表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強(弱)無双の魔法使いは無敵少女と旅をする。  作者: たけまこと
ドワッフ族の迷宮
61/211

変身!ぶるまー男

「で…?これが入口?」

「はい。ザルディが指示してきた場所です。」

 

 ウィザーが外に出るためのドームの外周部分にあるウィザー専用通路の扉の一つである。

 たいていの扉は地元の人々の信仰、又は畏敬の対象となり社のようなものが祭られている場合が多く、そうでなければ単に扉とそこに続く通路が有るだけの場所でしかない。

 

「こりゃ、なんちゅうセンスであるか?ウィザーにこんな悪趣味な奴がいるとは思わなかったであるな。」

「なんか、ものすごく判りやすいですね。」

「そうかい?あたしゃ昔から知っているからこんなものだとしか思ってなかったがね。」

「違うでしょう?普通は……。」

 

 エマたちの前に現れたのは何枚もの扇子をかたどったレリーフを用いた出入り口を飾るアーチで有った。

 

「センスが無いと言うか…そのまんまというか…。」

「まあ、扇子だけはたくさんあるようですが。」

 入口の部分には大きな扇子を模ったドアがあり、そこに連なる通路には同じような扇子を持った様々な種族の形をした立像が両側に連なっていた。

 

「これってウィザーがドームの出入りに使っている物でしょう?」

「はいそうです。」

「普通は只の扉の様な物の周りに付近の人たちが供物を備えるような社なんかを作ったりするけどねえ。」

「自分で周りを飾る彫像なんかを作るウィザーなんて初めて見るであるなあ。」

 ゲンナイもあきれたようにため息を付く

 

「そうかなあ?私はこれはこれで面白いとおもけど。」エマは何となくそんな風に思った。

 入口の周りにはそこを埋め尽くすブロンズの彫像群が回廊をめぐるような配列で展示されていた。

 それはあたかも野外美術館の趣を感じさせる場所であった。

 

「……す、すばらしい。……。」

「「はあ?」」

 あ、なんかシドラの瞳がウルウルと輝いているみたいだ。

「この俗物感あふれるオリジナリティ、そして退廃すら感じさせる空間。

 

 まあコイツの感性は多分普通とは違っているから。

 

「ザルエガさん、この場所はみなさん知っておられるんですよね。」

「ああ、このあたりの事を扇子洞と呼んでこのドームでは結構有名な所なんだよ。」

 エマは彫像を一つ一つ見て回る。エマの知っている種族もいればそうでない種族もいる。

 

 人族と思われる男がおどけたような格好で木を切っている。振り上げた斧の先で扇子が開いている。

 ドワーフの女が裸でパンプアップしている。なぜか股間に扇子が張り付いている。

 ドワーフの男が扇子を持ってドジョウすくいをしている。

 ピクシー族の女が扇子を持って小さな胸を恥ずかしそうに隠している。

 背の高い女が顔を扇子で隠して微笑んでいる。頭が小さくてスタイルがいい。

 

 何その胸は?もしかして優越感に浸っているわけ?

 

 一応扇子が統一的なモチーフになっている。あの扇子らしいこだわりなんだろうか?

「この人は?私は見たことのない種族だわ。」

「ああ、隣のドームのエルフィン族だよ。」

「なんかすごく綺麗でかっこいいわね。」

「ああ、エルフィン族は細身で背が高い人が多いからね。ほら、こっちの男もかっこいいだろう。」

 

 全裸の男が低い姿勢で弓をつがえている。筋肉の一本一本に弓を引く力がよく表現されている。

 ただ、なぜか股間に開いた扇子がくっついている。

「確かに格好いいわね。」

 さらに進むと奇妙な銅像が現れる。

 

「これは?」

 竜の顔をした男が大きな剣を振り上げている。

「ああ、伝説のリザートマンだよ。」

「竜の人?」

「伝説というかおとぎ話の悪役によく出てくるんだよ。」

 

 人間の体に竜の顔を乗せた怪物である。大きく裂けた口からはずらりと並んだ牙が見える。

 腰には何やら腰巻きのような物を巻いていおり、裸の上半身は肩から背中にかけてウロコのようなデコボコが有る。

 おそらくトカゲの背中の皮膚を模した物では無いだろうか?

