表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さくら荘の珍住人  作者: 和泉あや子
第三章 日常の中の非日常
43/45

第三章4 それぞれが想うところ、想うもの

 彼の心には何が沈んでいるのだろう。


 買い物から帰宅しても、青年の瞳が記憶に焼き付いていた。私が考えてもどうにもならないのに。でも何故か引っかかっていた。こちらから声掛けただけでも進歩だったのだけど、うまくいかなかったな。猫カフェにまた行ったら会えるかしら。でも今日の出来事の後だと行って会っても気まずいか。


 悶々と考えていたら頭痛くなってきた。考えてしまわないように何かして気をまぎらわそう。

 そういえば出掛ける前に洗濯機をセットしたのに帰宅しても干してなかった。思い出してベランダの洗濯機から洗いあがった衣類をハンガーに掛けはじめた。

 いくらか干していると、隣のベランダにも人影を感じた。深優? と声を掛けると返事が返ってきた。私が衝立の隙間から顔をのぞかせて、岡本さん大丈夫そうだったかと聞けば、問題なさそうだと安堵したような表情で言った。お粥を作ったとか、氷枕をしてあげたとか、彼女にしては珍しく自分からよく話した。立ち話では済まなさそうな勢いだった。

「こっち来て話す?」

 と誘えば、いいですか! と嬉しそうに答えた。

 一階のベランダは衝立があるもののベランダ同士に隙間があり、行き来ができる造りになっていた。隙間から深優を招きいれ、窓から部屋にあげた。

「それで、岡本さんはどんな感じなの。その、メンタル的な意味で」

 紅茶と茶菓子を出して尋ねた。深優はそうですねぇ、と少し顔を曇らせた。

「こんなことを鈴に話していいのか……」

 歯切れの悪い言い方をするのはおそらく彼女が岡本さんのプライベートな内容を知っていて、なおかつ勝手に他人に言うことに抵抗があるのだろう。人のデリケートな部分を気遣うのは、さすが作家というところだろうか。どこまで話すべきか考えているようだった。

「瞬さん、今回のコンテストは特に力を入れていたんで精神的に疲れがたまっていたんだと思います」

 そう言って深優は言葉を切った。紅茶を一口飲むタイミングが一致して一瞬、沈黙が生まれた。私もそれ以上は聞かなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