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さくら荘の珍住人  作者: 和泉あや子
第三章 日常の中の非日常
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第三章2 熱もいろいろ

 何でも新しいことがスタートしてから二週間までは忍耐がいるとつくづく思う。


 うーん、と伸びをしてベッドに起きあがった。大学に入学してから二週間、忙しかった。こうして日曜日の朝に寝坊できるのが幸せに感じる。たいてい休日の方が早く目が覚めることの方が多いのだが、最近は疲れがたまっているせいか寝坊助だった。

 身支度をしてもぼーっとしてしまう。じっとしているとぼんやりしてしまうから買い物でも行こうか。一人暮らしと大学生活の両立も意外と大変だった。休みの日にまとめ買いしておいた方が楽だ。

 洗濯機をセットして、部屋を後にした。


 玄関を出ると、二〇一号室の扉が開く音が頭上からした。また後で来ますね、と深優の声も聞こえた。岡本さんの部屋に出入りするなんて、かなり発展したのかしら。

深優の恋にさくら荘のほとんどの住人が気づき、そしてみんな応援している。もちろん私もだった。深優はきっと幸せそうな表情をしているのだろうな、と予想してみる。

しかし階下に降りてきた彼女の顔は明るいと言うよりも何かが心配そうな表情だった。階段を降りてきた深優がこちらに気づいて

「鈴もお買い物ですか?」

 と尋ねてきた。そうだ、とうなずくと彼女もだと言う。買いに向かうのは同じ駅前の商店街だったので、途中まで一緒に行くことになった。


 商店街までの道を深優は買い物のメモを書きながら歩いていた。

「深優は何買うの?」

 だいたい書き終わったようなので声を掛けた。

「おもに薬局ですね。あと食材を買いにスーパーと八百屋です」

薬局? と聞きかえすと、実は、と深優が表情を曇らせた。岡本さんが熱を出したらしい。

「散歩から帰って来た時に、偶然瞬さんがアトリエから帰ってきたところだったんです。でもなんだかふらついていて、顔色も良くなかったので声を掛けたら熱があって」

 なるほど、それで深優が看病してあげたと。納得して聞いていたが、恋が発展している訳でなかったと気づき少し残念に思った。それでも看病してあげられるくらいにまでの仲ではあるのか。

 自分のことのように心配そうな顔をしている深優を見て、場違いながら笑みがこぼれてしまった。なんですか、とふくれる彼女に慌てて謝った。

「だって、本当に岡本さんのことを想っているんだな、ってさ」

 女子の私から見ても深優のそういうところ、可愛かった。私が男だったら彼女にしたいくらいだ。岡本さんは幸せ者だな。


私も誰かを好きになったら、深優みたいになれるかしら。


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