 

「こっちには女の像があるようだね。」

 竜の顔をした女性が赤ん坊を抱いていた。赤ん坊は全くのトカゲと言って差支えのない姿をしている。

 無論女性の胸は人間の様に膨らんでおり愛情深そうな眼差しで我が子を見ている。

 怪物にも関わらずエマにはなぜはすごく人間的な部分がそこには表現できていると感じられた。

 

「こっちには獣人もいるよ。」

 たくましい人間の体の上に犬のような耳を持ちやや突き出した鼻と口を持つ一見して犬と分かる風体をした顔が乗っている。

 顔の周囲から体全体に体毛が生えている、明らかにメスとわかるこれまた胸の大きな獣人を後ろから抱きしめおり、ふさふさした尻尾高くつきあげた格好で二人で一緒に遠吠えをしている……?……彫像になっていた。

 

「こ、これは……。」

「ちょっとまずいであるな。」

「うわっ、すごい。見て、エマさん。」

「だめよ、ベルトラ、そんなにじっくり見てちゃ。」

 いずれの銅像も極めて写実的でありながら単に本物とは異なる迫力を備えている。

 

「エ、エマさん、他のを見ましょうか?」

 お母さん達は何を言っているのでしょうか?

 

 しかしエマは皆の声を聴いていないように、虚ろな表情で歩いて行く。

「なんで…。」

「い、いやそのいくら何でもこの銅像は……。」

 エマは銅像を睨みつけながら肩をぶるぶると震わせている。

 

「ん?エマさんどうかしましたか?」

「なんで……。」

 エマの絞り出すようなつぶやきが聞こえる。

 

「なんでみんな大きいんだ……?あたしだって……あたしだって………。」

 

 シドラはふいっと視線を外すとエマとの距離を開ける。

 エマはふらふらと彫像たちの間を歩いていく。

「何が気に入らなかったんであるか?」

「大きいって何?」

「若い娘の気持ちはわからないわねえ。」

 

「いやああああぁぁぁぁァァァ~~~~っ」

 突然エマの叫び声が聞こえた。

「どうしました?」

 皆がエマの周りに集まってくる。

 

 エマは呆然としながらひとつの彫像を見ていた。

「「「こ、こ、これは……………。」」」

 エマの前にはスカートをひるがえして足を高く上げた少女の像があった。

 高く上がった足のつま先には広がった扇が付いていた。

 

「こ、これは……なんと躍動的な。」

「ほう、他の彫刻はともかくこれはなかなか。」

「そうねえ確かに今にも動き出しそうな位に見事だわね。」

 

 足の伸び具合と言いスカートのひるがえり具合と言い、力強くなおかつ優雅さすら表現された彫刻は秀逸であった。

 

「シドラ、貴様アアア~。」

 エマはシドラの襟首を締め上げる。

「な、何でしょう、私が一体なにか…………。」

「良く見なさいこの像を。」

 像の顔を見ると明らかにエマの顔である。

 

 しかも蹴り上げて丸見えになった股間にはブルマーもしっかりと見えていた。

 

「こ、これはまた、どこかで見たような。」

「あたしでしょうこれ、どう見たってこれはあたしでしょう。」

「た、たしかにエマさんそっくりに見えますね」

「そっくりじゃないでしょう。そのまんまあたしでしょう。」

「はい、そのまんまエマさんです。」

 

「なんだってあたしのこんな恥ずかしい格好が銅像になっていなくちゃならないの。」

 

「いや、見事な蹴りで有ると思うぞ。」

「エマさんてすごく綺麗な足をしているじゃないの。」

「へえ~、これがエマさんの必殺技なんだ。うん、これなら男でもイチコロだね。」

 銅像に対する全員の素直な感想が聞かされる


「ちが~うう~~っ!!!!」

「なんであたしがこんな所で銅像になっていなくちゃならないの?」

「それは、そう。きっとエマさんの蹴りの美しさに魅せられたのでは無いかと。」

 

 違うでしょ、そこじゃないでしょ、そこじゃ。

 

「何か問題でも?」

「だれがあたしのこんな格好をあの扇子に見せたのよ。」

「はあ……………?」

「このドームに来るまであの扇子とは一度も顔を合わせていないのよ。」


「それが何か?」

「そんな奴が何であたしのこんな格好を見ているのよ。」

「そ、それはどこかでエマさんの武勇伝を聞きつけたとか?」

「あんたしかいないでしょあんたしか。こんなものあいつに見せることができるのは!」

 

「エマさん、彼はウィザーですよ。」

「だから何なのよ?」

多分基幹知識データーベースからウィザー通信を見たのでは無いでしょうか?」

「その記憶に情報を提供したのはシドラでしょう。そうじゃないの?」

「エマさん私は基幹知識データーベースに繋がってはいないのですよ。」

 

「えっ…………?」

 そういえば以前にシドラは基幹知識データーベースに繋げてもらえなかったと言っていた。

 

「だっていつも誰かと話をしていたじゃない。」

「私は他のウィザーとの連絡は音声のみの連絡しかできないのです。」

「それじゃあこの像はどうやって作ったのよ。パンツまで再現されってるのよ。」

「いえいえ、相手はウィザーですから。」

 

 いつものそれか。ウィザーはのぞきが趣味魔なのか?

