↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ原作】1年限りの契約婚(公爵様の溺愛付き!)~英雄の継母になった私は、どうやら聖女の末裔のようです~  作者: 和泉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/37

29.魔獣

 森の中は鳥の声や羽ばたく音が聞こえるほどとても静かだった。

 木々の間から光が差し込み、明るくて綺麗な森だ。


「あーう? きゃい」

 触れられない木漏れ日に手を伸ばし、手をグーパーするアレクシスが可愛い。


 親バカだと言われそうだが、日に日にできることが増えていくアレクシスの成長がとても楽しみだった。

 一年間の契約契約だけれど、契約後もここの侍女として働かせてもらえたらいいのに。

そうすればアレクシスの成長がずっと見られるのに。


「この森は屋敷の近くしか整備されていないから、あまり奥へ行かないように」

「はい。迷子になりそうなのでやめておきます」

「騎士たちが作ったこの道を通っている間は大丈夫だ」

 この道を進むと森の浅い部分だけ周って屋敷に戻れると聞いたフローラは、アレクシスがもう少し歩けるようになったらお散歩コースになるかなと呑気に考えてしまった。


「はう」

「わっ」

 鳥が一斉に飛び立つのと同時に吹いた突風に驚いたアレクシスはマティアスにしがみつき、ワンピースのスカートが浮きそうになったフローラは慌ててスカートを押さえた。


「……変だな」

「え?」

「こんな風が吹くはずないのに」

 この森は丘の上。

 今日は良く晴れて、雲もないのにこんな突風はおかしいとマティアスは眉間に皺を寄せた。

 突風のあとはまた穏やかな状態で木々が激しく揺れることもない。


「不思議な風でしたね」

 フローラはあまり動いていない木々の葉を見上げながら首を傾げた。


「……待て」

「えっ?」

「ふえっ、うえっ」

 急に泣き出したアレクシスと、フローラが前に進まないように腕を伸ばしながら森の向こうを睨みつけるマティアス。


 ただならぬ雰囲気にフローラは二人を交互に見たが、理由は全くわからなかった。


「どうし……」

「アレクを頼む」

 強引に渡されたアレクシスをフローラはギュッと抱え込む。


「うえっ」

 どうして泣き止まないの?

 今まで泣き止まないことなんてなかったのに!


「……アレク、静かにしろ」

 マティアスは耳を澄ませながら周りの様子をうかがっているように見えた。


「泣いていてはダメだ」

「ふえっ」

 まだ小さいのに泣き止もうとするアレクシスの背中をフローラはそっと撫でる。

 アレクシスの泣き声がなくなった瞬間、獣の唸るような声がフローラに聞こえた。


「こんな場所にいるはずがないと油断していた。……すまない」

「この声は?」

「まだ子どものようだが、おそらくシルバーウルフ。……魔獣だ」

 魔獣ってそんなに気軽に会うものなの?

 この森に魔獣が住んでいるってこと?


「俺から離れるな」

「は、はい」

 さっきまで綺麗だと思っていた森がいっきに怖くなる。


 暗いところから魔獣が出てくるのではないか、木々の隙間が光っているのはシルバーウルフの毛ではないかと不安になったフローラの身体はブルッと震えた。


 どうしよう。アレクシスのお母さんのように最後までこの子を守って逃げられるだろうか?

 そんなフローラの不安を一瞬でかき消すかのように、マティアスは背中にフローラとアレクシスを隠した。


「あう」

「大丈夫だよ、アレク」

 フローラはアレクシスをギュッと抱きしめながら小声で言い聞かせる。

 まるで自分に言い聞かせているかのように、フローラは何度も大丈夫だと繰り返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。