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最強(弱)無双の魔法使いは無敵少女と旅をする。  作者: たけまこと
エルフィン族の武道大会
91/211

決戦ガイア・タックリー

 ラフレアの実力に戦々恐々たる思いのエマをしり目に相変わらずシドラはマイペースである。

 

「それよりエマさん相手はあの人ですよ。」

「相手はどんな人?」

「はい、ドワッフ族でスピードを重視したタイプですね。あまり蹴りは得意じゃないようです。相手に抱きついて胸の筋肉で相手を締め付ける事で勝っています。」

 前を見るとドワッフ族の女性がガウンを着たまま立ち上がる。

 なる程ガウンの上からも下に付いてるメロンは隠しようがない。

 

「特に相手の胸を潰して降参をもぎ取っていますね。」

 なんてことを、女のくせに女の胸を狙うとはなんてえげつない奴なんだ。

 

 呼び出しを受けて試合場に出ると相手はガウンを脱いでリングに上がってきた。

 主審が試合上の注意を二人の選手に説明を始める。

「よろしいですか?試合は円の中で行います。外側の円から出たら場外となります。」

「な、な、な、何よあんた!!」

 エマは裏返った声を出した。

 

「ん?」

 相手の選手がエマを睨みつける。

「目を攻撃してはいけません。噛みつくのはなしです。パンツを脱がしたら反則負けとなります……。」

 主審は構わず試合上の注意を続ける。

 

「ちょ、ちょ、ちょっと審判~っ。」

「どうしました?エマ選手。」

「ななな、何よあの人の格好は?」

「は?どうかしましたか?」

「お○ぱ○丸出しじゃないの!!」

 

「なんだい?あんた自分のを毎日見てるんだろう?まあ、こんな大きいのは見たこと無いかも知れないけどさ。」

 ドワッフの選手は胸を上下にブリブリと動かしてみせた。

「エルド選手、余分な発言と行動は謹んで下さい。」

「はい。」

 ペロッと舌をだす。

 

「エマ選手、着用が義務付けられているのはパンツだけで、上衣に関しては規定がありません。」

「じゃ、じゃあ上着を破られたら?」

「反則にはなりません。そのままポロリで続行です。」

「ほええええ~~っ!?」

 

「ドワッフ族では胸の筋肉は伝統的な攻撃術となっています。よって昔のドワッフ族の戦士は全員胸を出していました。」

「いやあああ~~~っ。」

「エマ選手棄権しますか?」

「…………。」

 

 主審が少し近づいて来て小さな声でつぶやく。

「このリーグで優勝すれば少ないですが賞金が出ますよ。」

 はっとしてエマが顔を上げる。

 

「どうしますか?エマ選手、試合をしますか?」

「す、するわよ。」

「よろしい、それでは両選手共に円の外に出て下さい。」

 二人が円の外に出ると主審が始めの号令を掛ける。

 

 ふたりは円の中心に歩み寄り間合いを図りまがら横に回り込む。

 ドワッフの選手は手を伸ばしてエマの上依を狙ってくる。

 エマは胸を守るように体の前で手でガードする。

 その仕草のせいでエマは迂闊に近づくことが出来ない。

 

「ふっ、そんな小さな胸でアタシに張り合うかい?アンタ未通女おぼこだね。」

「ななな、なんつー事言うのよ。」

 試合の場にそぐわない相手の言葉につい心を乱したエマにエルドはいきなり抱きついた。

「わわわっ、しまった!」

 

「胸を潰してやるよ。」

 上になったエルドはエマの首に手を回し徐々に体を寄せてくる。

 辛うじて右手一本が相手との間に入る。

「やかましい!アタシの胸は彼氏にしか揉ませないんだから!」

「可愛いことを言うじゃないか。」

 

 エルドは胸を大きく開いてエマの胸に噛み付こうとしている。

「ぐおおおおーっ乙女の純血は守ってやるーっ。」

 エマは左手をふたりの間に滑り込ませると腕を交差させて思いっきり跳ね上げた。

 

「なに?」

 エマの驚くべき怪力にエルドの体が持ち上がる。

 同時にエマは片膝を滑り込ませエルドの体を跳ね上げる。

 跳ね上げられたエルドは素早く間を取ったが驚愕の表情をしていた。

 

「人族のくせになんてえ怪力なんだ!」

「みたか!火事場の馬鹿力。」

 エマは一言吠えるとエルドにキックを浴びせる。

 

 エルドは腕で防御をするがものすごい衝撃にバランスを崩す。

「もらったーっ。」

 エマはがら空きになった胸の部分にキックを打ち込む。

 

