~あっ、むぎちゃんだ❤︎」
私達の会話を遮るように、姫野がお風呂から帰ってくる。
やっほ~と笑う彼女の笑みは、どんな時でもかわいさが劣ることはなかった。
「温泉、すっごいよかったよ〜? うちにほしいくらい!」
「ありがとう。そう言ってくれるとうれしいよ」
「でね。姫野、入ってたおばあちゃん達から聞いたんだけど。明日、この辺でお祭りあるの???」
相変らず、情報を仕入れるのが早いなと思いつつ私も耳を傾ける。
お祭りといえば、去年馨君ともあんちゃんとも行けずに姫野といったんだっけ。
不良に襲われるわ、馨君に泣き顔を見られるわであんまり思い出したくないけど。
お祭りかあ……そういえば、ちゃんと馨君と行ったことないかも。
「なんか、今年はそうみたい。お祭り目的で来たってお客さん、結構多くて」
「へえ~そうなんだ~花火もあがるの??」
「うん。私も詳しいことは、わかんないけど……海沿いでやるみたいだから、ここからでも見えるんじゃないかな?」
東雲旅館は、海にも近い観光スポットの一つだ。
今年はやけに人の出入りが激しいなと思ったら、お祭りが原因だったのか……
「お姉ちゃん、浅沼君でも誘っていけば?」
「は? なんで」
「だって今、浅沼君と行ったことないなあって顔してたもん。彼女なんだし、誘えば来てくれるよぉ❤︎」
こ、こいつエスパーか!
双子のシンクロとか、こんなところでいらないんですけど!
まあでも、一応私達付き合ってる……んだし?
ダメもとで、誘ってみるだけ誘ってみようかな……
「せっかくだから、むぎちゃんも行けばいいのに~お祭り、楽しいよ?」
「姫野、むぎちゃんは仕事なんだからそんな無理は……」
「お祭りって、そんなにいいものなの?」
予想の斜め上をいく返答が返って来て、私達は二人してむぎちゃんを見てしまう。
当の本人は頭にはてなが浮かんでいてもおかしくないくらいきょとんとしていて、首をかしげて見せた。
「む、むぎちゃん、いきなり何言ってんのよ……」
「だって気になって……」
「ひょっとしてむぎちゃんってぇ、お祭り行ったことない?」
「ない……かも。ずっと旅館のことばかりだから」
驚いた。まさかここまでとは、思ってなかった。
確かにむぎちゃんは、生まれた頃からすでに将来を決められている。
この旅館のことや接客のことで手いっぱいだったから、学校だって高3になってやっと行かせてもらっている。
私なんかより、ずっと世間知らずなはずなのにそう感じさせないのが彼女の魅力なのかな。
「え~~~絶対行くべきだよ❤︎ これも社会勉強の一環だと思えば、おかみさんも許してくれるんじゃない?」
「姫野……あんたまた勝手に……」
「お姉ちゃんも浅沼君と行くんだし、むぎちゃんも行っちゃえばいいんだよ❤︎」
よくもまあこんな簡単に言えるなと、我が妹ながら感心してしまう。
こういうことは、姫野だから言えるんでしょうけど。
しかし案の定、むぎちゃんは……
「この時期お客さん多いのに、そんな無茶言っていいのかな……?」
と不安を吐露した。
「大丈夫だよぉ。だってむぎちゃん、今まで家のことばっかりだったでしょ? 高校最後の夏なんだし、思いっきり楽しもう! ねっ?」
「で、でも柴乃と浅沼君の邪魔するわけにはいかないし……私一人で行ける気が……」
「それもだいじょ~~~ぶ❤︎ 姫野に任せて❤︎」
むぎちゃんの反応をまるで読んでいたかのように、ことが進んでいく。
姫野の勝手ぶりを眺めみながら、私はひそかにむぎちゃんにごめんねと謝ったのだった。
(つづく!!)
さて、次回からむぎちゃん編です。
くどいようですが、作者はむぎちゃんが結構お気に入りです。
そして彼女といえば…もうわかりますね。
果たして、姫野の考えた策とはいかに!




