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最強(弱)無双の魔法使いは無敵少女と旅をする。  作者: たけまこと
木こり達のドーム
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レイは製材所でアルバイトです

 翌日エマとシドラは町に戻ることにした。

 ラフレアはもう少しドンちゃんの事を見ているそうである。

 

 レイは町へ行って帰省の費用を少し稼ぐと言っているいる。

 レイは騎士見習い候補生とはいえ実家はただの兵卒の家柄で良家では無いそうである。

 したがって騎士などへの取り立てはいろいろと難しくまず騎士候補生の学校に入学しなくてはならないらしい。

 

 それとても良家の人間であれば家柄だけで入学できるが、平民からの入学はなかなか難しいそうで騎士候補生見習いという下働きから始めなくてはならないらしい。

 まあこの辺はエマの居たドームにも似たようなシステムはあったがそこまで確立した強い封建制は無かった。

 その代わり騎士の学校などというものは無く、騎士の徒弟制度で引き上げるというシステムであったように聞いている。

 

 ただドームの間にある橋というものの存在により、ドーム間の戦争などというものはそう簡単には起こりようもなかった。

 したがってフェブリナ・ドームでは騎士などというのも現実には警察組織のようなものに過ぎなかったようである。

 ただマイリージャと言うのは周辺のドームをかなりの数を属国化しており、それがどのようになされたのかはエマには分からなかった。

 

 レイ話によれば、彼の住むバイファル・ドームは、隣のマイリージャ・ドームの属国となっており地位的には低く見られているそうで平民はなかなか騎士に取り立ててはもらえないらしい。

 

「それで一人で修業をしていたんだ。」

 レイはキューちゃんの後ろから馬に乗りながらエマと話をしていた。

 レイはエルフィン族の武道大会まで町の製材所で働く事にしたようである。

 

「いや、本当は自分が騎士に向いていな事が判っているから、なんとかそれを克服して親父を安心させてやりたいと思っているんだ。」

 

 父親も正騎士を目指したそうであるが結局上級兵士にしかなれなかったらしい。そこでレイには正騎士になって欲しくて小さい時から鍛えられてきたらしい。

 ところがある日自分には騎士としては決定的な欠点が有ることに気が付いたそうだが、それでも親の期待は裏切りたくなかった。

 結局は修業の旅に出るという名目で逃げ出してきたというのが本音だそうである。

 

「でもあなたを見てるとすごくいい体をしてるし動きもいいよ。あの怪物の足にした攻撃も見事なものだったじゃない。」

「まあ普通の人にはそう見えるだろうね。」

 レイはそれ以上は言わなかった。

 たぶん自分にしかわからない欠点が有るとすればそれを軽々しく口には出来ないのだろう。

 

「でもあなただったら所長のラウラスさんは喜ぶよ。すごく大きな体をして力も強そうだし。」

 確かにレイは体も大きくラフレアよりも幾分身長も高そうだ。見事な逆三角形の体をしており太腿も十分に太かった。

 ただラフレアのほうがスイカの分だけ体重が有りそうだな、などと考えて反省をするエマであった。

 

 帰りはちゃんとした馬車道を使ったので細い所はあってもキューちゃんがひっくり返ることは無かった。

 シドラに言ったら何故かシドラの周りから炎が噴き出していた。

 なんとなく地雷を踏んずけた気がしたのでそれ以上は言うのをやめる。

 

 町に戻るとレイをラウラスさんに紹介した。

 帰りの旅費が出来るまで働きたいと言ったら、ラウラスさんは気に入ったらいつまでも働いてくれと言っていた。

 

 

「ガルド~~~~ッ。」シドラが叫ぶ。

 

 どうやら地雷が向こうから歩いて来たみたいだ。

 

「いやいやいや、シドラ無事で良かったじゃないですか?」

 ガルドがシドラの怒りをそらすように飄々と答える。

 

「あんな重要な事をなんで最初に教えておいてくれなかったんですか?」

「いえいえ、教えなかったわけではありませんよ。世の中ハプニングは付き物ですから。」

「どうせ私がアタフタする所を見て喜んでいたんでしょう。」

 

「とんでもありません。住人の安全は何よりも重要な事ですから。」

「あんな物がドームの中を徘徊している訳がないじゃないですか。あなたの監督……。」

「お?あなた。そこのあなた。」

 いきなりガルドは話を打ち切ってレイの方へ駆け寄る。

 

 あ、ガルドが無理矢理話を逸らしたな。

 

「ガルド!もしエマさんが……。」

 な、なに?あたしがどうしたって?もしかしてシドラがあたしがどうかなったら責任取らされるのかな?

