丸太祭りで稼ごう
ゼンドレの道場でエマを見ていたグレアン・ラウはエマをずっと指導してきたが、どうやら合格ラインに達した様だ。
本来ウィザーの推薦枠は1名なのだが前回ラフレアちゃんが本戦出場を果たしたので推薦が必要なくなり、その分を回してくれるそうである。
「大会は来月だけど本戦の7日前に予選が有るんだ。その3日前に予備予選が有る。」
グレアン・ラウはエマが大会に出る事を決めた事により日程の話を始めた。
「なに?予備予選って?」
「予選に出場する人数を絞らなくちゃならないからね。ラフレアは去年本戦出場をしたから今年は予備予選無しの予選からだ。」
なんでも本戦は8人で行いエルフィン族6人に外部枠2人だそうである。予選は外部枠の人間だけで行いそれを2名に絞らなくてはならない。
そこで外部枠の出場者全員で予備予選を行い16人に絞りその16人で予選を行い2人に絞るらしい。
「すると予備予選を戦って3日後に予選の3試合をするのか、でもそう考えるとすごく過酷な日程じゃありませんか?」
「まあエルフィン族は一年かけて地方大会から何戦もして勝ち上がって行くんだからね。その代わりチャンスは何回も有る訳だ。その点外部枠は一発勝負だからね。」
来月か~っ、まあ、お金も溜まって来たから丁度いいかもね~。
「それならエマさん今度の丸太祭りまでいたらいいよ。」
「なに?丸太祭りって?」
「年に一度あの山の斜面を太い丸太に人が乗って滑り下りるんだ。」
「なにそれ?ものすごく面白そう。」
なんか聞くだけでドワッフ族の血が騒ぎそうな感じの響きだ。
「直径が1メートル近い丸太だからすごい迫力でね、死人が出る事も有るんだ。ここに来たからにはあれを見て帰らなくちゃ。」
「ふ~ん、そうなの。」
いやいや死人が出るとか思いっきり物騒だな、あたしゃ出ないから関係ないけどね。
「当日は他のドームからも人が来るからね、屋台もうんと出てすごいにぎやかになるよ。」
「どの位集まるの?」
「このドームの人口が普段の倍になる位さ。」
祭り=人=屋台=売上=お金!!!
エマの目にチーンとお金のマークが踊った。
「ねえ、そこで屋台って出せるの?」
「あ、ああ、地元の商工会に届け出ればいいんだ。場所は抽選になるけどね。」
「よっしゃああ~~っ。」
エマは久しぶりに血が燃えるのを感じる。
「ね、ね、みんなで屋台を出さない?」
「屋台を?みんなで出すの?」
「あたしいい料理を知ってるんだ。父さんが昔旅先で覚えて来たんだって。」
「面白そうだな、いいぜ。」
最初にベルラが乗って来た。
「みんなで金を出し合って儲けはみんなで山分けでどう?」
「いいんじゃないか?エマさんも旅を続ける金が要るんだろう。」
ベルトラも乗ってくれる、アタシの旅費の稼ぎを心配してくれてるみたい。
「アタシはレイさんとラフレアにも声をかけて来る。」
さっさとみんなに声をかける事にした。
ラフレアはお店を手伝うけどお金はいらないそうだ、なんていい娘なんだろう。
まあ未成年だしな~。
「ね、シドラ、シドラも一口のらない?」
「いいですよ~っ。ただ私はお金をもらっても仕方有りませんから。」
手伝ってはくれるけどお金はいらないらしい。あたしってホント友達に恵まれてる~っ。
まず現地を当たって見ないとね~っ。
現地を見に行ってビビった。使われる斜面は製材所の正面に有る一番大き斜面だそうだ。
「ナニコレ?まるっきり崖じゃないの。」
この斜面の上に丸太を運んできて滑り落させるらしい。これは死人が出るのも判るわなあ。
「結構長いね。」
「確か最大で300メルカ位有るみたいだ。
一応丸太の両側に杭を打ち込んでロープで引っ張ってあまり回転しないようにするそうだ。
「だけどやっぱり回るから途中で振り落される人が続出するわね。」
ものすごい危険な事をやるみたい、それでも出場者が目白押しで抽選になるそうだ。
「だいたいこの辺に屋台が並んでみんなが見てるよ。」
なんだ製材所の事務所の真ん前じゃないか。
「商工会ってどこに有るんだろう?」
「おや?皆さんお揃いで?」
みんなでワイワイやっている所に所長が現れた。
「ああ、所長さん。いえね、今度の丸太落としの祭りにみんなで屋台を出そうかと思っているんですよ。」
「おやそうですか?面白そうですね、何を売るんですか?」
「昔、父さんに聞いた料理を作ろうかと思って。」
「所長さんは商工会はどこに有るのかご存知ですか?」
「ああ、屋台の申し込みね、それなら事務所で申し込みが出来ますよ。」
なんと製材所で受け付けてくれるらしい。場所やなんかは売る物に合わせて調整を取るらしい。
早速申し込みをしてみた。品目はもちろん食べ物だ。
注意書きに前日に周囲の掃除を行うと有った。ゴミ入れを設置して、屋台は前日から設置出来るらしい。
当日昼前からイベントが有って丸太を落とすのは午後4時、終了は7時で8時までかけて周囲の掃除と片付け。
前日に注意事項を説明してから全員で掃除を始めるらしい。
「そういえば所長、屋台なんて貸してくれる所ありますか?」
