第二章13 恋に恋するお年頃
朝ヨガを終えた瑠璃子さんが丸めたヨガマットを抱えながらやってきた。おはよう、と爽やかに笑う。少し汗ばんだうなじが色っぽい。しかし話し始めてセクシーさはかき消された。
「恋する深優ちゃんほんとに可愛い!」
瞳をキラキラさせて、二人を眺めている。深優も岡本さんもいい雰囲気だった。傍から見て恋人同士に思える。
「自分の気持ちに気づいてないのは当人たちだけみたいなのね。深優ちゃんなんかわかりやすいんだけど」
真美さんがいえば、瑠璃子さんは大きくうなづき
「そこがまた初々しくて可愛いわー」
と胸に両手をあててうっとりする。
「あの二人、両想いなんですか」
と尋ねると、もちろんよ、と答えが返ってきた。瑠璃子さんが、岡本さんにそれとなく探りを入れたことがあるらしい。瑠璃子さんは続ける。
「本人は気づいていないようだけど、深優ちゃんと話すときの彼の反応は、他の人とは違うわ」
「岡本君、深優ちゃんにはよく笑うよね」
そうなのか。私はまだよく知らないからわからなかったが、そう言われてみれば、深優にたいしては笑顔が多い気がした。
たしかにわかりやすい反応をしている二人なのに、私ってば鈍いな。
岡本さんと深優のやり取りを見て、少しうらやましくなった。よくよく考えたら、恋、したことなかったな。中学時代はそういうのなかったし、そのあとも女子高だったから男子と関わることなんてなかった。
「人ってどうして恋に落ちるんですかね」
二人のやり取りを眺めながらつぶやいた。
「あら、それは人間がいだく永遠の疑問よ」
真美さんは真面目な顔をした。たしかに私は何気に壮大なことをつぶやいたんだな、と苦笑した。
「恋をしたら少しはわかるんですかね」
そうかもしれない、と奥さんがうなづいた。
「人って変わるのよ、恋で。私も俊と付き合うようになって変わったもの」
「鈴ちゃんは恋に恋するお年頃かしら。可愛い」
私の頭をナデナデする瑠璃子さん。恥ずかしくなって顔が熱くなる。
恋に恋するお年頃、か。




