表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さくら荘の珍住人  作者: 和泉あや子
第二章 住人のギャップ
37/45

第二章20 女子力の持ち主は女子だけ?

 夕食を終え、カレンダーに目をやると明日はゴミの日だと思い出した。まだこの地域の収集日に慣れていないとあって、曜日の下に書き入れておかないと忘れてしまう。

「掃除して気を入れ替えようかな」

 風水や占いを厳密には信じないタイプではあるが、新しいことが始まる前には気持よい環境に整えておきたい。入学式の前に、部屋を一度きれいにしておきたかった。

 ラジオから流れる曲を聴きながら、軽い掃除を進める。ときどき鼻歌で最新ナンバーにハミングした。もう数日で入学式当日なんて早いな。さくら荘に越してきてまだ数週間なのにずいぶん長く感じた一方で、もの凄いスピードで日々が過ぎたような感覚。


「これくらいでいいか」

 つぶやいて結わえていた髪をほどいた。相変わらず独り言を言ってしまう。一人暮らしをはじめて変な癖がついてしまった。

 引っ越したばかりだからそれほどゴミが出るわけではないが、掃除機をかけたり、新聞をまとめたりしたら思ったより量が多かった。

 明日は早めに起きて出しにいこう。


 もう日付が変わる時間だった。床に就くと隣からまた例のうなる声が聞こえてきた。今夜も原稿が進まないらしい。ほぼ毎日聞こえてくる深優の声に慣れてしまった。



 着替えてゴミ出しに外へでると、さくら荘の庭に置かれたベンチに俊也さんが座っているのが目に入った。隣には舞ちゃんもいた。俊也さんは火鉢にあたりながら、なにやら手作業をしているようだった。裁縫かしら。

おはようございます、と声を掛けると、手元から目を離して挨拶が返ってきた。

「おう、おはようさん」

「お早いですね。何をなさっているんですか?」

 近くまで来てみたら、やはり裁縫をしていた。可愛らしいイチゴ柄の布を縫い合わせていた。

「わたしのシュシュよ」

 舞ちゃんが待ちきれない様子で言った。パパはつくるのが巧いの、と顔をくしゃっとさせて笑う。

「こう見えて俺は細かい作業が得意でな。……意外だ、って顔してるな」

 はははと太い声で笑ってそう話しながら、何針も縫っていく。よく意外だと言われるから慣れてるんだ、と続けた。

「本当にお上手ですね」

 細かくそろった縫い目を見て感心した。

「シュシュだけじゃないぜ。舞の上履き入れや弁当袋なんかも作れる。アクセサリーもちょっとはできるし」

 女子力高いな。こんなごつい風貌からは想像できない。話しているうちにシュシュが完成した。さっそく舞ちゃんはお父さんに髪を結わえてもらい、シュシュでポニーテールにとめた。手慣れているな、とその様子を眺めた。


 それにしてもなぜこんな早朝から外でしているのだろう、と疑問に思った。尋ねてみると高山さんはちょっと困ったような表情を浮かべた。いや実は真美がな、と歯切れの悪い言い方をする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