「うぐっ!」

 まともにエマの蹴りを食らったエルドは2回転して競技場の外まで飛ばされる。

「な、なに?今の感触は?」

 エマが蹴った胸は何か固い木か岩の塊を蹴ったような感じだった。

 鍛えられたドワッフ族の胸ってあんなふうになるのか。

 知って驚く驚愕の事実。

 

「場外!」

 主審がエルドを見るがエルドはすぐに立ち上がった。

「あれぐらいじゃダメか!」

 この間も2回転じゃ何事も無く復帰して来た。

「続行!」

 主審が試合の続行を命じる。

 

 殆どダメージを感じさせずにエルド選手は復帰してくる、恐るべきタフさ加減。

 やっぱりドワッフ族の頑丈さは桁が外れてる。

「だけどあたしはねーっ。」

 エマはエルドのガードの上からキックを浴びせかける。

 

「くっ。」

 エルドが衝撃に顔を歪ませる。

「大きさより揉み心地で勝負してやる!」

「なに恥ずかしい事言ってんだお前。」

 もう一度腕を蹴るとエルドは更にガードを狭める。

 

 頭を太い腕でガードしたエルドは視界が極端に狭くなっていた。

 それを狙っていたエマはサイドステップで横に回り込むとエルドの側頭部を狙って蹴りを繰り出した。

 蹴りは頭部に当たりエルドは3回転して吹っ飛ぶ。

 

 しかしエルドはふらふらしながら立ち上がって来る。

 なにあれ?あいつは本当に人間か?

 組みつこうとエマに向かって手を伸ばして来るが頭ががら空きだ。

 エマはもう一度頭に向かって踵落しを出す。

 

「止め!」

 蹴りがエルドに当たる寸前エマの足を主審が掴む。

 主審の声が聞こえなかったのかエルドがエマに殴り掛かって来る。

 しかしいつの間にか副審がふたりの間に割り込んでいた。

 

 主審はエマの蹴りが入った場合非常に危険であると判断し試合を止めたと宣言し、エマの勝利とした。

「すごいわーエマさん、やっぱりエマさんの蹴りは一級品ね。」

「素晴らしい試合でした。しかしエマさんひとつうかがいたいことが有ります。」

「なに?シドラ。」

「大きさより揉み心地ってどんな戦法の事でしょうか?」

 

 聞こえていたのか。

 

「まっ。」

 アイーラが口を押さえて吹き出した。

「アンタは知らなくて良い事なの。」

「そうですか?知識を増やす機会だと思ったのですが、残念です。」

 

 控室に戻るとラフレアが戻っておりガルドが汗まみれの体にタオルを掛けマッサージをしていた。

 男女共1回戦は8組試合が有るので1回戦と2回戦は続けて行われる。

 3回戦以降は休む時間を取るために男女交代で試合が行われる。

 

「クールダウンよ。」

 アイーラはそう言ってエマに柔軟体操を行わせた。

 5分程柔軟体操を続けると今度は台に寝かせて体にマッサージを行ってくれた。

「シドラ、よく見て置いて、本戦では貴方がエマの面倒を見るのよ。」

「わかりました、おまかせ下さい。」

 明るい声でシドラが胸を張って答える。

 コイツの発言はいつも軽いよなー。

 

「ふうっ、ふうっ。」

 マッサージを終えたラフレアは台に座って精神を集中しているように見える。

 既に次の戦いの準備に入っているのだろう。

 普段の優しいラフレアの面影は微塵もなく、強力な女戦士の顔になっていた。

 エマは声も無く、ただラフレアを見ていた。

 

 そこにトレーナーらしい女性に付き添われてガイアが戻ってきた。

 かなり激しい試合だったらしく顔にアザが出来ておりまだ肩で息をしていた。

 トレーナーはガイアを椅子に座らせ深呼吸をさせ、体を濡れたタオルで拭いていた。

 ガイアはエマを見つけると激しい殺気を含んだ目で見ていた。

 

「ね、なんであの人あんなにアタシを目の敵にするのかしら?」

「ガイアさんの事ですか?」

 エマが頷くとシドラはしばらく考えているようだった。

 

「これまでの状況を合わせて考えて見ますと、やはりガルドさんはエマさんに脅威を感じていたのでは無いでしょうか?」

「だって初めて会った時から喧嘩腰だったよ。」

「最初は威嚇して戦意を削ぐつもりだったのでしょう。しかし予備予選のエマさんを見てそれが脅威に変わったと考えれば納得が行きます。」

 

