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最強(弱)無双の魔法使いは無敵少女と旅をする。  作者: たけまこと
ドワッフ族の迷宮
60/211

ぶるまー男の背後にはウィザーがいました。

「この力を手に入れる代償としての最初の仕事がこれである、さあ娘よ返答はいかに?」

 ゴゴゴゴと言う背景音と共に大きく手を広げてエマに質するザルディ、うん間違いなく宙二病だわ。

 

「はあああ~っ?アンタ世界の覇王となる力の代償がそんなしょうもない事なの?」

「し、仕方なかろうこれが契約で有るのだからな。」

「な~によ、世界最強とか言っちゃってやってることはそこらの雇われ人と変わらないじゃない?」

「ワシは雇われ人ではない世界の覇王となる男である。」

「その覇王が結局はウィザーの手の平の中で踊ってるのよね。あ~情けない。」

 

 図星を突かれたのかザルディが青筋を立ててエマにすーっと浮いたまま近寄って来る。

 

「やめやめやめっ!そのみっともない物丸出しにして近寄るな!」

 エマが叫び声を上げる。

 ゲンナイが刀を両手に持ち替えて構える。

 ザルディは宙に浮いたままエマの上空に迫る。

 

 男のもっこりが真上に来るのをエマは、ものすごくいやな物を見る目つきで見上げていた。

 

「落ちろ~っ!」エマが大声で叫ぶ。

「わっ!」

 エマが叫ぶとそれまで浮いていたザルディがまるで糸でも切れたように落っこちてきた。

「ななな、何が起きた?」

 それまで自分の力に酔いしれていたザルディは予想外の出来事に狼狽していた。

 

「アンタその見苦しいもっこりをあたしの目の前に持ってこないでよね。」

 エマは冷たい目をしてそのもっこりを踏みつぶそうと足を上げて蹴りつける。

「わわわっ、待て待て待て!」

 ザルディは本能的に後ずさるが自分のマントに引っかかってコケる。

 

「ええ~い、往生際が悪い!黙って潰されろ!」

「いやいやいや、違うだろうそれ、なんかの間違いだろ。」

 泡を食って四つん這いになりながら逃げ出すザルデイ。

 少しエマから離れると再びすう~っと空中に浮かび上がる。

 

 ベルラ達はジト目でザルディを見つめている。

「か~か。」

 ベルラの娘が抱かれながら不思議そうな顔をしてみてる。

「ふ~ん、そういう事なんだ。」

「はい、そういう事のようですね。」

 エマは以前ウィデルガ・ドームで出会った前世紀の遺物と呼ばれる怪物の事を思い出した。

 

「ききき、貴様なんのつもりだ、我が浮遊魔術を邪魔するとは。」

 お~お、すっかり狼狽しちゃって、情けない奴だ事。

「この娘ワシの力を思い知らせてやるわ。」

 ザルデイが両手を上げて手の間に稲妻を走らせる。

 

 あ、いつもシドラがやっているやつね。

 

 ザルデイの手から稲妻がエマに向かって走る。

 シドラが前に出てその稲妻を手で受け止めるとそのまま消えてしまう。

 

「ウィザーにそのような物は通じません。」

「むふふふふっそれならこれでどうだ!」

 ザルディは大きく両手を広げる。

 

「極大魔法……!」

 ザルディは以前シドラがかけた大技の魔法を使うつもりだ。

 

「だ、だめですよこんな所でそんな大技は。」

 シドラが叫ぶが、同時にどこからか声が聞こえる。

 

「反転!《りばーす》」

 

「へっ?」

 ザルディがひっくり返った声を出した。

 

 それを見たシドラは素早くエマを引っ掴んでて逃げる。

 

 そこへ先ほど自分が発動しようとした極大魔法がザルディに落ちた。

「うぎゃああああ~~~っ。」

 そのまま黒コゲになって真っ逆さまに落ちるザルディ。

 

「あ~あ、自分のかけた魔法に自分でかかって見苦しいわね~っ。」

「エマさん気を付けてください、前は極大魔法の余波を受けてあなたも少し焦げたでしょう。」

「ええ、助かったわ。あのバカこんな所であの魔法を使うなんて。」

「でも余波で周りも少し焦げたみたい。」

 

 ザルエガの周囲十メートル位の草木が焦げていた。

 

「みんなは大丈夫だった?」

「はい、それ程大きな極大魔法にはなっていませんでしたから。」

 確かにあの怪物に使われた時よりはずいぶん威力が落ちていたようだ。

 

 周りを見回すとみんな大丈夫なようであるが、ザルディだけはコゲて横たわっている。

 

