胸に?マークのブルマー男出現す
「ベルラ、アンタ子供と家の中に入ってな。」
ザルエガがベルラと孫をすぐに避難させる。
異常に気が付いたのかゲンナイも外に出て来た。
「あんたそんなとこに浮いたままいったい何の用なのよ?」
エマがザルディに向かって声を上げる。
「娘、ワシを見て恐れおののかないところを見るとなかなか肝が座っておるな。」
「いや、アンタと同じくらい変なやつと旅をしていますから。」
エマはくいっくいっと親指でシドラを示す。
「わ、私ですか?私はあんなに変じゃありませんよ。」
シドラが思いっきり頭を振る。
「二人はどう思う?」
「大同小異。」
「似たり寄ったり。」
ザルエガ親子がうなずいて答える。
「面白い小娘だな、いや、人族にしてはよく育っておるな、さしずめ大娘と言った所かな?」
「なによ大娘って。」
「どう見ても小柄ではないだろう。」
「ふん!あんたもあたしの大きさに気が付いたの?」
エマはふん!と胸をそらして見せた。
「図体は大きくなっても発育は悪いようだな。」
ザルディの言葉はエマの頭に大岩を叩きした。
「ななな、なんですって~っ!どこが発育不良なのよ!」
「ん……まあ…なんだ、その隣にいる村の女たちに比べればだいぶ貧弱…だし…な。」
「どこがが小さいのよ!」
「いや、別にそこまでは言っておらんが……やはりお前は…小さいのを気にしておるのか。」
「てめ~っ、そこから降りてこい!あたしに喧嘩売るとはいい度胸じゃねえか。」
青筋を立てて怒るエマをシドラは押さえつける。
「エマさん。ここは場所が悪いです、こんな所で争ってはまずいですよ。」
「ぐううう~っ、そうよね子供もいるし村に迷惑がかかるわよね。」
「大きさ比べするにはドワッフ族の村ではどう考えても勝ち目はありません。どうせやるならピクシー族の……。」
エマはシドラの顎にアッパーカットを打ち込む、シドラは一回転して頭から地面に突っ込んだ。
「はあっはあっ……。」
「どうした、小娘、早くも仲間割れか?」
ううう~っ、もういや~っ、早くドワッフ族のドームから離れたい。
エマの瞳から涙があふれて来る。
「なんだ?小娘、泣かんでも良いではないか、いずれ子供でも産めば大きくなるからそれまでは希望をもっておれ。」
「あんたにそんな事を言われたくないわよ。あたしは村では十分大きかったんだから。」
「ん?ああ……?そうなのか?まあ……基準はまちまちだからな……。」
「てめ~~~っ、さっさと降りてこい!」
今度はベルトラがエマを押さえつける。
「だいたいなによ、あんた馬鹿みたいに周りの畑を荒らしながらやって来るのよ、迷惑な奴が。」
「いや、奇跡を起こしながら空中を歩いて来るのだぞ、少しは恐れ嘶かないのか?」
「そんなのウィザーだったら誰でもやるでしょう。」
「いえ、私はあのような恥ずかしいぶるまーの使い方は致しません。」
3秒で復活するシドラがエマの後ろで訂正をする。
いや、格好の事じゃなく。
「だいたいがなんなのよ、ぶるまーはアンタの開発でしょうが。」
「あれは女性専用の物です。男が着用すればあのように恥ずかしげもなくもっこりが出ますから。」
「もっこりとはなんだもっこりとは!」
「アンタはその恥ずかしいど派手な格好で堂々とここに出て来てるのよ。」
「恥ずかしい?この格好はウィザーによるデザインだぞ。」
「恥ずかしいわよ、真っ青な上下の下着に真っ赤なぶるまーを履いて。」
「もっこりです、もっこり。」シドラが小さな声で口添えする。
「このもっこり野郎が!その胸の五角形のマークはな~に?、中にエ……。」
いきなりエマはシドラに後ろから口を押さえられた。
「な、何をするのよシドラ!」
「そ、それ以上言うのは危険です。」
「な、何が危険なのよ?」
「その一言はこの世界を崩壊させかねません。」
「な、なに?胸のマークの事言っちゃいけないの?」
「はい、その話はこれまでです、もう二度と言ってはなりません。」
「あ、アンタがそこまで言うならそうするわ。」
何かこの世ならざる危険を感じてエマは話をやめる。
「娘、ワシの格好が気に入らんらしいな、王者は常に下郎共の批判に晒されるもの、時にブルマとは一体何だ?」
「ぶ、ぶるまーってのは……。」
エマはそこまで言って言葉が淀む。
「はいっ、ぶるまーとは私が開発した女性用のズボンでして。」
いきなりシドラが前に飛び出す。
「女性がどんなに快活に動こうとも決してパンツが見えないという優れものです。」
な、なんだ?ぶるまーに話が及んだ途端にシドラが生き生きとし始めたぞ。
「これ、この通り今もエマさんに履いていただいております。」
スカートをばさっとめくり上げてエマの履いている真っ赤なぶるまーをザルディ見せる。
「ひえっ!」
「ほう!」
「あらっ?」
「いやっ!」
「な、なんと!」
「おおお~っ!」
みんなが一斉に声を上げる。
「ご理解いただけたでしょうか?」
「……こ、このォ…。」
エマは真っ赤になってプルプル震えていた。
