第二章4 スナイパー、深優
さくら荘の裏手の道をすすむと、小さな神社が建っていて、それほど大きくない石造りの鳥居がそびえていた。子どもたちのはしゃぐ声が聞こえてきた。出店もいくつか開かれていて、夏祭りほどの盛大さはないものの活気があった。
「何から回りますか」
鳥居をくぐって深優が聞いた。これと言って目的の店があるわけでもないので、あわせるよ、と答えた。それなら、と彼女が目をぱっと見開いて
「射的にいきたいです!」
いいよ行こうか、と私が返事をするころには、もう深優は歩き始めていた。射的ってあんまし命中しないんだよなーと思いつつ、彼女の後を追った。
「おじさん、今年も来ましたよ」
彼女は毎年常連なのか、店主のおじさんは渋い顔をして
「ああお嬢ちゃんまた来たのかい、お手柔らかに頼むよ」
と苦笑いした。深優はそんなに射的が巧いのかしら。おじさんは私に気づいて
「今年はお友達も一緒かい」
いらっしゃい、と豪快に笑った。それじゃあいつもの弾数で、と深優が言うと、おじさんはほらよ、とセットを渡した。
「常連ですから、わたしのは特別な弾数なんです」
私は通常の弾数で銃を受けとった。小さい頃にしたきりだったが、おぼろげには撃ち方を覚えていた。一方の深優は慣れた手つきで弾を銃先にセットしている。
「お先に失礼して」
と構えた。その構え方を見て唖然とした。ビリヤードを打つかのようだった。線から出ない範囲で片足の膝を台の上にのせ、身を出来るだけ乗り出している。
深優は狙いを定めると引き金を引いた。ぱんっと小気味良い音がしたと同時に的の商品が倒れた。
「お見事!」
思わず叫んだ。ちょっと軌道がずれちゃいましたけどね、と彼女は満足いかない様子。二発目を撃つ。また命中。三発目、四発目も見事に当てていく。
私も撃ってみるがなかなか当たらない。
ついに深優はすべての商品を撃ち落とした。