「エマ殿すごいで有るな、あの化け物をやっつけるとは。」

「自分の魔法に自分でかかるんだからきっと馬鹿でしょう。」

 

 エマは倒れているザルデイの所に行くとじっくりとザルディを見る。。

 

「エマさんまだ死んでるかどうか確認していませんから気を付けてください。」

「それなら今のうちにもっこりを蹴り潰しておかなくちゃ。」

 

「な、何をもったいない事を言うんだい。」

「容赦ないで有るなエマ殿は。」

 ゲンナイの頬が引きつっていた。

 

「ちょっと前に嫌な事が続いたのよね。」

 エマはザルディのもっこりを蹴り潰そうと膝を上げる。

 その瞬間ザルディがクワッと目を開ける。

 

「き、貴様なんのつもりた。」

 差し上げられたエマの足を見て慌ててザルディは体をひねる。

 しかしまたしても背中のマントに引っかかってすっころぶ。

 ジタバタしながらエマの元から離れると立ち上がって胸を張る。

 

 絶対コイツ、シドラの親戚だわ。

 

「ええ~い、くそっ、こんなマントなんか付けていられるか!」

 ザルディは焦げているマントを引きちぎった。

 

「ああ~ら、ひどいですわ~っ、せっかくのマントなのに~っ。」

 突然空から声が聞こえる。

 

「おお~っ、この声は!!」

 

「やかましいっ、なんだお前のコスチュームセンスは?」

「ああ~らワタシの扇子を理解できない朴念仁しかこの村にはいませんの~っ?」

「エスペラン、センスの字が違っていますよ。」

 村の上空にエスペランの姿が浮かび上がる。

 

「ザルディさん、こんな村の真ん中で極大魔法を使う人が有りますか?村一つ消えたらどうするつもりなの?」

「え?極大魔法ってのもそんなにすごい魔法だったの?」

「いえ、私も初めて知りました。」

 

 そんな物あたしの目の前で使うなよな~っ。

 

「ふん、しょせん村の人地やふたつ、世界を支配するものにとってはゴミのような物だ。」

「いけませんわよ、そんな事言ってるから征服した途端に後ろから刺される事になるのよ。」

「この体なら刺されてもどうと言うことは無い。」

 

「あ~らウィザーでも後ろから刺されれば死にますわよ。」

「なに?不死身ではないのか?」

「復活はできますけどね。」

 

「本当なの?シドラ。」

「はいはい、その点は人間と同じですよ、ウィザーも死ぬとは以前にも言ったと思いますが。」

 な~んなんだろうな、ウィザーって?

 

 再びザルディは空中に浮かび上がるとエマ達を見下ろす。

 

「とにかく、この仕事が終わればワシはお前たちを征服する仕事に専念できるのだ。」

「はあ、アルバイトは早めに終わらせたいという訳ですね。」

「ま、まあそういう事だ。どうだ小娘、我が力に恐れおののいたか?」

 

 いやいや、今叩き落されたばかりでしょう。

 

「あんたの馬鹿さ加減には驚かされているけどね。」

「うむ、もう少し人材はいなかったのであるかな?」

「みっともな~い。」

 

 全員からさんざん酷評されるザルディ、なんか頑張って登場してきた割に情けない奴。

 

「うおのれ~っ、我が力を理解できない輩共が、超巨大魔法をお見舞いしてくれん……。」

「そんな事したらまたあなたの上に落とすわよ。」

 扇子の言葉にザルディは動きが止まる。

 

「分かった、それならこやつらを扇子の穴に連れてゆけば良いのだろう。」

「最初からそう言えば良いのに余分な演出に凝るから。」

「何でしょうか、その扇子の穴と言うのは?」

 

 何?この扇子そんな物まで作っているの?

 

「この村の近くにあるウィザーの出入り口だ。出入り口の周りには銅像が多数配置してあるから知っておるだろう。」

「ベルトラ、知ってる?」

「うん、この辺じゃ有名なのよ。」

 

「分かったらそこで待っておるぞ。」

 そう言い残してザルディは後ろを向く。

 

「いかないよ。」

 エマはためらわずに答える。

 

「なんじゃ貴様!何故ワシのいう事が聞けん?」

「だって行かなきゃならない理由が無いも~ん。」

「それならワシが超極大魔法でこの村を……。」

 

「滅ぼせないくせに。」フンとエマは鼻であしらう。

 

「うぉっほ~ん。」

 後ろでエスペランが咳ばらいをしている。

 

「ぐぬぬぬぬぬっ。」

 ザルディが額中に青筋を浮かべていた。

 

「ならば来なければならぬ理由を作るまで!」

 建物の中に隠れていたベルラの元に一気に飛行するザルデイ。

 ベルラは抱いていた子供を下ろすと構えを取って前に立ちはだかる。

 