「は?エマさんどうかされましたか?」
「ぶわっかたれえ~~~~っ!!!」
エマは思いっきりシドラに回し蹴りを食らわす。
「ぐひぃええぇぇ~~っ。」
シドラはきりもみしながら立ち木に叩き付けられる。
「このおおおお~~~っ!」
「ついでにかかと落とし~~っ!」
エマは大きく足を垂直に跳ね上げる。
「おおおお~~~っ!」
なぜか男性陣から歓声が上がる。
かかと落としがシドラに命中すると頭が体にめり込む。
「もう一丁おおぉ~っ。」
更に回し蹴りでシドラを2回転させるとシドラは地面に叩き付けられる。
それでもエマの怒りは収まらず地面に横たわるシドラを踏みつけにする。
「このっこのっ!死ねっ、しねっ!」
「お、おい、小娘。」
今度はザルディの方がドン引きしている。
ザルディの言葉も耳に入らずシドラを蹴り続ける。
その時ドドーンとエマの近くに落雷が走る。
振り返るとザルディがすごくいやーな顔をしてエマを見ていた。
「おまえなー、一応ワシの出現シーンだぞ、頑張って演出を考えて来たのに少しは気を使わんか?」
「しるか!アンタの演出なんか知ったことじゃ無いわよ、それよりあたしゃスカートめくられたんだぞ!」
「スカート位良いではないか、第一お前はそのウィザーを蹴りながらそのブルマーとやらを丸出しにしておったぞ。」
「えっ?」
エマはスカートを抑えて周りを見回す。
ベルラの親子はうんうんと頭を振る。
ゲンナイはバツが悪そうに横を向く。
シンゴは嬉しそうにニタニタと笑っている。
再びエマは真っ赤になってしまった。
「ようやく大人しくなってくれたか。これで少しは話が進展しそうだな?」
「くそーっ、あんな奴に2度も見せてしまったのか。」
エマは握った拳をぶるぶる震わせながらそう思った。
「それでアタシ達に何の用なのよ、ぶるまー男が。」
「まず言っておこう。これはぶるまーではない。あくまでもコスチュームデザインの一部だ。」
男がマントをたなびかせ、腰に手を当てて胸を張る。
最初に言うのがそれかよ。
「それは私の発案したぶるまーのパクリではありませんか?それをデザインなどとは片腹痛いですな。」
シドラには余程こだわりが有るみたいだ、3秒で復活してきて抗議する。
「良いではないか、仔細な事に過ぎん。」
「とんでもありません。ぶるまーはあくまでうら若き女性のお尻を包んでこその物、中年の親父のケツに履かれる物ではありません。」
「ワシは中年ではないぞ、まだ37だ!」
「うそ~っ。」
「やだっ、気持ち悪い~。」
「うむっ見かけよりも若いであるな。」
「なんだい同い年かい?」
お母さん、目にハートを宿さないでください。
「……………。」
あっ、コイツ結構落ち込んでるな。
「お前も相当にそのぶるまーに思い入れが有るようだな。」
ザルディはすごーく嫌そうに言う。
「当然です、エマさんのお尻を包むために開発いたしました。親父に履かれると崇高な理念が汚されます……。」
オマエもそんなところにこだわって作るな。
「ザルディとか言ったな。お主はいったい何のために現れたのであるか?ただ単に浮いてるところを我々に見せに来たわけではあるまい。」
「ほう、貴様は刀を持っている所を見ると武人の様だな。傭兵か?」
「某はゲンナイと申し、この家に一宿一般の恩義がある者である。なろうことなら穏やかに話を進めたい。」
「この中でまともに話が進められそうなのは貴様だけみたいだな。」
「先ほどから見ていてお主との話が全く進まないのでな。手早く手短に話を伺おう。」
なんかさえない中年オヤジに見えたけどやっぱり大人だわ、ザルディよりしっかりしてる。
「やれやれようやく人の話を聞く者が現れてほっとしたぞ。」
「それではお主の言い分を聞こうではないか、存分に述べるが良い。」
「うむ、そこのさっきブルマーを見せびらかしていた発育不良の娘はなんと言ったかな?」
いや、誤解を生むような事を言うな、見せびらかしてた訳じゃないぞ。
「てめ~っ、この期に及んでまだアタシを挑発するのか?」
「エマ殿落ち着いてくだされ。ザルディとやら、お主が話をまぜっかえしてどうするんだ?」
「そうか、小娘の名前はエマと言うのか。ワシはお主の処分を頼まれてな、悪いが死んでくれんか?」
その言葉を聞いたゲンナイはザッと曲刀を抜く。
「この世界最強を名乗る男がうら若い娘を手にかける為にわざわざ出張って来たと申すか?」
「ん、まあ、これも仕事の一部でな、無論ただ黙って殺されろとは言わん。」
「そうであれば口上を述べよ、口上いかんでは某がお主の相手をいたす。」
「お主ごときでは相手にもならんが、まあいいだろうお主の顔を立てようではないか。」
「申せ。」ゲンナイが殺気をみなぎらせて問う。
「実はな、娘がこれ以上先に進むの嫌がる物がおってな、その者に頼まれたのだ。」
「エマ殿を狙う者がいると申すか?それは何者だ?」
「そんな事をワシが言うと思っておるのか?」
なに?アタシが目的?何であたしの事そんなに邪魔に思う人間がいるの?アタシャ只の田舎娘だぞ?
