第二章2 リアル着せ替え人形
「嬉しいわ! こんな可愛い子が私の趣味に付き合ってくれるって言ってくれるなんて」
スーツの仕立てをお願いする代わりに瑠璃子さんのモデルになります、と言うなりハグされて面食らった。
クローゼットの服を何着か引っ張り出している瑠璃子さんの瞳は輝いていた。
「急なお願いですいません。深優から話しを聞いてうらやましくなって」
「いいの、そんな謝らないで。むしろお礼したいくらいよ」
と星がきれいに飛んだようなウィンクをした。
「深優ちゃんはお嬢様みたいな可憐な服が似合うけど、鈴ちゃんにはもう少し元気な感じがいいわね」
これはどうかしら、とワンピースを渡された。あそこのカーテン裏が試着ブースだから、どうぞ、と部屋の角を指さす。さっそく試着のためにそこへ入った。部屋だけでなくカーテン裏にも全身鏡が置いてあった。
「深優ちゃんはどうかしら、今日はファッションショー加わらない?」
「きょ、今日は鈴がメインですから」
深優の戸惑う様子が声から伝わってきて笑いそうになる。服を着るだけならそんなに体力使いそうにないのに。
瑠璃子さんがセレクトした洋服に着替える。強い色味の服って今まで着たことなかったから、少し抵抗を感じるが、着せ替え人形になると言ったから断るわけにもいかないし、瑠璃子さんの見立てにケチをつけるなんて失礼だと思って着てみた。
渡された服を着た自分を見て、目をみはった。これが自分かと思うほど華やかさがある。色味が強くても身につけてみたら意外と派手に見えない。短い丈が脚を強調して無いに等しかった色気が心なしかでた気がする。
「すごい……」
思わず声にでる。
「どう、鈴ちゃん」
向こうから声をかけられて試着ブースのカーテンを開けた。
「やっぱり似合うわ。もう可愛いっ」
「ほんと鈴、大人っぽく見える」
プロの見立てはこんなに違うのかと驚いた。
「鈴ちゃんの肌の色には濃い目の色がよく合うのよね。派手な色柄でも浮かないの」
脚もきれいだから強調できる短い丈とね、と鏡越しに私の脚を見て言った。
「良かったらデートのときは教えてね。私がコーディネートしてあげたいわ」
瑠璃子さんが楽しそうな目をして言った。いきなり恋愛の話になって恥ずかしくなる。彼氏ができたらお願いするかもしれないです、とだけ答えた。
「こんなに可愛いからきっとすぐできるわよ」
とにっこり笑った。そうだといいんですけど、と苦笑いする。
「今度はこっちなんてどうかしら」
瑠璃子さんから次に着る服を渡された。
やっと自室に戻れた。けっきょく全部で何着きたんだろう。そして瑠璃子さん家のクローゼットは異次元空間とつながってるんじゃないかってほど服が出てくる。深優の言っていた体力使うの意味がわかった。何回も着替えるって意外とエネルギー使うんだな。
最後の方は髪型もセットしてもらったり、軽くメイクをほどこしてもらったりと、本格的だった。
……何だかんだ楽しかったけど。
翌日には私のためにデザインされたぴったりサイズのスーツが出来上がっていた。




