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最強(弱)無双の魔法使いは無敵少女と旅をする。  作者: たけまこと
ドワッフ族の迷宮
62/211

シドラは大岩に追いかけられます。

 扇子ウイザーが消えると正面の壁に設置された扇子のレリーフが左右に開き始める。

 

「これはまたウィザーにしては随分凝っているであるな。」

「そうよねー、壁の出入り口にこんなに凝っているのは初めて見るわね。」

「では行きましょか。」

 シドラが進んでドアに入って行く。

 

「ちょ、ちょっとシドラ、ここからドームの外に出たらあたし達窒息しちゃうじゃないの。」

「大丈夫ですよ。すぐに窒息するわけじゃ有りませんし万一意識を失ったら私が外に連れ出して気付けをしてあげますから。」

 

「ちょっと待て!それってあのビリビリか?」

 ベルトラが顔色を変えてシドラに突っ込む。

「はい、そうですが。何か問題でも?」

「有るでしょ、大いに有るでしょ。」

 そういえばベルトラは橋を渡るとき気を失ってシドラのビリビリで気付けをされたんだっけ。

 

「まあ、大丈夫なのではないかな?子供もウィザーのケツに噛みつくほど元気だったし、無事に渡っているようであるな。」

 そう言うとゲンナイはスタスタと門をくぐって出ていく。

「ゲンちゃんそんなに無防備に入ったらあぶないよ。」

「ゲンちゃん?ゲンちゃん!?」

 ベルトラが悲鳴のような声を上げる……が皆聞こえないふりをした。

 

 あ、ゲンちゃんの背中が汗でびっしょり濡れてる。

 

「なんじゃ、すぐここに入り口が有るではないか。」

 門をくぐると道が続いているが小さめな建物がいくつか建っていた。

 その一つにドアが有りそこに扇子のマークの入った紙に何かが書いてあった。

「なんて書いてあるの。」

 

『この扉の中にはドーム内の空気と同じものが入っているわよ。オホホホホ。』

 全員が渋い顔をしてお互いを見る。

「罠であるかな?」

「罠でしょうね。と言うか罠に誘っている訳だし。」

 

「毒の空気が充満しているとか?」

「どうしよう母さん入るの?」

「私思いますに、もともと我々をおびき出すための子供の誘拐ですから、実は扇子には我々をドーム外に連れ出さねばならない理由が有るのです。」

 

 シドラが自信満々に言う。こんな時は碌な事が無い場合が多い。

「どういうこと?」

「ウィザーがドームの中では戒律により人間を攻撃することは有りません。ドーム内は人間の世界だからです。」

「しかしドームの外はウィザーの世界ですから人間を力ずくで排除出来るのです。」

 

 この時は分からなかったがこのシドラの言葉が実はこの世界の重大な理《ことわり》を示唆していたのだった。

 

「ドームの外であれば我々を傷付ける事も問題ないと言うことであるな。」

「それなら何故ドームの中でベルラを傷つけたあのブルマー男にこのドームのウィザーは協力するのさ。」

「エスぺランには何らかの理由か、あるいはウィザーに対して強制する力が働いている可能性はあります。」

 

 ウィザーに何かを強制させるような力なんて有るのかよ?

 

「あのザルディと言う男に操られているとか?」

「その逆かも?」

「いやいや、そんな事あり得るのかしら?」

 

 様々な事件にシドラを強制的に巻き込んで来たエマ自身の事はとっくに忘れている。

 

「しかしベルラを傷付けたことは許せないよ。」

「いえ、ウィザーの力で傷つけられたベルラさんに関しては既にウィザーギルドの責任で治療を行っている筈です。」

「ホントかい?」

 突然シドラが衝撃的な事を言い出すのでお母さんが驚いている。

 

「ですから帰った頃には元気になっているかもしれません。」

「なんかやっている事がずいぶんちぐはぐだねえ。」

「ウィザーが引き起こした問題はほかのウィザー達の手で修復されます。これもまた戒律なのです。」

「そうかい、それなら安心してあのぶるまーをぶっ飛ばしてやるさ。」

 

 おおっ、お母さんの闘気が膨らんでいく。

 

「そう考えれば中の空気は皆さんに毒と言うことは無いであるな。」

「これは、あれですね。ウィザー通信にあなた方の慌てふためく様とか怖気づいて逃げ出す様を中継する為の布石と考えたほうが正しいのでは無いでしょうか?」

 

 ウィザーの戒律はどこに行った?

