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さくら荘の珍住人  作者: 和泉あや子
第二章 住人のギャップ
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第二章22 面白いというよりは……

 昼ごはんを食べたあと、一〇二号室を訪ねると、いかにも寝起きだという顔の深優がいた。来るの早かった? と聞けば、いえだいぶ前に目が覚めたから大丈夫だと伸びをした。

「それで、面白い記事って何?」

 気になってさっそく本題に入った。深優はいきなりですね、と苦笑した。まあお茶でもどうぞ、と紅茶とお菓子を差しだす。彼女の方は昼食がまだらしく、おにぎりを食べ始めた。

「面白い記事と言うのはですね、松岡さんのことです」

 と言う彼女は、おにぎりの具が梅干しだったらしく顔にしわを寄せていた。

「雑誌を整理していたら松岡さんが載っている記事を見つけたんです」

 深優はテーブルに置いてあった本を開いて私に見せた。“乙女な花言葉辞典の著者・松岡林太郎氏にインタビュー”と見出しが出ており、食虫植物の鉢を背景に、松岡さんの若い頃の姿が写っていた。まだ髪の毛が黒々としている。いったい何年前の雑誌かと思ってみればもう十年も昔の発行だった。深優は何年間、資料を溜めてたんだ……。

 乙女なとはどういうことなんだろうと記事を読んでみれば、花にまつわる伝説や逸話を、恋愛の言葉を中心として編集したという。食虫植物が好きなおじいちゃまがこんなロマンチックな本を書いていたとは。食虫植物にロマンがないわけではないが、やっぱりおとぎ話の絵本に出てきそうな花に魅かれてしまう。松岡さんはインタビューのなかでやっぱり食虫植物について熱く語っていて、取材している女性が困惑している様子も受け取れた。実際に植物に虫を食わせて見せていて、インタビュアーが悲鳴を上げている写真も載っていた。しまいには、松岡さんの好みはかなり独特ですね、と言われていた。

「あのおじいちゃんにそんな乙女な一面があったんだ」

 特集を読みおえ深優に本を返した。意外ですよね、と彼女も雑誌の写真を眺めた。確かに面白いと言えば面白かった。特に松岡さんの食虫植物にぞっとしているインタビュアーの方が。


「あ、でも鈴。最後に“家内にこの本を捧ぐ”って書いてあります」

 指さされた行を読むと、確かにそう書かれていた。奥様がいらっしゃったのね。そのあとにはさらに続けて“自分が七〇歳から植物学者になったのは、亡くなった家内が大事に育てていた植物があったから”とあった。

「以前、奥様のおかげでこんなに植物が好きになれたとこぼされたことがあったんですけど、そう言うことだったんですね」


 ちょっとこの辞典読んでみたいかも。今度書店で見てみようかしら。


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