第二章14 住宅街のパン屋さん
自分が恋する未来を少し考えてみて、むずがゆい感覚になった。いつかできるだろう、と思うことにして、私の恋愛については頭の隅に追いやった。
朝の散策へ行くつもりだったが、立ち話をしている間に陽がだいぶ高くなっていた。今日は軽く散歩ぐらいにとどめておこう。
瑠璃子さんたちと別れ、さくら荘をあとにした。
ただ歩くのもつまらないので、なにか目標か目的を決めてみようと思いつく。なにが良いだろう。隠れ家的なお店があったら楽しそう。そういう小さなお店を探しながら歩くことにした。
隠れ家といえば住宅街にひっそり建っているイメージだから、さくら荘の裏手を進む。わりと新しい家が多いが、昔ながらの瓦屋根の家もちらほらあり風情を感じた。
風が吹いて甘い香りが鼻をくすぐった。
「良い匂い……」
匂いにつられて歩いていくと、一軒のパン屋があった。
近くまでいくと米粉で作るパン、と扉に描かれていて、“チェリーベーカリー”の看板が出ていた。米粉で作るって珍しい。もちもちした感じかな。開店時間はだいぶ先だったが、仕込み作業をしているのだろう、ガラス越しに工房で働く人たちが見えた。家族で切り盛りしているのか、おじさんと奥さんらしき女性、そして私と同年代くらいと思われる男子がいた。
中をそれとなくのぞいていたら男子が勝手口から出てきた。




