第二章17 猫に好かれる人
桜色の看板に猫の絵が描かれたお店だった。昨日見つけた猫カフェに足を運んでみた。最初に見たときは気づかなかったが、どうやらこの猫カフェは動物病院の裏手らしい。獣医の管理の元での猫カフェだとか。
店に入ると猫の声が聞こえてきて悶えそうになる。可愛い。フリータイムで受付を済ませてさらに奥へ入った。あまり広くなく、大勢の客は入れなさそうだったがそれはそれで猫との距離が近くなるから良い。猫は二十匹弱といったところかしら。
さっそく好奇心旺盛な茶トラが寄ってきた。大きい猫カフェだと猫ちゃんは人間にうんざりした顔をしていて寄ってきてくれないのに、このお店のにゃんこは近くに来てくれる。住宅街で静かだし、客がたくさん入りにくいのかな。
茶トラのあごの下を撫でてやるとのどを鳴らす。可愛い! と叫びそうになってこらえる。いけない、過度な愛情表現は猫にとって殺気と同じ。せっかく来てくれた猫ちゃんを逃がしたくない。寝転がって猫と同じ目線になる。マンチカンもそろりそろり近寄って来た。
店内を見渡すと客は私を入れて四人だった。なかでも一人の男性客ににゃんこが何匹も寄っていた。本人は猫の頭を撫でながら、静かに読書をしている。彼を取り囲むように近くで丸まって寝ている猫たち。人気ならぬ猫気? がある人だなぁ。私と同じくらいの歳だろうか。
「あの人すごい」
つぶやけば、私の近くにいた女性客がいつもそうなのよ、と話してくれた。
「あの方は常連客なんですか?」
初対面の人でも、猫と触れ合っていからか変な緊張せずに話せる。自然と口角が上がるからかしら。茶トラが膝に乗ってきた。
「私は毎日来ている訳じゃないんだけど、来たときは必ずあの人いるの」
猫のメンバーが変わっても猫が寄っていくと話す女性。
「でもね、あの人猫には優しい表情するのに人間にはあまり表情変えないのよ」
けげんそうな顔をして言った。そう聞くと逆に話しかけてみたくなる。
何か声を掛けるきっかけでもあれば話してみるのだが、さすがにいきなり話しかけるのは出来そうになかった。なんだか彼が気になる。
じわじわと距離を縮めることにして、それとなく近づいていった。