「ふーん、戦いって心理戦なんだなー。」

「心理戦はエマさんの得意とする所ではありませんか?」

「あたしの?まさか、そんなこと無いよ。」

「おや、自覚が無いのですか。」

「それ、どういう意味よ。」

「いえいえ、エマさんは自分で思っているより戦いに長けていると言うことです。」

 

「エマさんは次の試合までしばらく有るからゆっくり体を休めましょうね、体を冷やしたらだめよ。」

 アイーラのアドバイスに従ってエマは横になった。

「シドラ、次の相手はどんな選手なの?」

「打撃を得意とする人族です。打撃勝負であればさほどの脅威ではありません。」

「そうかー、じゃゆっくり休もう。」

 

 試合時間が近づくとウィザーがやってきて手足の防具をチェックしに来た。

 緩んだりしたものはその場で巻き直してくれた。

 2回戦目のドワッフ族は不死身を過信しすぎたのかノーガードで突っ込んできた。

 カウンターで3回倒されて3回立ち上がってきた所主審に止められた。

 

「いてて、そろそろ足が痛くなってきた。」

「今まで全員を蹴りで倒していますからね。大丈夫ですよここはウィザーの競技場ですから氷は常備されています。」

 そう言ってシドラは試合が終わる度に足をアイシングしてくれる。

 おかげで腫れることなく予選は進んでいく。

 

 ラフレアもその並外れた破壊力で相手選手を吹っ飛ばし、リーグ優勝を勝ち取った。

 そしてエマのリーグ優勝戦となった。相手はあのガイアである。

 エマは殆ど相手の攻撃を受けること無く一発で相手を倒してきたのであまりダメージを受けてはいない。

 しかしガイアは接戦が続いたのか満身創痍の状態であった。

 

「手足のダメージが激しい様です。ああなるともう打撃は使えません。多分組み討ちで来るつもりでしょう。タックルに気を付けて下さい。」

 シドラが珍しくまともなアドバイスを行う、雨でも降るのか?

 

 主審の合図で試合が始まる。

 ガイアは腰を落として低い姿勢で構える。完全にタックルを狙った構えだ。

 試しにエマはケリのフェイントを入れてみる。ガイアその姿勢のままスッと後退する。

 今度はエマはガイアを狙って大ぶりの蹴りを見舞う。

 紙一重で躱したガイアがエマ目掛けて突っ込んで来る。

 

 エマはそのまま1回転するとその頭めがけて踵落しを食らわす。足はガイアの両手の間を抜けて額に当たる。

 ガクッとガイアは両膝を付いた。

 エマはガイアを捉えようと一気に間合いを詰める。

 それはガイアの罠であった。

 

 ガイアは頭を上げるとエマの体を捕まえに来た。足を狙った低いタックルである。

 しかし狙いに気づいたエマは素早く片足を引いたのでガイアは前足しか捉えられない。

 ガイアはそのまま下に潜り込むとエマを片足で持ち上げる。

 この体制は前にもあった!

 

 エマはガイアの頭を掴むと残った片足の膝をこめかみに打ち込んだ。

 それ程強い蹴りでは無かったが最初の蹴りが効いていたのかエマを取り落とす。

 そのまま一歩引くとエマは頭に蹴りを放つ。蹴りは顔の横に当たる。

 浅い!そう感じたエマは止めの一撃の踵落しを正面にめがけて放った。

 

「止めっ!」

 主審がエマの足を止める。この時点でエマの勝ちが宣せられた。

 ガイアはガクッと膝を落とす。

 すぐに仲間が来てガイアを抱いて下がらせた。

 

「かなり無理をして勝ち上がって来たようですね。」

「打撃の有る試合を一日3試合ですからね、かなり体に負担が蓄積するのよね。」


 ラフレアちゃんは別格かー。

 

 控室に戻るとラフレアが突進してきた。

「おめでとう!エマさん。」

 ラフレアちゃんに抱きしめられて意識が飛びそうになる。

 

「ラフレアちゃんあまり強く抱くと……エマさんの白目が見えてるわよ。」

 慌ててラフレアはエマを放す。

「ご、ごめんなさい、エマさん。一緒に本戦に出られるすごく嬉しいなの。」

 良かったいつものラフレアちゃんに戻ってる。

 

「エマさんと一緒に決勝まで行って戦えたらいいわね。」

 あたしゃ出来るなら戦いたくない。

「そうだねラフレアちゃん、一緒に頑張ろうね。」

 ……賞金の為に。

「何かエマさんの思考に雑念を感じますね。」

 

 あー、うるさい。



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