Wでお得な二人きりタイムを
柴乃たち一向は楽しい楽しい夏休みへ!
しかし、姫野は好きになってしまった
直樹と一緒にいたい思いを
伝えられずにいた。
そんな妹のために、姉が一肌脱ぐ!
「しっかしまあ見事なおせっかいだな、柴乃。相手が相手とはいえ、考えようだぞ」
彼の仲裁に苛立ちを覚えながらも、うるさいとだけ小さく返事する。
夏休みが始まった、最初の土曜日。
私が来ているのは強制的に取り付けた、寺濱君と姫野のデート先―フェアリーランドだ。
私達が住む地域から割と近くにある、ここらじゃ大きくて有名なテーマパークだ。
本当は自分が彼と行きたい場所として、調べていたんだけど……
「で? そういうあんたはなんでいるわけ?」
「一応、直樹の保護者的位置なんでな」
「意味わかんないんだけど」
「ていうのは建前で……来たかったんだろ? 俺と。渉から聞いた」
意地悪そうに笑いながら私の隣にいるのは、一緒に来たかったはずの馨君だ。
私よりも先にここについていたようで、まるで私達がデートの約束をしたような感じになってしまう。
言うことがいちいちかっこよく聞こえてしまう彼の言葉に、どうしようもなくもどかしい。
こっちは気が気じゃないっていうのに……
「あの渕脇の服、お前チョイスだよな? ものの見事の渕脇色」
「姫野、ピンク色とかフリルがあるやつとか……あからさまのしか着ないもの。まあそれが似合うのがあいつらしいんだけど」
「柴乃も着てみればいいのに。似合うと思うぞ、同じ顔なんだし」
「一言余計よ!!!」
入口の前、一人不安そうに立って待っているのは姫野だ。
ここにくるまでの数日間、それはもううるさくてうるさくて相手もしたくないくらい言ってきた。
いつもは私なんかに、洋服のことで相談なんてしないのに。
好きになるって単純だ。
こうも人を、簡単に変えてくれる。
あんちゃんもむぎちゃんも言ってたけど、私も変わってるのかな?
「す、すみません!!!! お待たせしました!!!」
そんなことを考えていた矢先、声が聞こえ顔を上げる。
姫野のもとに走ってきた、寺濱君の姿がここからでも見えた。
彼も彼でなんだかかっこいいというか、どうみても寺濱君のセンスじゃない服をまとっていて……
「馨君……あれ、あんたの趣味でしょ」
「よくわかったな。正解」
「なんだかんだ馨君だって協力してるじゃない……」
「まあ俺はお前と違って、1年の頃から見てるからな。あいつのこと」
そういうと2人は姫野と寺濱君が、パークの中に入っていくのを見送る。
私と馨君も、追うように中へ入るとさっきまで不安そうだった姫野が、笑顔を交わしていた。
「ごめんねぇ、直樹君。お姉ちゃんの無理強いなんだから、来なくてもよかったのにぃ」
「いいいえ、そんな! 僕の方こそ、まさか二人でお出かけできるとは、思ってなかったので」
「姫野も~ここに来たの、小さい頃以来だよ~。ねっ、せっかく来たんだから思いっきり楽しんじゃおうよっ!」
無邪気な笑顔を振りまく姫野は、行こうと寺濱君の手を引いて走ってゆく。
何よ、あいつ。全然大丈夫そうじゃない。
さっきまで不安そうだったのに肝が据わっているというか……それともあれは、寺濱君に気付かれないように演じている?
いつの間に、姫野は彼をあんなに好きになったのだろう。
私達が知らない間に、二人があんなに仲良くなってたってことなのかな……
「よし、んじゃ俺達はあっちから回るぞ。柴乃」
「ふぇ?? 回るって、あの二人を追うんじゃないの?」
「あの調子なら当分大丈夫だろ。こっちだってデートには変わりないんだ、せっかくだからまわろーぜ」
「はぁ!!?」
そう言うと馨君は、半ば強引的に私を引っ張って中へ入っていく。
二人のことなんてもう気にするなとばかりに、私は彼に連れられるがままになっていたー
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お姉ちゃん、姫野のあと、ついてきてたりするのかな?
道中、ふと姫野は不安が脳裏をかすめた。
姉が勢いで取り付けてくれた約束とはいえ、デートと思っているのはおそらく自分だけだ。
直樹のことだ、きっと自分のことなんて眼中にでもないと考えているのだろう。
だからこそ自分の思いを伝えるべきなのか、このままにした方がいいのか悩んでしまう部分がある。
今まで男の人なんて、下僕同然とみていたからー
「今日は楽しかったね~姫野、家族以外でお出かけしたの直樹君が初めてかもしんない❤︎」
「えっ、本当ですか? ああでも、僕も馨とくらいしかないから一緒ですね」
楽しい時間は、あっという間だ。
空はオレンジ色に染まり、閉演時間をお知らせする放送が流れている。
それを聞いた直樹が、時計を眺めみながら少し残念そうに笑ってみせた。
「そろそろ時間ですね。途中まで送っていきますよ」
「あ、うん……直樹君って、夏休み中はほとんどおうち、なの?」
「多分……すみません、お役にたてなくて」
そんなことない。
たった何文字しかないのに、その言葉が声となることはない。
どれだけ自分が憶病で、みじめなのか分かる。
今まで愛してもらえれば、何でもいいと思っていた。
自分のことを心から愛している人なんて、この世にはいない。
自ら下僕になりたい、そう言ってきたのは彼だけだ。
だからー
「あのね、直樹君。姫野ね……直樹君のこと……」
「あっ、見てください! 姫野さん! 噴水が!」
彼女が何か言う手前、直樹が興奮するようにある場所を指さす。
園内の入り口の中央にあるのは、このフェアリーランドの名物でもある噴水だ。
一定の水の量を出していた噴水の水は、彼が言うと同時に一気に噴き出してー
「きれいですね……そういえばこの噴水、見た人は幸せになれるとか、そういうのがあるって聞いたんですけど……あれ、なんだっけ?」
この噴水を見たカップルは、必ず幸せになれる。
そう、柴乃は言っていた。
ここを選んだ理由も、姫野と直樹にその噴水を見てほしいからだと。
「……ほんと、かなわないなあ。お姉ちゃんには」
「姫野さん? どうかしました?」
「なんでもな~~い♪ 帰ろっか、直樹君❤︎」
自分の思いは、まだ心に留めておこう。
噴水の噴射をみながら、姫野はひそかにそう心に決めたのだったー
(つづく・・・)
柴乃、馨の二人組もそうですが
やっぱり姫野と直樹も
双子姫になくてはならない二人ですよね。
姫野は主役でもあるので、
その相手役が普通の人でいいのか
とも思いますが
それでこそ直樹君といいますか…
最近語彙力がなくて困ってます、はい。
次回、夏休みはまだまだ続く!