 

「ただやはり戒律から考えれば今回の事に関しては随分逸脱が激しいと言えるでしょうね。」

「それで?戒律に違反したあいつはどうなるの?」

「いえ、別に、特に罰則規定は有りませんから。」

「戒律を破ってもなんの罰則もないというの?」

「はい、そうです。戒律は自ら守るものであるからです、ただそれがウィザー全体に危険が及ぶようであれば、話は別ですが。」

「法律とは違うということね。」

「その通りです。今回の事はウィザーが直接戦わずに代理人を立てると言っていますから、戒律逃れの策であると考えられます。」

 

 つまり人間対ウィザーの直接対決では無いと言う事らしい。

 

「しかし今回の事は私というウィザーが直接皆さんと関わっていますから、みなさんが勝てば私が直接あのウィザーに天誅を加える事に成ります。」

「おお!それなら納得だ、見てなあのブルマー男ギタギタにしてやるから。」

 お母さんは指をバキバキ鳴らして闘気を発している。やだ、怖い。

 

「母さんあたし眠くなってきた。」

「あたしもすごく体がだるい。」

 なんかもうろうとした感じがあったが急速に倦怠感が広がってくる。

「これ以上ここにいると全員意識を失います。早く扉の中に入りましょう。」

 シドラに言われてそのまま扉の中にはいる。中には新鮮な空気が満たされていて頭がスッキリする。

 

「なんだ?この部屋は?」

 入ると直ぐに階段があって地下に続いていた。

「どうやら連中の居る所は地下のようであるな。」

「面白いじゃないの。どんな罠が仕掛けて有るのか楽しみだわ。」

「そうですね。ではシドラ先に進んでくれる?」

「はい?私が先頭ですか?」

 

 なんかコイツ言ってる事の割には当事者意識が低いな。

 

「当たり前じゃない。どんな罠にかかっても平気で復活出来る人が行くに決まってるでしょ。」

「ひどいっエマさん、それはあまりにもひどい言い方では有りませんか。」

「そもそもアンタの仲間が起こしている事件でしょうが、あんたが先頭になって解決しなくてどうするの?」

 

 がくっ、とシドラの肩が落ちる。

 

「わかりました。行かせて頂きます。」

 という訳でシドラが先頭を歩くことになった。2番手がゲンナイさん、しんがりがお母さん。

 攻撃力0、防御力無限大を前衛に罠や不意打ち攻撃を集中させ、その隙に後衛のあたしたちが現れた敵を壊滅する。

 

 ムフフフ、完璧な作戦だわ。

 

「………。」

「どう見ても鬼畜な作戦だと思いますよ。」

 なんだ?こいつ私の心を読んだのか?

 

 あれ?皆が何故か頷いている。うん、見なかったことにしよう。

 

「ふぎゃあああ~~っ。」

 突然シドら足元の階段が落ちる。かろうじてシドラは階段にしがみついている。

「大丈夫であるか?」

「死にます死にます。落ちたら死にます。」

 穴の底に棘が植えてあり頭蓋骨がひとつ棘に刺さっているのが見える。

 

「危なかったであるな。以前に誰かが落ちたのであろうか?」

「ウィザーのくせになんて酷いことをするんだろう。遺体を回収しなくちゃね。」

「母さんあれ少しおかしいよ。」ベルトラが頭蓋事を指さす。

「何がだい?何がおかしいと言うんだい。」

「だって頭蓋骨だけで他の骨が全然散らばっていないじゃないの。」

 

 棘が生えている床はきれいに掃除がなされていて塵リ一つない。

 

「そうだよね。罠にかかって死んだのなら頭蓋骨だけと言うのも不自然じゃない。」

「そう言われてみるとあの頭蓋骨、偽物であるな。」

 よくよく見ると確かに頭蓋骨は作り物の様である。

 

