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さくら荘の珍住人  作者: 和泉あや子
第一章 挨拶まわりの壁
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第一章11 スミレはスミレでも……

流血とか暴力とか全くないのでグロテスクのタグをつけるほどではないのですが、ある植物(読んで下さればわかります)を検索したら思いのほか気持ち悪かったという……。

注意書きとして前書きを載せました。

内容としては面白いものになっているかと思うんですけどね。

 菓子折りを一〇一号室に持って行けば、よかったら見ていかないかい? と住人から声をかけられた。私のなかの危険人物から指定解除された植物学者、松岡さんに言われ、好奇心からお邪魔した。

 玄関に足を踏み入れると土やほこりっぽい匂いが鼻についた。松岡さんの部屋に入って目にした数々の植物たち。深優に言われた通り、独特な緑にあふれていた。けれども可愛い花もたくさん置いてある。玄関先から鉢植えや盆栽が置いてあった。

「本当にたくさん育てているんですね」

「かわいいじゃろう。丹精込めて育てた子どもたちみたいなもんじゃな」

 顔をくしゃっとさせて話し始めた。

 この花は育てにくい、とか蕾をつけた枝を見せて数年に一度しか咲かない花だ、と次々に鉢を指さして説明する。おじいさんだが可愛い花が好きだという女の子のようだった。女子の私より乙女っぽい。花言葉も詳しいところなんてロマンチックだった。家庭菜園もしているらしく、出来たら近所に配ってお裾分けしているらしい。鈴さんにも、と分けてくれた。

 深優が言うほど覚悟なんていらなかったわ、と思いながら植物を眺めた。

「ああちょうど咲いているこの花も好きなんじゃ」

 植物研究家は台に置いてある一つを手に取った。薄い紫色をして花弁が五枚あって、すみれに似ていた。

「これはムシトリスミレじゃ」

 え? なに虫捕り? 一瞬聞き間違えたかと思った。普通のすみれじゃないのか。虫を捕るってこんな可憐な花が、と動揺を隠しきれない。

「驚くじゃろ? こんなに可愛い花を咲かせるが食虫植物でな、花の姿からは想像できんよのう」

 メガネを掛けなおしてニコニコと語りだした。

「若い子の言葉ではそうじゃのう、ぎゃっぷもえ、とか言うのかね」

 どこで覚えたんだろう、ちょっとアクセントが違うけど使い方は一応間違ってはいない、気がする。――使う対象が合っているかは疑問だけども。

「わしが一番好きなのはサボテンだけども、食虫植物は二番目に好きな植物でな、たくさん育てているんじゃ。といっても狂暴じゃないやつだけじゃが」

 奥に案内されて絶句した。グロテスクな色合いと模様の植物が並んでいた。

 立ちつくして遠目に食虫植物を見る。深優の言うとおりだった。やめておけばよかった。虫が大嫌いな私は耐えきれず

「いろいろ見せて下さってありがとうございました。あ、の、私、用事がありまして。」

 とやんわり言った。私の言葉を聞くと松岡さんは苦笑いをして白髪をポリポリと掻いた。

「こりゃいかん。いやあ、語りすぎてしまってすまないね。聞いてくれてありがとう。またいつでもおいでね」

 またいつか、と言ってそそくさと一〇一号室を後にした。


 まさかあんなものを見てしまうとは。気分転換に商店街か公園を散歩しよう。げんなりしてさくら荘を後にした。


 とりあえず散策もかねて商店街へ、いつもの行く道ではなく一本入った道を通って向かった。


 途中でひっそりと建つ小さな画材店の前を通りかかった。こんなところにお店があったんだ。ガラス戸の奥を、ちらりとのぞくと、中で画材を悩んでいるような青年がいた。横顔しか見えないが、彫が深く、なかなか顔立ちが綺麗だった。そのまなざしは真剣だった。画家さんかしら。


 店を通りすぎて道を進んだ。書店でも寄ろうか、など思いながら足の向くまま歩いた。


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