「ああ、そういえば昔は会社も屋台を出していた時期が有りましたからねえ、倉庫にまだあるんじゃないですか?」
そう聞いて早速倉庫を見に行くと有った。壊れている訳では無いのでそのまま使えそうだ。すぐに総務に申し込んでおいた。
「あれには携帯のかまどが付いていたから炭で火を起こせる。」
「あとは鉄板ねジオライ・ガオの所で聞いてきましょうか?」
3人でガオの工房に行って見るとなんと手ごろな鉄板が転がっているではないか。
聞いてみると年に何回か工房の人間が集まって焼肉パーティをするので作ったらしい。
頼み込んだら快く貸してくれた。
なんかご都合主義みたいに必要なものがポンポンそろっていく。
「それじゃ今度はソースを作らなくちゃ。」
焼きそばのおいしさの源はソースに有り、あの味を作れなくちゃこの企画は失敗だからね。
という訳でグレアン・ラウの所に攻め込んでいくつかの野菜と小麦粉をお願いしてみた。
あたしたちが使いきれなかったら食堂に出しちゃうから気にしなくていいと注文を受けてくれた。
ただエマの料理を食べてみて気に行ったら食堂でも出すからレシピをおいてけと言われる。
ソースは作るのに一週間はかかるから早めに作って作り置きしなくちゃならない。
麺を用意するのは前日だからその日はかなり大変な事になりそうだ。
その前に商品になるかどうか確認しておかなくちゃならない。
食べられたもんじゃないような物が出来たらあきらめる。
まずソースを作ってみる、野菜をすりおろしてトマトと混ぜて塩を入れる。
それにお酢と香辛料を入れてそのままねっとりするまでよくかき混ぜる。これで一週間くらい寝かせれば出来上がり。
次に小麦粉と卵と塩を水で混ぜて重曹を入れる。
「何故重曹を入れるんだい?」
珍しそうにラウが料理を覗きに来る。
「コシ出るんだって聞いたわ。」
「コシって何だい?」
「歯ごたえの事らしいわよ。」
実はエマも作るのは初めてでどうなる物か良くは分からなかった。
そのまま良く練る、こういう時ラフレアちゃんは頼りになる、すごい力でぐいぐいと練り込む。
「これを濡れたふきんに包んで明日切るのよ。」
次の日の夕食後の厨房が空いた時に場所を借りて作ってみる。昨日のネタを麺打ち棒で伸ばして包丁で切って行く。
「パスタとは違うんだね。」
ドワッフ族にもピクシー族由来の?料理は有るんだけど、今回のとは製法が全く違うそうだ。
「似たようなものだけどこっちの方が細いわよ。」
「これはどのドームで食べられているのかね?」
「知らない?父さんが作り方仕入れてきてお祖母ちゃんが作ってたから。」
製法に関しては一応薬師のお祖母ちゃんのやり方を見ていたのでエマも結構正確にわかっていた。
「とりあえず今回は大型のフライパンで作ってみるわね。」
肉と野菜をいためて下味をつけて、次に麺をフライパンに入れて水を入れて混ぜる。
麺が柔らかくなってきたらソースと混ぜる。
おお?いい香りじゃないか?
「最後に野菜と混ぜてもう一度温める。」
「はい、焼きそばの出来上がり。」
皿に盛った焼きそばは食欲をそそる香りを放っていた。
「どれどれ?」
「ああ、成る程、」
「うん、結構いける。」
「なかなかうまいよ、これ。」
いつの間にか厨房のみんなも集まって来た、試作品は5食分くらい作れたのでみんなで味見した。
「ま、これなら何とかなりそうだな。」
「だけど容器はどうするの?」
そういえば容器の事考えて無かった。フォークの事も。
何か一つの事に成功すると必ずまた一つ問題が持ち上がる、この場合この料理を客に配る方法だ。
「ああ、それな。それは他の屋台の連中も同じでな、この時期カンナの注文が入るんだ。」
いつの間にか試食に紛れ込んでいたガウが言った。
「カンナってなに?」
「正目の木の板を大型のカンナで引くんだよ。そうすると紙のように薄い木の板が取れるんだよ。それに品物を包むんだ。」
「じゃフォークは?」
「木の棒の先端を二つに削った奴だ、それを大量に作るんだ。」
みんなに聞くと色々アイデアが出てくる。やっぱり以前に屋台を出していた経験が生きてるんだな。
「それはどこに頼んだらいいのかしら?」
「製材所だよ。営業に頼むと注文分だけ届けてくれるさ。」
そうは言っても売れなけりゃその分赤字になるしな~。
「どの位作ればいいんだろう?以前は何を売ってたの?」
「あの時は肉詰めの饅頭を売ったんだが、売れても100食かそこらだったねえ。」
うーん100食じゃな~っ。
「まあ材料の形で残せば次の日に食堂で捌いちまうけどね。」
そう考えれば多めに作っちゃってもいいかな~?
「どうせ材料費なんか二束三文だろう。」
「そこまで安くは無いよ。お肉が結構かかるからね。」
「まあ、その時は材料費位は出してあげるよ。」
「サンキュー、ラウさん。」
そんなやり取りの後に祭りに向けた準備が始まった。
アクセスいただいてありがとうございます。
普段料理をしない人間のグルメ物はやはり庶民的な発想しか出ません。
果たして黒字は出るのか? 以下真っ赤っかな次号へ
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