第二章12 マダムの過去
舞ちゃんは花壇の方へ駆け出して行った。松岡さんが花について話しをしているのか、指さして何やらしゃべっている。
真美さんや深優と女子トークをしている間も、木刀で鍛錬中の二人はうち合いを続けていた。二人の戦い方は対照的だった。
図体の良い俊也さんはパワー型のようで、力で押し切ろうと木刀を振っている。動きは豪快で、ときどき、おらぁ! と声を出す。しかしやみくもにうっている訳ではないようで、岡本さんの隙を突こうとしていた。
一方の岡本さんは俊敏に動いて俊也さんの攻撃をかわし、避けてからの切り替えしが速かった。瞬、という名前の通りだな、と可笑しく思う。無駄な動きはなく、全体的にスマートな印象をうけた。
「あの人の動きは粗っぽいけれど、ああ見えて中身は繊細なの」
俊也さんを見ながら、奥さんは目を細めて言った。真美さんの言葉づかいや物腰の良さから、粗野な感じの俊也さんとどうして結ばれたのか気になった。さりげなく聞いてみれば、恥ずかしいから詳しくは話せないけど、と手を頬にあてた。
「彼は高校の先輩でね。私は学生の頃、やんちゃだったの」
「全然イメージつかないです」
私が言うと、真美さんはそうでしょうねと苦笑いした。お嬢様育ちのように思っていたがそんな一面も隠れていたのか。
「それでまぁ、ちょっとたちの悪い人たちに絡まれたところに、俊が助けてくれて。いろいろあって今に至るかな」
それきり口を閉じた。過去を思い出しているのだろうか、視線は主人の姿に向いているがどこか遠くを重ねてみているように思えた。
「今日はここいらで終わりにすっか」
俊也さんが構えを解いた。
「そうですね。……お手合わせ、ありがとうございました」
岡本さんも木刀をおろして言った。お互い汗で髪が肌に張り付いていた。
そこへ深優が手にタオルを持って走っていった。
「良かったらこれ、使ってください」
なんか青春ドラマのワンシーンみたい。どこかの運動部員とマネージャーのやり取りを彷彿させた。