「ドワッフごときが何の真似だ?」

 ザルディがパンチを繰り出すがベルラもカウンターパンチを打つ。

 両者のパンチは共に当たるが吹っ飛ばされたのはベルラの方であった。

 

「か~か!」カルラが母親を呼ぶ。

 ザルディはカルラの前に降りるとカルラを掴もうとする。

「カルラ!」ザルエガがカルラに向かって走り寄る。

 

「うがああ~っ!」

 カルラは吠え声を上げるとザルディの腕に噛みついた。

「こ、このガキ!」

 ザルデイが手を上げて子供を殴ろうとする。

 

「子供を殴ったらお仕置きよ!」

 後ろからエスペランの声がするとザルディの動きが止まる。

 

「ま、待ちやがれ!」

 ベルラがザルデイを逃がすまいとしがみ付くが頑丈なベルラの顔が変形している。

「ええい!うっとうしい!」

 

 ザルディはベルラを蹴り飛ばすと電撃を浴びせかける。

 

「あがああ~っ。」

 一言叫ぶとベルラは吹っ飛ばされてぐったりとなる。

 ザルディは暴れる子供を抱えると再び空に舞い上がる。

 

「ベルラ!」

「いかん、心の臓が止まっておる。」

「どいて!」

 エマはベルラを仰向けにして上にまたがると心臓マッサージを始める。

 

「わはははは、子供は預かったぞ、返してほしくば扇子の穴に来い!」

「あわわわわっ、カルラ~っ、ベルラ~っ。」

 シンゴは二人の間であたふたしている。

 

「エマさん私が処置をいたします!」

「え?アンタが?」

 シドラがエマを押しのけるとベルラの胸に両手を当てる。

 

 バリバリっと電撃を浴びせるとベルラの体がびくびくっとけいれんを起こす。

 

「エマさん心臓は動いていますか?」

 エマが急いでベルラの胸に耳を当てるとふうう~っとベルラが呼吸を再開した。

「大丈夫よ。生き返ったわ。だけどしばらくは様子を見ていないと。」

 

 全員がベルラの方を向いて手当を見守っていた。

 その後ろでザルデイはさっきからポツンと置いてきぼりにされている。

 

「お前ら聞いているのか~っ。」

 飛び去るに飛び去れずに仕方なくザルディは怒鳴るしかなかった。

「お、オラが聞いてるだ。カルラを、カルラを返してくんろ~っ。」

 

 シンゴが悲痛な叫びをあげるとようやくザルディは満足そうな笑みを浮かべる。

 

「貴様!武士《もののふ》を名乗るにはあまりの卑劣な行為、直ちに降りてきて某《それがし》と勝負いたせ!」

 ベルラの状態が好転したのを見てゲンナイは振り返ると刀を構えて怒鳴る。

 

「ふん、世界を支配する者にとってそのような仔細な事にこだわることは無いのだ。子供を返してほしければ扇子の穴に来ればよいではないか。」

「あの~っ、すいませんねえ、ウチのザルディがご迷惑おかけしちゃって。ぜひ皆さんで扇子の穴においでくださいね、オーホッホッホッ。」

 

 なぜか高飛車に腰の低い扇子である。

 

「がーっはっはっはっ、待っておるぞ~っ。」

 ザルディは暴れるカルラに手を焼きながら飛んでいく。

「あたた、そんなに噛みつくな落っこちるぞ……。」

「落っことしたらお仕置きよ。オーホッホッホッ。」

 

 訳の分からない声が天空から聞こえてくる。

 

「おお、ベルラが気が付いたぞ。」

「まだ動いちゃだめよ。怪我もひどいし火傷もしてる、しばらくは絶対安静ね。」

 エマがベルラの容態を見て言った。

 

「あの男許してはおけないであるな。」

「はい、エスペランの行為は明らかに戒律に違反しています。私も行って扇子を逆さ吊にしてやります。」

「子供をさらわれて黙っているドワッフなぞいないという事を思い知らせてやる。」

「かあさん、あたしも行くよ。」ベルトラも名乗りを上げる。

 

「お、オラは……。」

「シンゴ、あんたはベルラの看病をしていな。」

「は、はあ……。」

「心配するな、孫は必ず取り返して来きてやる。」

「皆さん、おねげえしますだ。カルラを助けてやってくだせえ。」

 

 エマとシドラ、それに傭兵のゲンナイさんにベルトラとお母さんの5人が扇子の穴に向かって出発した。


アクセスいただいてありがとうございます。

ドクロード以外のウィザーもまたエマに敵対するウィザーでした。

果たして人間とウィザーの戦いの結末や如何に……以下次号


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