「あたしらの恐怖心を煽るためにかい?」

「しかし人間が落ちれば間違いなく死ぬであろう。ドーム外と言えどもウィザーが殺人を犯すのであるか?」

「あいつどうせシドラが前を歩くからあたし達は罠にかからないと思っているのよ。」

「そ、それではもしかして扇子の狙いというのは私なのですか~っ?」

 なんとなく扇子の狙いが見えて来たエマ達である。

 

「シドラが罠に掛かって慌てふためく様子をウィザー通信とかで世界配信しているんじゃないの?」

「あの扇子ウウウゥゥゥゥ~~~ッ」

 シドラの体の周囲から炎が噴き出し始めた。

 

 おお、シドラが燃えている。

 

「許しません、許しません。絶対にあの扇子を逆さに吊るして世界配信してやります。」

「よっしゃ、シドラ罠の対処は任せた。」

「お任せください。ひええええ~~っ。」

 

 一歩踏み出したシドラ横の壁から槍が飛び出してくる。

 

「お~い、シドラ大丈夫?」

「ご、ご心配無く。この程度の罠に怯むシドラでは御座いませんから。」

 シドラは槍衾の隙間に体をSの字型にくねらせながらかわしている。

 

「し、しかしこのままでは動けません。」

「よろしい。ワシにまかせろ。」

 ゲンナイは刀を抜くと槍の根本を一刀の元に切り離す。

「ちょんぱっ!」

 

「ゲンちゃんなかなか見事な腕じゃないか。」

 お母さんの言葉にビクッとなるゲンナイさん。

「某《それがし》名前はゲンナイで有りますゆえ。」

「ま~たまた、あたしとゲンちゃんの間でそんな固いこと言わないの。」

「かあさん!なにそれ、なに?ゲンナイさんとは初対面じゃないの?」

 

 あ~あ、また始まっちゃったよ。お母さん家庭不和の原因作るのはやめようよ。

 

「一緒に飯を食った家族じゃないか。」

「家族!?いつからゲンナイさんと家族になったの!?あたし聞いてないよ、聞いてないってば。」

 もはやベルトラ悲鳴になってる。

 

 お母さんその位にしておきなさい。

 

 ドゴンと音がしたので前を見ると天井から大きな丸い岩が階段一杯に落ちてきて階段に沿って転がり始める。

 岩の前にはシドラ一人が呆然と突っ立ってる。

 いや、それともシドラ以外がいない時を狙って岩を落としたのか?

「ひええええええぇぇぇ~~~~っ」

 シドラは岩の前を必死で駆け下りていく。

 

 うん、ウィザー通信にいい映像が撮れたんだろうな。

 

「大丈夫であろうか?」

「まあ、ウィザーですから、きっと無事なんじゃないかと思いますけど。」

 ガコーンと音がして階段を転がり落ちていった岩が下の廊下を走り始めたようだ。どこまで行くんだろう。

 

 ゴロゴロ、ガポーン!

 

 何かが落ちるような大きな音がした。

「おーい、シドラーっ無事か~?」

「ぶ、無事ですとも………無論……。」

 

 上を見ると天井にシドラがしがみついている。あの服で器用な奴だ。

 

「階段が終わった所で石の上に飛び上がりましてそのまま天井に張り付きました。」

「岩はどこに行った?」

「あの通路の先で……。」

 ちょうど大岩が通路の穴にゆっくりと吸い込まれて行く所だった。

 

「どうやらあの大岩はあそこから元の場所に戻されるみたいであるな。」

「随分大掛かりな仕掛けじゃないの。」

「ま、ウィザーだからね、こういった所には大いに無駄を発揮しているんだろうな。」

 

 だいたいウィザーって何のためにこの世界にいるんだろう?そんな疑問が頭を過ぎるエマであった。


アクセスいただいてありがとうございます。

エマの鬼畜とシドラの不死身、果たして軍配はどちらに?

いやいや、果たして迷宮攻略の行く末は?……以下迷宮のブテイックの次号へ


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