 

「素晴らしい体ですね。あなたのお名前は?」

「レ、レイと言います。レイ・ブラッドリ。」

 

 シドラの事を無視してガルドは話を続ける。

 

 シドラの周りの炎がさらに大きくなって吹き上げている。

 ウィザーでも怒ることが有るんだ。あたしって結構重要人なのかなー。

 しかもガルドの方は強引にシドラから話をそらせている。余程この話に触れられたくないらしい?

 

 しかしエマはこの全く人間と変わらないやり取りをするウィザーを興味深く見ていた。

 話を逸らされたシドラは言葉を継ぐことが出来なかったが、今は本気で怒っていたように見える。

 ウィザーと言っても中身は結局人間と変わりないんだな、そうエマは思った。

 

「いいでしょう、私の所にいらっしゃい。騎士志望と聞いていますから、うんと鍛えてあげるから。」

「え?それってどういう?」

「おやあ、あちらで睨んでいる人がいますから、私はこれで失礼します。また後でお話をしましょう。」

 

「というか、なんで俺が騎士志望だって……?」

 そそくさとガルドは出て行ってしまった。どうしてレイが騎士志望だって知っているんだろう?

 

 なんか後ろでシドラが湯気を立てている。

 

 

 次の日からレイは製材工場で働き始めた。木こりの方が給料はいいが素人には危険なので工場に決まった。

 レイはとても真面目だが早い話が融通が利かない。確かにこいつは騎士にでもならないと食って行けないかも知れない。

 

 一週間程してラフレアが戻ってきた。ドンちゃんは無事に山に帰ったみたいである。良かった良かった。

 ラフレアが戻ってきた日に所長から話が合ったらしい。ラフレアとレイで鋸を引いてみないかと言われたそうだ。

 ラフレアと互してのこぎりを引けるような相手はそうたくさんはいないのかもしれない。

 

 でもラフレアにこだわりがあるかもしれないと思っていたが、ドンちゃんの事はもう気にしてはいないと言っていた。

 何よりカノンちゃんを助けようとしてドンちゃんを撃ったんだものね。

 しばらく息を合わせる為に古い鋸を使って練習をしている。二人の息が合わないと簡単に鋸刃が折れるらしい。

 

 レイはラフレアに連れられて鋸刃を作る工房に連れていかれた。

 

 エマも興味が有ったので一緒に連れて行ってもらった。

 工房の責任者はドワッフ族の爺さんだった。ほかにも若い者が3人程働いているそうだ。

 工房の壁には何枚もののこぎりがぶら下がっている。

 両側に取っての付いた鋸や片側だけの物もある。取っ手の形も用途に応じていくつも種類があるみたいだ。

 

「ええか?鋸刃は非常に高価な物だから決して折ったらいかん。折ったらお前さん方の3月分の給料が吹っ飛ぶと思え。」

 責任者のジオライ・ガオがいの一番に言う言葉がこれだ。

「鋸は切る木材の種類や目の方向によって変える。材木の目に沿ってを縦に切って行く場合はこの鋸だ。」

 そう言って鋸を見せる。とは言っても何がどうなのか全く判らない。

 

「これが木の目を横に切って行く鋸だ。どうだ歯の大きさが違うだろう。」

 確かに木を横に切る鋸の歯の大きさは小さい。

「鋸は使い方によって歯の大きさだけでなく角度も違う。」

 油を塗られてよく手入れされた鋸刃は銀色に光っている。手元に近い部分は黒くなっているが鋸の真ん中付近は木に擦られているせいか良く光っている。

 

