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さくら荘の珍住人  作者: 和泉あや子
第一章 挨拶まわりの壁
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第一章13 強面の中身

 高山さんもこちらに気づいて、さっき書店にいた嬢ちゃん、と声をかけてきた。あまり関わり合いたくないが、無視するわけにもいかず会釈した。さっきは驚かせて悪かったな、と話しながら近寄ってきた。

「もしかしてあんたが新しい住人か」

 神月といいます、と自己紹介すれば

「おれは高山俊也だ。こんな見た目だが怖がらねぇでくれ」

 だはは、と高山さんが豪快に笑った。外見からイメージしていた人柄とは違い、親しみやすい印象を受けた。人は見かけによらないと、ここに越してきて何度実感したか。

 子どもの声がアパートの外から聞こえてきた。しばらくすると女性と女の子がさくら荘に入って来た。

「あ、パパ」

 五才くらいだろうか、女の子が叫びながら走ってきて高山さんに抱き着いた。パパって高山さん所帯持ちだったのか。

「舞―!」

 書店での強面はどこへやら、一変して顔が緩まってデレっとした表情に。本日二度目の衝撃をくらった。もちろん一度目は一〇一号室の食虫植物である。

「可愛いだろう、おれの娘だ。ほら舞、お姉さんにこんにちは、は?」

 舞ちゃんは私に向きなおって挨拶をした。イチゴの飾りがついたヘアゴムでおさげを結んだ、可愛らしい女の子だった。無邪気に笑ってパパ肩車してーとせがんでいた。よし、と高山さんは肩に舞ちゃんを担いだ。

 舞ちゃんに遅れて奥さんらしき女性が近よって来た。ミディアムヘアーが爽やかな感じをあたえる美人さんだった。

「まあ、もしかして新しい住人さんかしら」

 こんにちは、真美です、とにっこり笑ってお辞儀された。物腰の柔らかい貴婦人だった。

「可愛らしい娘さんですね」

 と話すと奥さんよりはやく、俊也さんが嬉しそうな顔をして、だろっ! 真美に似て美人なんだ、と答えた。相当の愛妻家のマイホームパパの様だった。あなたってば、と奥さんが主人の肩をたたいているが、照れ隠しだろう。ほほ笑ましくて、こちらまでほっこりする。

 少しその場で待っていてもらって、菓子折りを自室にとって戻り手渡した。


 もう簡単に人の部屋には上がるまい、と思いつつ高山さん一家との挨拶を済ませた。


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