「それで?エマ殿にどうせよと言うのか?」
「悪い事は言わんおとなしく故郷に帰れ、かえって好きな男とでも結婚して子供を作って平和に暮らすが良い。そうすれば我も引き上げようではないか。さもなければ娘の命を奪わねばならん。」
「アンタね~っ、そんな事を言いにわざわざそんなもっこりを見せびらかして出張って来たの?」
「そうだ貴様が帰らねばお前ごとこの村を灰燼に帰してやろうかとも思っている。」
コイツ、なんて物騒な事を言ってるんだ?
「あなたはどうやらウィザーの力を手に入れた人間のようですね。」
シドラが二人の前に進み出る。
「ふん、ようやく気が付いたのか。」
「いやいや、わざわざウィザーの力を見せびらかしながらの登場ですから気が付くも何もないと思いますが。」
「要するに目立ちたがりの子供って訳ね。」
「はい、明らかに自分の力を見せびらかしたいだけの人間の様です。」
まさしく厨二病その物だわ。
「ねね、シドラあいつあんな事言ってるけど本当に村を灰燼に出来ると思う?」
「そうですね、ウィザーと同様の力を手に入れれば出来るでしょう。」
「なに?それじゃアンタもあいつと同じように空中に浮くことが出来るの?」
「いえいえ、わざわざ浮かなくとも、私は元々浮いた存在ですから。」
ゴメン、アンタに聞いたアタシが馬鹿だった。
「あなたのやっていることは明らかにウィザーの戒律に反します。」
「お前はおかしなことを言う。ウィザーの行動を規制する法などどこにもないではないか。」
え?そうなの?ウィザーが言っている戒律って規則じゃないの?
「戒律とは法律ではありません。ウィザーが人間界の中でウィザーとして存在するための倫理であり自らを律する行いの事です。」
「わしのどこがウィザーの戒律に反するというのだ?」
「ウィザーの力を人間に与える行為そのものがです。」
「わしの存在がウィザーの戒律から逸脱しておる事くらい判っておるわ。」
なに?ただ単にアタシの邪魔をする為だけにそんな力をこの男に与えたって言うの?
「問題なのは誰が何の為にあなたにその力を与えたかという事です。」
「そんなことはわしの知ったことではない。力さえ手に入ればそれでよかったのだからな。」
「我々ウィザーが最も大切にしているものを破壊しようとするウィザーが存在するはずが有りません。」
「しかしわしはここにいるぞ。」
「ウィザーに出来ない事を人間にやらせるためにあなたはその力を与えられたと言う事になりますね。」
「成る程そういう事か。良く分かったぞ。」
なぜか何得したように笑うザルディ。
「あなたに私の保護対象者を殺させる訳にはいきません。」
珍しくシドラがシリアスモードに入っている。これは何かが起こりそうな予感がする。
「わしと戦うのか?ウィザーとまみえる事が出来るのであれば望外の喜び。」
「いやいや、私はあなたとは戦いませんよ。私が戦えばこのドームそのものがなくなってしましますから。」
シドラ、なにさらっと恐ろしい事を口にしているのよ~っ。
「むふふふ~~っ。ウィザーがハッタリを申すな。わしは強大な力を求めてこの体を手に入れたのだ。世界を震撼させるこの力で覇王となるためにな。」
おおっ、男の背中でゴゴゴゴゴゴと言う音を立てて炎が渦巻いている。
アクセスいただいてありがとうございます。
シドラが止めた男の胸に飾られていたマークとはいったい何でしょうか?
もしかしたら世界的に超有名はあの人のマークでは無いでしょうか?……以下次号。
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