 

「それにそれはパンツではありませんぶるまーです。大丈夫です、パンツは見られていませんから。」

 ピキピキという音がエマの額から聞こえる。

 その音を聞きつけたシドラはすすっエマから後退する。

 

「ほほほほ、エマさんの彫像は気に入っていただけたかしら。」

 突然入り口の前から声が聞こえる。見ると扇子を持ったウィザーと先ほどの男が入り口前に現れていた。

 ウィザーは立ったまま扇子を顔の前に広げており男は大きな椅子にどっかりと体を沈めて足を組んでいた。

 

「出たな、ぶるまー男。」

 

「誰がぶるまー男だ!だれが!」

「あなたあの娘にそんな風に呼ばれていたんですか?」

「やかましい!お前のデザインした服を着て行って馬鹿にされたんだぞ。」


「ああら、だから急いでコスチュームを作り直させたのね。」

「わし直筆のデザインだ。どうだ娘これなら文句はなかろう。

 男は椅子から立ち上がる。先ほどとは違った服を着ていた。


 少しゴツい感じのする服であるが前のぶるまーよりはまだマシだろう。 

 マントも無くどちらかといえばより戦闘服として見えなくもない。

「ぶるまーよりはましに見えるわね。」

「そうですよ。ぶるまーは新しい女性用ズボンとしての私の発案なのですから。私としては男に履かれるのは不本意なのです。」

 

 お前が胸を張るな……お前が……。

 

「だからあれはぶるまーじゃ有りません。」

「お前があんな服作るからだ。」

「私の会心の一作なのよ、芸術のわからない人たちに言われたくはないわ。」

 扇子の方は相変わらず扇子で顔を半分隠している。その為かなんとなくにやけた感じに見える。

 

「何をごちゃごちゃ言っているんだ。それより孫はどこにやったんだい?」

 ザルエガが前に出てエスペランに掴みかかるがザルエガの太い腕がエスペランの体を突き抜ける。

「あ?あれっ?」

 ザルエガはたたらを踏んでひっくり返る。

 

「なんだい扇子の体を突き抜けちまったよ。」

「ふうむ、ウィザー魔法の立体幻視であるな。」

「あらあら、残念私たちはここにはいないのよ。」

「わしらに会いたければこの扉から中に入って我らの試練を受けるが良い。

「試練とは何であるか?」

「三つの部屋を守る者たちとあなた方が戦うのよ。」

 

 どうやらドームの外には何やら罠を仕掛けて待っていたらしい。

「子供を取り返したいのであろう。その娘とお前たちでわが試練を乗り越えればわしが直々に相手をしてやろう。」

「……?エマさんどういたしました?」

 エマは何か頭を抱えるような姿勢になる。

 

「いや、なんか頭の中でテンプレ、テンプレと声が聞こえるような気がするんだけど。」

 

「ああ、それは気のせいですね、単なる気の迷いです。」

「ホント……?」

「間違いなく気の迷いです。それよりみんなで力を合わせて試練をクリアしましょう。」

 シドラが断固として気の迷いを主張するのは何故だろう?

「あんたは一緒に戦うの?」

「もちろん私はウィザーですから争い事には関与いたしません。」

「それは人間同士の争いの場合でしょう、今回はあの扇子が関与しているじゃない。」

 

「ハイ明らかなる戒律違反ですからさっさとお仕置きを致してください。」

 なんだそれ?人間がウィザーに勝つ事を期待しているのか?

「ほほほほ…そんなことは試練をクリアしてから言う事ね。それじゃ皆さん楽しみにしていますわよ。」

 

「待ちな、あたしの娘が無事ならその姿を見せな。もし娘に何かあったらあんた達を必ず殺してやるからね。」

「心配しなくても大切に預かっていますわ。」

 ウィザーは扇子を揺らしながら答える。

「無事なら見せられるであろう。それともウィザーは平気で嘘がつける所まで堕落したのであるかな?」

 扇子のウィザーはブルマー男の方を見る。

 

「いいだろう。見せてやれ。」

「ええ~~?見せるの~~?」

「ふん、わしも武人もののふの端くれあのような戯言に心を揺らすことなどないが、いいから見せてやれ。」

「仕方ないわね~。」

 扇子はゆっくり後ろを向く。

 

 するとウィザーのお尻に噛みついたままぶら下がっているカルラの姿が見えた。

 

「………。」

「………。」

「………。」

 

「何よその間は、だから見せるのはいやだって言ったのに。」

 よく見ると扇子の仮面やブルマー男の手にも歯形が残っていた。

「ま、まあ……その、ドワッフ族の娘であるからな。」

 

「よくやったカルラ、今晩は思いっきり御馳走してやるからね。」ザルエガが大声で叫んだ。


アクセスいただいてありがとうございます。

驚くべきはエスぺランの才能か?ドワッフ族の幼女の頑丈さか?

いずれにせよようやく迷宮の出現です。果たして攻略はなるか?……以下次号。


感想やお便りをいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