「特に二人で引く場合は両引き歯という鋸を使う、これがそうだ。」

 ガオが見せた鋸の歯は一つ置きに歯の方向が逆になっていた。

「鋸というのは引いたときに切れるように作る物なんじゃ。しかしそれを二人で引くと片方は切れるが片方は何もしないと言う事になる。」

「成程どちらに引いても切れる様になるわけですね。」

 

「そうじゃ、だから鋸を引いている両方が同じように疲れることになる。片方しか疲れないと力に偏りが出て鋸を折りやすいんじゃな。」

「鋸は全部此処で作っているの?」

「いや、鋸の身の部分は隣のゲオラ・ドームから買い付けておる。」

「ドワッフ族が主に住んでいるドームですね。」

 

 ジオライ・ガオの話によると昔のドワッフ族は良く戦争を行っていたため刃物の技術が抜きんでていたらしい。

 主に女が戦って男が後方で武器を作っていた。力の強い体質で刀をたくさん作っていたそうだ。

 呼吸器の量産などはお手の物で大量の呼吸器を持ったドワッフ族の女戦士が次々と橋を渡って戦争に行ったらしい。

 その頃の戦いでこのドームに落ち延びてきた来た連中がこの山奥に住むドワッフ族の先祖だそうである。

 

 ピクシー族はジョライ・ドームに、ドワッフ族はゲオラ・ドームに住んでいてその間にあるのがこのウィデルガ・ドームである。

 ウィデルガとはドワッフ語で挟むものという意味だそうでドワッフ族の侵略の後、ピクシー族もこのドームに移り住むようになって結局、ここはドワッフ族とピクシー族の同居する世界になったという事だ。

 

「ピクシー族は商売をし、ドワッフは物を作って二つの種族が共存していたのだが、ピクシー族は木こりの仕事は向かんかったが製材所を興して今じゃまあこんなものじゃ。」

 

「おじいさん、それ少し吹かしてない?」

「いや、戦争をしていたのはドワーフの女の方でな彼女たちに言わせればピクシーは物の役に立たない子供と一緒だそうだ。」」

「男たちは戦争をしなかったのですか?」

「男が戦争なんかするもんか。母ちゃんの尻に敷かれて子供の面倒を見とるわい。」

 

 今と変わらないのか~。

 

「だから男たちの武器を作る能力が飛躍的に高まったんじゃ。今でもドワーフ族には鍛冶屋が多いだろう。」

「脇道に逸れたが鋸の作り方を教えてやろう。これが鋸の元の形じゃ。」

 ジオライ・ガオのは両側に取っての付いた横長の鉄板を取り出した。


「これは歯をつける前の鋸じゃ。鋼を薄く伸ばした物じゃが硬くてもろい。この様に曲がるが曲げすぎれば折れる。」

 折れた鋸の一部を持ってくると端をペンチで掴んで折って見せる。


「断面を見てみろ。断面が粒の様に見えるじゃろ、それが鉄の粒じゃ。」

 

「刀を使えば少しづつこの粒がはがれて行く、何しろ歯の先の方はうんと尖らせて有るからな。」

「だから刀は使ったら常に手入れをしておかなくてはならないというわけだ。」

「のこぎりはまずこの鉄板を木でできた型板に挟み歯の形を鉄板の上に刻む。」

 

 ジオライ・ガオの先のとがった物で鉄板に傷をつけて歯の形を描く。

「歯の形が付いたら今度はこの細いやすりで歯の形を削りだす。」

 

 細いやすりを取り出すと鉄板を歯の形に削って見せた。

 

「歯の形になった物がこれじゃ。」

 鋸の山の形になっているがまだ歯の先は平らなままだ。

「この山の歯になる部分一つ一つに対しやすりをかけて先を尖らす。山の形と歯の角度はわし等の先祖の長い間の研究で出来たものなんじゃ。」

「お前たちの使う鋸は毎日使い終わったら刃先を確認して砥ぎ直し、油を引いて次の日に備えるんじゃ。

 

 道具はただ使えば良いと言う物ではない。お前らが道具を使う裏では手入れをする者がおると言う事を忘れてはならん。」



アクセスいただいてありがとうございます。

ジオライ・ガオのうんちくは続きます。

この時代の道具と言う物は非常に高価な物なのです。  以下次号

 

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